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Jazz People

前田サラ インタビュー
充実した一年で、関西でも大活躍。

Interview

アーティストインタビュー by 小倉みか

ゴスペルアーティストであることを基盤に、ジャズ、ファンク、ロックと幅広いジャンルで活躍するサックス奏者の前田サラさん。自身の活動はもちろんのこと、有名アーティストのサポートとしても活躍の場を広げています。前回取材時(Vol.103)からちょうど一年、さらに前田さんにとってはどんな一年間だったのでしょうか。高槻ジャズフェスティバルと前田サラ関西3DAYSライブで今年も関西に来てくれた彼女にお話をうかがいました。


「関西の音楽家とも知り合えて、充実した一年でした」。
スイング・ジャズ・クルーズから広がった関西の輪。

── 前回お話をさせていただいたのはちょうど一年前です。いつもこの時期に関西を回られるんですか?

高槻ジャズストリートに参加する流れで毎年5月にツアーを組んでいて、いつもは東京からメンバーを連れてきてたんですけど、この一年で関西のミュージシャンと沢山出会いまして、せっかくの機会だから交流を深めるという意味もこめて、今回は関西のミュージシャンを中心に組みました。といっても、ミュージシャンは忙しい時期なので、地元のミュージシャンの力も借りつつ、ブッキングさせて頂き、おかげさまで強力なメンバーが集まって、面白いツアーになりました。

── ライブセッションなどではよくあることだと思いますが、初対面初音合せがライブ当日というのはスリリングですね。

もちろんメンバーの技量あってのものなんですけど、意外と大丈夫なものです。譜面と音源は先に送っておくんですが、昨日の京都では特に本当に初めまして方が多かったのでたので、上手くいって良かったです。

── 奇しくも今日は令和元年のスタートする5月1日ということで、前田さんには平成を振り返っていただこうかなと思ったんですけど。

生まれたときから平成だから、人生を振り返る感じになっちゃうなあ(笑)

── ですよね(笑)。取材させていただいた昨年を振り返って、どんな一年でしたか?

充実してましたね。常に音楽を通して新しいつながりがあって、先ほども言いましたが関西のミュージシャンとの出会いもそう。KOBEjazz.jpさんに取材してもらった流れで、スイング・ジャズ・クルーズで母校の葺合中学校と一緒にやらせていただいて。そのときにせっかく神戸に行くんだから、同級生がやっているバーもあるので、前日にライブもやっちゃおうってなったんです。で、ドラムセットもピアノも置いてないお店なので、普段あまりやらないんですけど、アコースティックな感じかなと。それでギターと組もうということになって、関西のミュージシャンの中から探した結果、そのライブでは、加瀬谷純基さんというギタリストにお願いする事になって。

── 今回も神戸でのライブは同じお店(EGG PLANT)で加瀬谷さんと一緒ですね。

そうです。純基さんはナチュラルキラーズっていうバンドをされてるんですけど、私がBimBamBoomにいた頃に対バンしてるんです。そのときは直接は知り合えなかったんですけど、すごく印象に残ってて。それで繋がっていたナチュラルキラーズのサックス在間一輝くんに紹介してもらって新たに生まれたつながりです。基本的にはバンド編成が好きで、アコースティックなデュオだとどうなるかなと思っていたんですけど、実際やってみたら二人って自由度も高いし、純基さんも私もプレイスタイル的に、アコースティックな雰囲気とは真逆をいくと思うんですけど、その2人での音のぶつかり合いがまた面白いなと思い、今回またこのライブを企画しました。

── スイング・ジャズ・クルーズきっかけで新たな出会いが生まれて、私たちも嬉しいです。

スイング・ジャズ・クルーズの次の日も、そのまま帰るかどうしようかって思ってたら、東京での知り合いの方がたまたま甲陽音楽学院卒業生で、ちょうど特別講師をしに神戸に来てて、遊びにおいでってことで、そこからまた新しいつながりができたりとか。あと、昨年は京都のRAGで大先輩の土岐英史さんが主催してるライブにも呼んでいただいて、そのときに出会ったのが清水興さん、マーティ・ブレイシーさんなど、関西のすごいミュージシャンの方々で。そんな出会いもあり、今回のツアーをやろうと。他にもサポートの仕事やレコーディングの仕事、色んなミュージシャンとセッションする機会もたくさんあって、本当に昨年は充実してました。

── 神戸に来られるときは「帰ってきた」って感じします?

そうですね、でも最近は関西でのお仕事もちょくちょくあるので、逆に懐かしく思わなくなってきました(笑)。ただ、昔よく歩いてた道とか、全然変わらないので、ホッとする気持ちはありますね。

── 神戸でお気に入りの場所とかありますか?

やっぱりハーバーランドが好きですね。それこそ小さい頃は家族でもよく行きましたし、楽しい思い出がいっぱいあるので。だからスイング・ジャズ・クルーズで演奏した時は嬉しかったですね。

「純粋に音楽に向き合っている姿は逆に刺激になりました」。
母校のブラスバンド部と一緒に演奏して。

── 葺合中学校の皆さんとは一緒にやってみていかがでした?

