TALKING JAZZ 関西若手ミュージシャンが語る、ジャズへの熱い想い。

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[vol.4] 座談会「ピアノについて」。海堀弘太×志水愛×関谷友加里×田中和音×永田有吾×橋本秀幸

プロジェクト「YOUNG BLOOD」に集まった関西若手ジャズミュージシャンたちがジャズについて熱く語る「TALKNG JAZZ」、第4回目のテーマは「ピアノについて」。集まってくださったのは海堀弘太さん、志水愛さん、関谷友加里さん、田中和音さん、永田有吾さん、橋本秀幸さんの6名のピアニストの方々。プロのジャズピアニストならではのさまざまな経験を楽しくお話いただきました。

  • 海堀弘太
  • 志水愛
  • 関谷友加里
  • 田中和音
  • 永田有吾
  • 橋本秀幸

——「ジャズに目覚めたきっかけ」について教えてください。

「僕は高校大学と関学なんですけど、高校は吹奏楽部でトロンボーンをやっていました。で、先輩に大友孝彰さんというピアニストがいるんですけど、大友さんはそのときサックスを吹いていたんですよ」
「ええ!?」
「そうなんですよ(笑)。それで、ある時にピアノのパートがある曲をやることになったんです。僕もピアノをずっと弾いてたし、高校生の男子でピアノを弾いてる人って少ないでしょ?だから『結構ピアノ弾けます』って言ったら、『うちにはもうめっちゃ弾ける奴がおるから』って言われて。『またまたー』って思ってたら、それが大友さんだったんです。僕は当時まだクラシックしか弾けなかったから、楽譜なしで自由にピアノを弾いてる大友さんを見て『なんだこのジャンルは!』って思ったのがきっかけですね」
「それはすごいね!なんか劇的」
「僕は最初ヤマハのエレクトーンを習ってたんですが、全然練習しない子で。でも14歳のときに、プロの人の演奏を聴く機会があって、そのときに『同じ楽器やのにすごいな』と思って、そこから真剣にやりはじめました。高校もエレクトーンだったんですけど、専門学校に行くときに、もっといろんな人と演奏したりできる方がいいなと思ったのと、ジャズできたら格好良いなということでピアノでジャズ科に行きました。そこから、先生とか周りのジャズやってる人に影響されて今に至るという感じですね」
「僕も子どもの頃からピアノを弾いてて、同じく全然練習してませんでしたけど(笑)。中学のときは吹奏楽部でトランペットを吹いてたんですけど、オーケストラとか吹奏楽ってピンときてなくて。当時、スイングガールズに友達がハマってたので付き合いで聴いてたりはしてましたけど。そんなときに、先生がたまたまジョン・コルトレーンの『ブルートレイン』っていうCDを持ってたんですよ。どうせまたスイングガールズみたいな曲かなとも思いつつ、ジャケットが格好良かったんで借りて聴いたらすごく良くてですね。だから最初はトランペットばっかり聴いてましたね」
「私も練習嫌いでしたね。ソナチネとかソナタとかまではいったんですけど、譜面が読めないんですよ。だから何か聴いて『これやりたい』と思う曲の譜面を持って先生に申し出るんですけど、読めないので先生に弾いてもらってそれを真似するという…(笑)。そんな子でしたね。で、あるとき教わってるピアノの先生が『あなたにはジャズが向いてるんじゃない?』と薦めてくれまして。まあそのときもそんなピンとはきてなかったんですけど、大学行くときにポピュラー科に行きたいと言ったら、先生に猛反対されたので間を取ってジャズ科にしようかな、という感じで。推薦入試で間違えてポピュラー科に願書出しちゃうんですけど(笑)」
「どんだけポピュラー科行きたいねん(笑)」
「それで一般入試で受けなおしたんですけど、当たり前だけど課題曲がコピー譜なんで大変でしたね。大学には講師で関谷さんがいたんですけど、本当にお世話になりました(笑)」
「そんなに読めないんですか?今も?」
「そうですね(笑)。まあ大雑把には読めますけど、音の粒は見ないですね」
「おお、それは珍しいタイプかも」
「志水はそれでいいと思うよ(笑)。私もみんなと同じでクラシックピアノをずっとやってて。で、高校1年生のときに、ベースをやっている兄にバンドの練習に連れていかれたんです。ジャンルはスカとかフュージョンで、そこからポップスをやるようになって。フュージョンからどんどんジャズに、という感じです」

