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山口ミルコのジャズひと観察
第6回

デンソーテンのスピーカーECLIPSE TD担当者のレニー(ジャズひと観察 第一回参照)から久しぶりに連絡がきた。

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ミルコさま、お元気ですか?
さっそくですが、新商品発表会にお越しいただいて、その感想をKOBEjazz.jpに書いていただきたいのです。
おかげさまでECLIPSE TDは本年度、10周年目を迎えます。
その良いスタートを切るべく10年前に発売してECLIPSE TDの原点となった5シリーズを新たにモデルチェンジいたしました。

イベント当日には、パーカッショニストの加藤訓子さんの演奏をお聴きいただきます。
加藤さんは、「サイトウキネンオーケストラ」という、世界で活動しているトップソリストを小澤征爾氏が指名して、年に一回、松本に集まるドリームオーケストラに10年間指名され続けたという押しも押されぬ世界的トップパーカッショニストです。
Jazz畑のミルコさんでも彼女のスキルと情熱には感動してもらえると確信してます。

我々は今回、録音されたマリンバをECLIPSE TDから再生し、生のマリンバと競演してもらうことで、ECLIPSE TDがいかに生の音に近いか、を、さらに、
「なぜトップアーティスト達がECLIPSEを選んでいるのか」をメディアの方に体感いただくというのが趣旨です。
久しぶりに会えるのをとてもとても楽しみにしてます!
ではどうぞよろしくです。

レニー
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・・・・・。
レニーはいつも強引だ。
ECLIPSEのこととなると、自社製品への愛全開で無我夢中で動く。
その情熱に圧倒される。
だからレニーの用事は、ぜったいに断れないのだった。

ジャズではなさそうだが、とにかく来いということか。

私は雨の月曜日、代々木上原 "ムジカーザ" に向かった。
一通だらけの道でなかなか着かなかった。
ムジカーザは坂の上にあった。
コンクリート打ちっぱなしの、洒落た建物だった。

新製品説明&試聴のあと、用意されていたサンドイッチとビールを少しいただいて、休憩をはさんで加藤訓子さんの演奏に入った。
私はスチールドラムを間近で聴くのは初めてで興奮した。
ふしぎな気分になる楽器だ。
熱気を逃がしたインドの寺院にいる様な気がしてくる。
昨年 "Linn Records" の "Best of 2011" に選ばれたという "kuniko plays reich"、アルバムのジャケット写真が前面のスクリーンに写し出されると、加藤さんの上腕の筋肉に目がいった。
加藤さんご本人と、新商品のスピーカー8台とのマリンバの合奏を真正面で聴いた。
狙いを定めマレットを振り下ろす加藤さんは神々しく、司祭をおこなっているように見えた。
加藤さんが生の音を叩き出すと、彼女のまわりをぐるり取り囲んでいた8台はいっせいに前進し、加藤さんの演奏とともに口々に唄い出す。
ECLIPSE TDは、ほんとうに、生き物のようだった。
加藤さんのマリンバはしなやかで、その姿も空(くう)を泳ぐがごとく。美しく転がる音の粒が、会場いっぱいに拡がり、私たちを祝福した。

演奏を終えた加藤さんは汗を光らせて、子どものような笑顔で戻ってきた。
最期の一音まで加藤さんの熱演に寄り添ったスピーカーたちは、傍にそっとうずくまっていた。


「kuniko plays reich」のプレミアライブ(1/17 東京)の
模様を動画でご覧頂けます。

01. Electric Counterpoint ver. for percussions

02. Vermont Counterpoint ver. for vibraphone

03. Six Marimbas Counterpoint

ARTIST INFORMATION
加藤訓子(かとう・くにこ)[パーカッショニスト]

桐朋学園大学卒業。同校研究科在席時から渡欧し、ロッテルダム音楽院へ留学。首席で卒業。世界的な指揮者や作曲家から注目される打楽器奏者として世界を舞台に活躍する。その技量、音楽性、芸術性の高さは、学生時代から注目され、ソリストとしてマリンバ、打楽器に天性の才能を発揮する。最新作「kuniko plays reich」は、ミニマルミュージックを代表するスティーブ・ライヒの楽曲を、加藤自身の手によりパーカッション用にアレンジ(世界初!)。

公式ウェブサイト

山口ミルコ

プロデューサー、編集者として出版社で20年、現在はフリー。文筆を主に芸能・文芸メディアのさまざまな企画にかかわっている。近況は、ミシマ社の「ミシマガ」連載エッセイ「ミルコの六本木日記」に。
最近の著書:『毛のない生活』山口ミルコ著(ミシマ社)

ECLIPSE TD 「新5シリーズ」