TALKING JAZZ 関西若手ミュージシャンが語る、ジャズへの熱い想い。

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——「楽器のお手入れ、普段気をつけていること」を教えてください。

「ボーリングはしないことですね。手がめっちゃ痛くなるでしょ?」
「まあ怠くはなるけど、でもやりますね(笑)。まあそんなしょっちゅうするわけでもないですし」
「バスケとかね(笑)」
「まあ突き指とかしそうなことはしない方がいいですけどね。爪は切ります」
「うんうん」
「僕、一回爪が伸びてて、それが何かの拍子で鍵盤と鍵盤の間に挟まったときがあって、それがめちゃくちゃ痛くって。それ以来ちゃんと切ってますけど、逆に切りすぎちゃうこともありますね(笑)」
「でも本当に指先は大事ですよね。ある人が『ピアノは基礎練で音色が決まらない』と言ってて。イメージした音がそのまま音色になるっていう」
「うん、イメージ力がないと厳しいですよね」
「ギターとかなら直接弦を触ったりするけど、ピアノは直に音が出せないですからね」
「そうそう。鍵盤叩いたらハンマーに当たって、そのハンマーが叩くのを想像しろって言われますもんね。でもギターとか弾いちゃいけないとかも言いますよね。皮膚が硬くなったらダメだって」
「楽器に関しては、ピアノは他人任せですからね。動かすだけでも一人では無理ですし、調律も調律師さんにお願いしてやってもらうことだから、楽器に関しては『ここ湿気多いんちゃう?』って口で言うことぐらいですもんね。指先を大事にする以外には特にないですね(笑)」

——「学生時代にやってて良かった!やれば良かった!」と思うことは?

「私は普通ですけど旅行に行きたかったな。仕事を始めたらあんまり行けないし、学生時代に練習してて良かったとも思うけど、そういう意味ではもっと遊んでおけば良かったなって。永田くんはまだ学生ですもんね」
「そうですね。だから半年ぐらいバックパッカーしたいなと思ってます(笑)。僕は…クラシックをもっとやっておけば良かったなと思いますね。今のピアニストって技術的に本当に上手い人が多いじゃないですか。これは極論だと思うんですけど、『バッハのインベンション弾けない奴がピアノ弾いたらあかん』っていうのを聞いたことがあって、その人が正しいとは言わないけど、それも面白い意見だなあと思いまして。まあ今からでも遅くないけど」
「僕はもっとジャズを練習しておけば良かったです」
「それやったら私もですよ。まあでも、本当にもっと前からやっとけば良かったってのは言ってもしょうがないからね(笑)」
「やってて良かったなということは、大学2年生のときにアルバイトをしてたんですけど、学校が忙しくて途中で辞めてしまったんです。でも、やっぱりお金はいるなと思って、親に頼み込んで60万円借りたんですね。その月5万円分のお金でいろんな人のコンサートに行ったり、CDを買って聴いたりしたんですよ。卒業後の返済は大変だったけど、その経験はしてて良かったなと思います。その反面、譜面が読めないことも諦めてたし、音楽理論の授業もちゃんと聞いてなかったので、もっと授業をちゃんと受けていたら良かったと思いますね」
「授業については、本当に卒業してから分かることだよね」
「本当にそうですよ。今思えば、授業で割って計算すると一回5000円ぐらいするでしょう?なのに自主休講とかしたりして」
「そうですね。あと、不安でもやりたいと思ったことはやった方がいいと思います。僕が今付いてる木畑晴哉さんには、自分がセッションに行ってみて、格好良いなと思ったからメールをしたんです。そしたらそのまま、じゃあやろうかって言ってくれたんで、あんまり難しく考えずに行動してみたらいいと思いますね」

——学生プレイヤーの皆さんへ一言!