私もそんな時代があったんだなぁっていう(笑)。初々しさっていうか、みずみずしさっていうか、純粋に音楽に向き合っている姿は逆にこちらが刺激になりましたね。改めて思い起こされるっていうか。私ももっとまっすぐに向上心を持ってやんなきゃなって。

── 小学生から「プロのミュージシャンになる」と決めていた前田さんもすごいと思います。

いやあ…どうでしょう(笑)。今思うと小学校のときに『ドラマーになる!』って言ってる時点でちょっと変わってますよね(笑)。ミュージシャンになりたいと言っても、そのときはミュージシャンがどんな仕事で、どうやってお金をもらうのかも全然わかってなかったですけど、でも、ただ楽しくて好きでという感じで。

── でも、その「楽しい」「好き」という気持ちが大事なんでしょうね。その頃から比べて気持ちは変わってないですか?

あの頃と比べて、色々知ってしまった部分はあって、安定しない世界だし、大変な事もあるけど、純粋に音楽を楽しんでいい音を奏でて発信し続ければ、いい事あるし、いっぱいいろんな人と出会って、仲間が出来ていって、そこからまたつながりができて。今とても楽しいです。

── ちゃんとやってれば、人は見ていてくれる。

そうですね。音楽仲間が『前田サラちゃんっていう子がいるんだけど、こういう子で、めっちゃいいサックス吹くんだよ』って言ってくれて、そこから仕事をいただくことがほとんどです。今年決まっている2本のツアーもそうですし、昨年一昨年と、GLAYのTAKUROさんのツアーを一緒に回らせてもらったんですけど、そのきっかけも私がふらっと行ったジャムセッションに、GLAYのサポートのドラマーの方がいて、そこからのつながりだったりとか。人とのつながりは本当にありがたいことですし、大切にしています。

── 練習や日々の生活で気をつけていることはありますか?

日々の生活では、特に意識はしてないです。そろそろ体力作りをしなければとは思いますが (笑) 練習するときはいかに上手くというより、憧れの人の演奏を聞き込んで、どうやったらああいう音色が出せて、あんなプレイが出来るのかとか、しっかりイメージを持って練習するのと、技術的な所ではピッチやリズム、ニュアンスは大事だなぁと思います。

── 目標というか、イメージが大事ということですね。

本当に、それは大切だと思います。あと中学のブラバンで、サックスじゃなくてクラリネットになっちゃったのも良かったと思っていて、サックスは2万5000円のすごい安いサックスを買ってもらって(笑) 家で独学で初めたんですけど、どんなサックス奏者がいるんだろうって漁るところから始まって。独学で始めたのが良かったと思っています。誰かに教わりながらという形で始めていたら、レールに従ってるだけで、逆にこうはなってなかったかもしれません。

── 確かに、中高生の部活動の中では自分で好きなアーティストを探すのは意外と難しいですよね。

そうですね。たまたまお父さんが買ってくれた教本にも『イメージが大事だ』「頭の中でその音が鳴ってないと実際に鳴らせない』みたいなことが書いてあって、これを聴くといいっていろんな人のCDがどわーって紹介があって、たまたま目に止まったのがファンクやソウル、またそれがルーツにある人達で。とにかく沢山いい音楽を聴くのは本当に大事だと思います。

「もっと外に出て自分の音楽を伝えることができたら」。
さらに高みを目指して、これから挑戦したいこと。

── プロのミュージシャンを目指す中高生にアドバイスをいただきたいんですけど、前田さんにとってプロとアマチュアの違いってなんだと思いますか?

うーん、ずばり違いを言うと、音楽の技術、表現で目指す所のレベルの違いでしょうか。アマ、プロ関係なく、めちゃめちゃ技術のある人はたくさんいるんですけど、そのなかでも伝わる人とそうでない人がいて。それって結局自分が伝えようとしてるかどうかが大きい気がするんですよ。もちろん、いいものを見せようっていうのはみんな持ってると思うんですけど、そこからさらに音楽を通して何かを伝えようとしてるかしてないか、大事なのはそういうところだと思います。

── ありがとうございます。最後になりますが、これから挑戦してみたいこと、やってみたいことはありますか?

なんだろう…でも、外に出て発信していきたい気持ちはありますね。ライブハウスとか囲いの中でやってると、どうしても自分のファン以外の人が行きにくいと思うので、もっと外に出て今よりももっとたくさんの人に自分の音楽を伝えることができたらいいなと思います。

── 新譜とかフェスとか期待してます。

音楽フェスいいですよね!大好きです。そういう話もちょこちょこ来てるので、積極的に参加して、自分の音を聴いたことないっていう人にも伝えていきたいですね。お客さんにも言われるので、そろそろCDも出したいと私も思っています。環境さえ整えば是非出したいですね。頑張ります!

── 今日はどうもありがとうございました!


5月1日、神戸Live&Bar EGG PLANTで行われた前田サラ&加瀬谷純基 関西3days 神戸編のコンサートレポートはこちら

Album

前田 サラ
フロム・マイ・ソウル

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