Denso Ten

Jazz People

神戸ジャズガイドマップ 英語版を発行
神戸市長に突撃インタビュー

KOBEjazz.jpを運営する株式会社デンソーテンでは、「音を通じたコミュニケーション」を合言葉に2003年から地元神戸を中心とした、学生やアマチュアミュージシャンの応援、地域への貢献活動を行っています。
コンサートイベントの協賛やジャズサイトの運営を続ける中、おすすめのジャズスポットを紹介する人気コーナー「ジャズ探訪記」の掲載店舗を冊子化、好評を博し神戸市からの活用要望を頂いて以来、神戸市内観光案内所やジャズスポットでの提供を続け、2018年までに累計5万部を配布しています。
今年度、訪日外国人観光客が増加する中で、より一層「ジャズの街神戸」を楽しんでいただき、神戸の街を盛り上げたいという想いから、神戸市市民参画推進局、神戸市民文化振興財団、神戸観光局と協力し、神戸ジャズマップ英語版「KOBE JAZZ GUIDE」を発行しました。

そこで今回は、ガイドマップの発行に際しご協力とアドバイスを頂いた神戸市より、久元喜造市長にお話をうかがいました。

Interview

Written by Atsumi Kashiwagi

「ありのままの神戸を楽しんでいただく」 そんな神戸流おもてなし

── 早速ですが今年はスポーツ観戦などの観点からも訪日観光客の増加が期待されます。インバウンド向けに現在お考えの施策などありますか?

久元市長「インバウンドの方々には、とにかく神戸の街を"はしご"していただくことが大事だと考えています。何か特別なことをやるのではなく、ありのままの神戸を発信し、我々が普段楽しんでいるグルメ、アートシーンなどをそのまま楽しんでもらうのが一番のおもてなしではないかと。
今回神戸のジャズガイドを英語で作っていただいたのは、すごくありがたいことです。我々、神戸市民が楽しんでいる神戸のライフスタイルを、ありのままでインバウンドの皆さんに楽しんでいただくということが神戸のあり方としてはよいと思うのです。
神戸は震災で被害を受けましたけれど、海があって山があって、洗練された街並みがあります。
ありのままの神戸をさまざまな言語で、いろいろなツールを使いながら発信をしていくというのがいいのではないかと思います。そういう日常を楽しんでいただければよいのですが、同時に非日常な世界にも触れていただく、それはラグビーワールドカップのようなイベントだと思うのですね。ラグビーワールドカップは一生に一度かもしれないイベントでたくさんの方が神戸に来られます。そういう非日常を挟むことによって、インバウンドの皆さんに神戸を楽しんでもらいたいなと思います。」

── 先日会見をされていましたが、5年連続で訪日外国人観光客が増加しているのですね。観光客も神戸に興味を持っているのだと思います。神戸と言えばジャズという文化が根付いていると思うのですが、市長がジャズという観点から訪日外国人の方にアピールしたいことやおすすめしたいことはありますか?

久元市長「先ほどのことと通じるかもしれませんが、神戸市民はジャズを楽しんでいて、このジャズガイドで紹介していただいているような様々なスポットがあります。多くの神戸市民はなじみのお店を持っているのだと思います。
ジャズは、アメリカ南部が発祥と聞いています。それが世界中に広がって一種の音楽芸術としての普遍性を獲得しているのではないかと思います。ヨーロッパのクラシック音楽がそうであるように、しかしそれとはまったく違う芸術、まったく違うやり方で普遍性を獲得し、ヨーロッパでも盛んに演奏されていますし、もちろん日本でも、アフリカでも演奏されています。民族・国籍・文化的背景が違っていても、世界中の人が楽しんで耳にしているジャズが、神戸の街の中で聞ける、非常に水準の高い演奏に触れることができるというのはものすごく意味のあることじゃないかと思います。」

── ジャズの観点から、インバウンドをねらう企画など何かお考えのことはありますか?ジャズを通じてインバウンドの方に働きかけていくような。

久元市長「もともと、神戸でジャズを聴きたい方々がたくさんいらっしゃって、ホテルでも日本語版のジャズマップをお渡しすると非常にありがたがられます。日本語であっても地図を見ればわかりますから。今回英語版ができたので、これでさらにたくさんのインバウンドの皆さんに神戸でジャズを楽しんでもらえるのではないかという気がします。」


グルメ、アート、音楽…まるごと神戸を堪能してほしい

── 今回、初めて英語版を発行するのですが、インバウンドの方々からの期待についてどういった印象でしょうか。

久元市長「とにかくジャズを含めて、神戸のアートシーンを楽しんでもらえると感じます。風景やたたずまい、食、アートシーン、ジャズが代表例だと思いますが、そんな"まるごとの神戸"を楽しんでいただく中で、ジャズが果たす役割は大きいと思います。
ミュージックは、グルメ、ナイトライフと結びついているところがあります。世界的に有名な神戸ビーフのほか、神戸は日本を代表する海の幸にも恵まれています。シーフードを使った料理、和食もあれば寿司もあれば、中華料理、フレンチ、イタリアン、スペイン料理などいろんな料理が神戸で楽しめる。神戸は日本を代表するいちごやいちじくの産地で、スイーツもたくさん作られていますし、もちろん灘のお酒も有名です。日本酒と和食、ワインとイタリアン、そしてジャズ。そのあとバーでジャズを楽しむなど、いろいろな楽しみ方で神戸の街、特にナイトライフを楽しんでもらえたらと思います。」

── 確かに神戸の街には、ジャズとお酒を楽しめるスポットが充実しています。神戸市全体の中でジャズの盛り上がりは感じますか?

