TALKING JAZZ 関西若手ミュージシャンが語る、ジャズへの熱い想い。

前ページからの続き)

——「これは必聴!オススメアルバム」を教えてください。

「その人が聴きたいものを聴くのが一番やと思いますね。僕も聴きたいものしか聴いてこなかったし、でもそれでいいと僕は思ってるんで。それで好きな人のCDをいっぱい聴いて真似したりとかすれば。僕も今までいろんな人のいいなと思う部分を『こうなりたいな』と思って真似したりするんで、好きなものをどんどん聴けばいいかなと」
「まあそれが真理ではある(笑)。僕は子どもの頃はジャズが苦手やったんですけど、最初に衝撃を受けたジャズのCDはアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズの『チュニジアの夜』が入ってるヤツでしたね。当時は衝撃受けつつも、暗い雰囲気が微妙だったのでオススメではないんですけど。同じジャズ・メッセンジャーズなら『バードランドの夜』が聴きやすくて、何度聴いても飽きないという感じでオススメです」
「小さい頃からビル・エバンスとかピアノトリオが好きでよく聴いてたんですけど、その中で初めてこれはすごい!って思ったのはジョー・パスというギタリストの『Virtuoso』っていう曲でしたね。中学の時に出会ったんですけど。ギターソロなんですけど、ギター一本でこんなにできるのか、と。ギターだけでベースとメロディを同時に演るって難しいんですけど、それをやすやすとやってのけるのが本当に格好良いんですよ。あとジャズギターって結構こもった音が多いのに、その録音はギター本来の生音の鳴りが素晴らしくキレイで。その頃から憧れて練習し続けてますけど、大学とか最近になってやっと、ちょっとはこの人のやろうとしてたことを理解でき始めたっていう感じで。そういう聴けば聴くほど新しい発見があるという曲がすでに60年も前に作られているというのがすごいですよ。これはギタリストは絶対聴いておくべき曲だと思います」
「ジャズボーカルは黒人系のボーカル曲を聴いて欲しいですね。三大女王と言われてる人は聴いといた方がいいと思うんですけど、始めた頃に聴いたときはカーメンとか正直ピンとこなかったですね(笑)。逆に私がよく聴いてたのはロレス・アレキサンドリアかな。あとは自分の音域に合った人を聴いてみるといいと思いますね。私の場合はバーブラ・ストライサンドなんですけど、バーブラは普通スイングで演奏される曲もバラードで歌うんですよ。あえてバラードで歌うっていう説得力がバーブラにはあって、そういう意味でもすごいなと思っていてすごく好きですね」
「アルトサックスでってなると、私はやっぱりチャーリー・パーカーになっちゃいますね。あの時代って二分か三分ぐらいしか録音できないんで、この曲を聴けっていうよりもどんどん聴いていく感じなんですけど、その中で『チャーリー・パーカー ウィズ ストリングス』っていうアルバムがあるんですよ。最初に知り合いの人に『これ知らんかったらあかんやろ!』って言われて聴き始めたんですけど、コンボとかと違って鬼気迫る感じはない代わりに、すごく美しいオーケストラの中でチャーリー・パーカーが吹いてて、聴きやすいですし、今でもオススメしたいアルバムです」
「皆よくスラスラと出てきますね・・・うーん、クリスチャン・マクブライドは好きですけど、他人にオススメってわけではないですし・・・いっぱいあるんでね。好きな曲を好きなだけ聴いてください」

——「学生時代にやってて良かった!やれば良かった!」と思うことは?

「良かったことは、学生時代から音楽活動できてたのはラッキーでしたね。逆にやれば良かったなと思うことは、もっとちゃんと基礎を勉強すれば良かったなと思います。学生時代はめちゃくちゃ時間がありますからね。僕も練習はしてたけど、今思えばもっと効率のいい練習方法があったんじゃないかなとか思ったりもしますし」
「僕はまあ、犯罪と名前が付くこと以外はひと通りやったので・・・女の子ともうちょっと遊びたかったかな、というぐらい(笑)。ヒッチハイクとかもしましたしね」
「ヒッチハイク?」
「うん、東京のライブに誘われて『行きます』って返事したんですけど、お金がなくて」
「え、間に合ったの?それ(笑)」
「17時間ぐらいかかったけど、まあちょっと遅い夜行バスで行ったと思えば(笑)。ヒッチハイクは3、4回しましたよ。真冬に6時間待って一回も止まってくれなかったこともありましたね。行きに見かけたけど、帰りにもまだいたから可哀想になって乗せてくれたりとか(笑)。まあ音楽関係ないですね」
「いやいや、そういうのも少なからず音楽に出るって」
「乗せて車~♪みたいな(笑)」
「(笑)でも確かにあまりにも止まってくれないときは横で弾いたりはしましたね」
「面白い(笑)。私がやってて良かったと思うのは、小さい頃に少しでもピアノをやってたこと。嫌々行ってたピアノ教室だけど、習ったことは覚えてるし、音感は身に付いてるし。ちっちゃい頃に無理矢理でもやってたことってすごく残るんですよね。もちろん幾つになってもやる気があればできるけど、子どもの頃の吸収力ってハンパないので。あと、美術をやっていたのも芸術という点では同じことですし、曲を自分なりにイメージできるのでいいと思います。音楽はもちろんだけど、いろんな芸術に触れておくのもいいことだと思います」
「やりたかったなあということでは、私はバンドがしたかったなあ。高校入るときにクラシック専門って決めてたので、空いてる時間は練習ばっかりだったので、軽音楽部的な楽しい音楽に憧れますね。もちろん練習してて良かったとも思うんですけど、手放しで楽しいことができるのも学生時代だけだったと思うので。しなくちゃいけないことも大事だけど楽しむことも大事だよって思います」
「まあ本当にね、練習しとけば良かったって思っても、きっと今から戻ってもやらないだろうしなあ(笑)。たくさんCD聴いたり、自分の中のすごい人っていうのをいっぱい作って、目標もいっぱい作って、それが一番だと思いますね」
「目標は本当にいっぱいある方がいいと思いますね。僕はセッションとか結構行くタイプやったんで、良かったといえばそれが良かったことかな?悔いはないですね。学生の皆さんも楽しみながら、音楽をどんどん好きになっていけばいいと思います」