「さっきも言ったけど腰は軽く。僕、和歌山に毎週2時間かけて練習しに行くって言ったら、友達に『何考えてんの(笑)』って言われましたけど、やっぱり行くだけの価値はありますからね。だから面倒くさいと思う前に動くっていうのは大事だと思います」
「いろんな音楽、ものを見れる目を持ったら、きっと自分にビビっとくるものがあると思うので、いろんなことに興味を持って、多角的に見られる目を養っていってほしいですね。漠然としてますけど(笑)」
「そうですね、いろんな意味で“自分”を持って、自分を大切にしてください」
「私はたまたまジャズに出会ったから、ここまでがむしゃらにやってきましたけど、周りを見たら何も趣味がなくて、ただ単に大学行って就職してっていう人も多いですよね。やっぱりそれは寂しいことだと思うので、だからまず好きなものを見つけて欲しいです。そしてそれがジャズなんだったら、なりたい自分を目指してがむしゃらに頑張ってください」
「音楽に限ったことじゃないけど、10年20年単位でこうなりたいっていう到達点をまず作って、そのためにはどうしたらいいかっていう短期的な目標を作ることは大事だと思います」
「なんかビジネス書みたい(笑)」
「勉強になるなあ(笑)。僕自身まだ学生なので、今は就職活動中です。自分のピアノに自信がないとかではなくて、日本人の9割が体験していることだから、僕も一度は就職してみようと思っていて。それはたぶん音楽的にも無駄なことではないし、性に合っていればそのまま働くだろうし、音楽の方が良ければそうするだろうし。自分の経験が音楽に出るのなら、自分がやりたいことをやってみるのは大事だと思いますよ」

(Fine)

Album Information

YOUNG BLOOD 「PRECIOUS」

YOUNG BLOOD 「PRECIOUS」

サックスプレイヤー内藤大輔さんの「関西のジャズシーンをもっと盛り上げたい!」という想いから企画された関西若手ジャズミュージシャンによるオムニバスCD。2010年4月にセッションを開始し、デンソーテン本社内にあるレコーディングスタジオ“スタジオf”でレコーディングした楽曲15曲を収録した2枚組。関西若手ジャズシーンの「現在」を凝縮した貴重なアルバム。
[SFPレコード(SFP-1106)/好評発売中/¥1,500(税込)]

詳細はこちら

Member Information

海堀弘太さん (ピアノ)
1992年生まれ。4歳からピアノを始め、14歳でジャズに出会う。嘉瀬太務氏、木畑晴哉氏に師事。共演したミュージシャンは森山威男氏など。

志水愛さん (ピアノ)
幼少の頃からピアノを始め、高校生でジャズと出会い、池田裕志氏に師事。大阪音楽大学短期大学部ジャズコース入学後、畑本浩氏、石井彰氏に師事。在学中からライブ活動を始め、卒業後の現在も関西を中心に活動している。
http://yaplog.jp/manami92/

関谷友加里さん (ピアノ)
1983年生まれ。4歳からピアノを始め、高校生でジャズに出会う。大阪音楽大学短期大学部ジャズコースを首席で卒業。畑本浩氏、石井彰氏に師事、在学中よりプロとして演奏を開始。卒業後はオリジナル曲を主体とした自己のトリオでの活動のほか、インプロヴィゼーションでの表現や舞踏とのコラボレーションなど多彩に活動する。
http://sunset-glow.dreamlog.jp/

田中和音さん (ピアノ)
1987年生まれ、大阪府出身。幼少よりクラシックピアノを始め、10歳のときにジャズ・ピアノに転向。大阪芸術大学音楽学科ポピュラーコースで近秀樹氏に師事。卒業後は関西を中心に演奏活動を続けるほか、ヴォーカルのサポートや楽曲提供なども行っている。
http://kazune30.blog111.fc2.com/

永田有吾さん (ピアノ)
1989年生まれ、兵庫県出身。高校の先輩である大友孝彰氏に影響されジャズに傾倒。1年間アメリカに留学し、留学先の高校でビッグバンドに所属。生田幸子氏に師事し、18歳より音楽活動を開始。19歳で初めて自身のリーダーライブを行う。2011年には自身の名義でアルバムも発売予定。
http://japiyo.exblog.jp/

橋本秀幸さん (ピアノ)
1986年生まれ 大阪府在住。シンプルで純度の高い音楽性はジャンルを超え、数多くのアーティストサポートやアレンジ、レコーディングに参加。舞台の音楽制作やアーティストへの楽曲提供も行う。最近では和楽器とのコラボレーション、ピラティスワークショップなどでの空間演出など、枠を超えても自然に共存できる幅広い即興力と柔軟な感性によって、さらなる活動の幅を広げている。
http://hideyukihashimoto.com/



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[vol.5] 座談会「ドラムについて」。鳥垣優羽×中野圭人×中道みさき×水上洋

関西若手ジャズミュージシャンたちによる座談会の模様をお届けする第五弾。第五回目はジャズの要でもあるリズム隊の登場です。関西で活躍するドラマー4人に集合いただき、オススメの練習方法や心掛けていることについてお聞きしました。ドラムに興味がある方必読の第五回目をお楽しみに!

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