久元市長「ジャズというと、どちらかと言うとシニア世代の方が多かった印象でした。しかし、デンソーテンさんに感謝申し上げないといけないのですが、高校生や大学生のジャズのフェスティバルやコンサートをすごく応援してくださっているおかげで、ジャズに親しむ若い高校生や大学生の方々が増えてきていると思います。神戸市在住の作家 松宮宏さんが書いた“アンフォゲッタブル”という小説でも、ジャズをやっている高校生や若者が登場する。そういう形で、高校生や大学生の若者がジャズを楽しむようになっているのはすごくいいことだと思います。全体的に言うと盛り上がっていると思います。
デンソーテンさんにも応援をしていただいている神戸新開地ジャズヴォーカルクィーンコンテストに行きましたが、ホールも満員ですごく盛り上がっていました。拍手や会場の反応を見ていますと、観客の皆さんが本当にジャズが好きなんだなというのがすごくよくわかりました。審査員の方が出演者一人ずつとやりとりするんですが、厳しいことを言うんですね。それに向き合うそれぞれの反応や、やり取りが特に面白かったです。出場者に神戸の人もいるけど、東京から愛知から大阪から来ていますし、クィーンになってゲスト出演されていた方は北海道の函館の人でした。
全国から参加しているし、全国から聞きに来てくれているし、コンテストが一種の登竜門になっている。これは『ジャズの街神戸』を象徴していると思います。国内でも海外でも認知されているし、非常に大きな可能性があると思います。ここで育った人たちがシアトルで演奏する機会が与えられ、どんどん世界で活躍してほしいと思います。」


ジャズを聞きたい人、演奏したい人、演奏する場所を提供したい人
いろんな人をつなげていく

── ジャズヴォーカルクィーンといえば、デンソーテンの元社員が優勝して、今プロとして活躍しています。デンソーテンは神戸に本社を置いて、社会貢献活動を展開していく中で音を軸にしています。単純にスポンサーでお金を提供するやり方だけでなく、特にアマチュアや若手ミュージシャンの演奏機会が少ないという声を聞いてサポートをしていますが、一企業単独では難しいこともあります。今後も行政の皆さんと一体となってコンテンツを作っていきたいと思っていますが、そういった企業と行政のコラボレーションの形についてはどのように思われますか?

久元市長「ぜひ、われわれも一緒に加わる形でやっていきたいと思います。今のお話の中で、特に演奏を披露する機会を増やしていくというのは我々もお手伝いをしていく場面がかなりあると思います。
いろんなホールや施設を活用して、ジャズを聞きたい人、ジャズを演奏したい人、ジャズを演奏する場所を提供したい人、いろんな人をつなげていくのは行政が本来持つ役割です。ぜひ一緒にコラボしていきたいと思います。街の中に音楽があふれている、流れているというのは大変素敵なことです。ささやかではありますが、最近『ストリートピアノ』を設置しています。デュオ神戸(JR神戸駅)、新神戸駅、鈴蘭台駅、西神中央駅、先日はポートターミナル、港、空港にも置きました。駅ピアノ、港ピアノ、空港ピアノが揃っている街は神戸だけではないかと思います。チェコのプラハのピアノ、シチリアの空港のピアノなどをテレビで拝見しましたが、3つが揃っているのは神戸だけかもしれません。そこで、例えばジャズを勉強している中学生や高校生が自由にピアノを引いてもらえたら。
先日、新神戸の駅でピアノの方とトランペットを持った方が全然知らない人同士でデュオをやりましょうとなって即興で演奏したそうで、とても盛り上がったそうです。駅や地下街や空港で、ひょっとしたらそういうシーンが広がっていくのではないかと思います。」

── ジャズマップの英語版をご覧いただいて、ご感想をいただけたらと思います。

久元市長「すごくわかりやすくできているなと思います。マップとそれぞれのライブハウスやバーの情報が非常に見やすくなっていますし、工夫されていてオシャレなデザインになっていますね。これはどういうところに設置されるのですか?」

── 主に観光案内所や駅、ホテル、マップの掲載店に置いていただく予定です。ジャズイベントの会場などでも配布します。

久元市長「特にホテルでの配布は嬉しいです。今の仕事をするようになってからは自由な時間はほとんどないですが、海外に行ったとき、夜どういう時間を過ごすかとなると、やはりコンサートですね。どこで何をやっているのかというのがわかるのはとても良いことです。昔はわざわざ電話をかけて確認する必要がありましたが、今はWEBで情報を得ることができます。このガイドマップを見てお店のWEBサイトを確認することで、コンサートのスケジュールを把握できるのはすごく便利だと思いますし、神戸のジャズの発信につながると思います。」

── ありがとうございます。これからも神戸の街を盛り上げるために、いろいろなコラボレーションを打ち出していければと思います。今日はどうもありがとうございました。


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株式会社デンソーテン プレスリリース
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