(Fine)

Album Information

YOUNG BLOOD 「PRECIOUS」

YOUNG BLOOD 「PRECIOUS」

サックスプレイヤー内藤大輔さんの「関西のジャズシーンをもっと盛り上げたい!」という想いから企画された関西若手ジャズミュージシャンによるオムニバスCD。2010年4月にセッションを開始し、デンソーテン本社内にあるレコーディングスタジオ“スタジオf”でレコーディングした楽曲15曲を収録した2枚組。関西若手ジャズシーンの「現在」を凝縮した貴重なアルバム。
[SFPレコード(SFP-1106)/好評発売中/¥1,500(税込)]

詳細はこちら

Member Information

池田杏理さん (ボーカル)
6月11日生まれ。大阪芸術大学美術学科在学中にジャズバーでのアルバイトをきっかけにジャズと出会う。卒業後、大阪梅田にある「ROYAL HORSE」のヴォーカルオーディションに入賞。その後、安藤昇、井上陽介、植田典子、村上“ポンタ”秀一ほか日本を代表するミュージシャンと多数共演。関西を中心に名古屋、仙台などでもライブ活動の範囲を広げている。

加納新吾さん (ピアノ)
1986年大阪生まれ。6歳よりクラシックピアノを習う。大阪芸術大学音楽学科ポピュラー音楽コースに進み、ジャズに傾倒。関西を代表するピアニスト近秀樹氏に師事する。在学中より演奏活動を開始。2009年3月 ジュリアード音楽院ジャズワークショップに参加。現在は自身のトリオや、様々なプレイヤーのサポートにて活動中。関西圏のみならず、全国にその活動の場を広げている新進気鋭のピアニストである。

加納星子さん (アルトサックス)
1983年9月9日生まれ。大阪音楽大学音楽学部器楽学科にてクラシックサクソフォンを学ぶ。卒業演奏会出演、優秀賞受賞。卒業後、本格的にジャズを学び始める。クラシックは後藤重樹、井上麻子、赤松二郎の各氏に、ジャズは土岐英史氏に師事。現在はヤマハで講師を務めるかたわら、京阪神のライブハウスやジャズバーを中心に活動中。

出宮寛之さん (ベース)
1985年生まれ。大阪音楽大学ジャズ科卒業。木村知之氏に師事し、14歳からエレキベースを始め、19歳でコントラバスに転向。ブルース、ファンク、フュージョンを中心に音楽活動していたが、次第にジャズに傾倒し、本格的にジャズベーシストとして関西を中心に活動中。

森下周央彌さん (ギター)
13歳でギターを始め、さまざまなスタイルの音楽を吸収し、高校生で大阪府秋季コンクール教育委員会賞を受賞。翌年に教育研究会賞を受賞。即興演奏という概念に出会い、本格的にジャズに目覚め、大阪音楽大学ジャズ科に入学。 土岐英史(as)氏に師事し、在学中からプロとしてライブやセッションを経験。学外で山口武氏、ハル高内氏にも師事、アシスタントとしてツアーに同行。卒業後は関西を中心に精力的に演奏活動を行っている。

吉田匡志さん (ドラム)
1989年3月15日、京都府出身。大阪音楽大学短期学部ジャズ科出身。中学1年生のときに、高橋延吉氏に師事したことをきっかけに、ドラムに真剣に取り組み始める。中学3年の2月、祇園のジャズライブハウス「Candy」で初ライブを経験。それ以来数々のライブをこなす。現在は関西のライブハウス、ジャズ喫茶などで演奏活動を行っている。

page page1
前のページ

[vol.3] 座談会「Jazzとは? Part3」。大竹亜矢子×木原鮎子×矢藤亜沙巳×横山未希

関西若手ジャズミュージシャンたちによる座談会の模様をお届けする第三弾。第三回目は女性ジャズミュージシャン4人による「Jazzとは?」。同じテーマでもメンバーが変われば雰囲気もガラリと変わる様をお楽しみください。第三回目もジャズの魅力をたっぷりと語っていただきます。

前の記事へ 次の記事へ

PAGE TOP