——「それぞれの楽器の魅力」について語ってください。

「そうですね、まずピアノって抜群に音域が広いことですね。ピッコロの音からチューバの音まで出せるんです。その音域が故に出せる色彩感というのは他の楽器にはない魅力だと思います。あと、唯一打楽器なのか、弦楽器なのか分からないという中途半端な位置づけの楽器ですよね。だから打楽器的なアプローチもできれば弦楽器的なアプローチもできる。究極の八方美人的な楽器じゃないかなと思いますね。それがすごい魅力ですね」
「ずっと音楽に参加できるってのもいいですね。いつでも駆け引きに参加できるのが。フロントはソロでやり切るしかないし、ベースは裏に回るしかないけど、ピアノはどっちもできるんで」
「確かにずっと弾くこともできるし、入らなくてもいいときもありますもんね。めっちゃ速い曲のときとか、疲れた、と思って休めるし(笑)」
「あとはずっと座ってられるってことかな。サックスとかベースの人って大変やなって思ってます(笑)」
「手ぶらも大きいですよね」
(頷く)
「反面デメリットも大きいけどね(笑)。楽器が選べない分、どんなにひどいピアノでも、それで格好良く弾いてなんぼっていう。聴いてる人には分からないですもんね」
「あーでも、私はやっぱりピアノの音色が好きですね。私も小さいときにヤマハ行ってて、同じ部屋にエレクトーンがあったんですけど、『いろんな音出て楽しいやん!』って思いましたけど、結局ピアノ一筋ですもん。だからやっぱり音色が好きなんかなと思いますね」
「あと、演奏する人が多いからその分親しみやすいですよね。子どもさんとかでも喜んでくれますし。日本では一番演奏する人が多いんじゃないですかね、ピアノって」

——「効果的な練習方法」を教えてください。

「そんなんこっちが教えてほしいぐらいですけど(笑)」
「…嫌いなんですか?」
「ええ、嫌いですね(笑)。皆さんどうですか、やりたくないときとか…って練習好きそうですよね(笑)」
「いやいやいや(笑)。でも自然と弾きたくなったりしませんか?」
「あ、今日僕、目が覚めて気が付いたらピアノ弾いてました」
「格好良い!何それありえへん(笑)。そんなん言ってみたい!」
「そう、気が付いたらふた開けてて(笑)。自分で、あ、僕ピアノ好きなんやなって思いましたね」
「あ、でもね、私は練習嫌いなんですけど、ライブでやりたいって言われた曲があれば、それをめっちゃ聴きます。自分が本当にその曲が好きになったら、それで全部のソロ歌えるようになりますし、私の練習は聴くことかもしれませんね」
「…すごい。僕は逆にめっちゃ耳が悪いんですよ。単音を聴いても分からないぐらい、全然音が取れないんですよ。でも安次嶺(悟)さんが、どこかで『どうしてそんなにバップのフレーズをいっぱい弾けるのか』と聞かれてて、そしたら『ウィントン・ケリーの楽譜全部コピーしたもん』って言ってて。耳コピじゃなくて譜面でって言ってて、そんなんでええんやって思ったことはあります」
「ええ!それめっちゃすごいことですけど!すごいなー、私とは真逆のタイプですね(笑)」
「でもコピーは本当にいいと思います。聴いて、弾いて、書いて。コピーすると何をやっているのかがよくわかりますし。僕はあんまり覚えられないので、よく書きますね。それも練習になると思います」
「自分に合った練習方法を見つけられる人が一番いいんだろうね。正解はないと思う」
「そうですよね。あと、やっぱりジャズは駆け引きなので、相手が今何やってるとか聴かないとダメですから、普段の生活でもあまり独りよがりにならずに協調性を持った生活を心がけるべきですよね。大阪の環状線のせめぎ合いとか、あれすごいバランスですよ(笑)」
「確かに(笑)。あ、あと、自分の録音聴くといいって言いますよね」
「ああ、それは私もいいと思う。ライブはもちろん、練習のときも録って聴いたらいいと思います。いかにダサいかが分かるから。めっちゃ苦痛ですけどね(笑)。自分のCDとか聴くの辛いですもん。でも、前の音を聴いて恥ずかしいって思うのは成長の証だからいいことだと思います。格好良いって思っちゃったらそこで終わる気がして」

次ページへ続く)

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