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Jazz People

是方博邦 + ACE インタビュー
リスペクトしあう、二人のギタリスト。

Person

フュージョンからロックまでオールラウンドで活躍する、スーパーギタリスト・是方博邦さん。そして、聖飢魔II時代から現在に至るまで、確かな音楽知識と技術、卓越したセンスでファンを魅了してきたACEさん。フィールドの異なるギタリストのお二人が初めてセッションをしたのは2010年のこと。以来、それぞれ活躍の場を広げながら「是ちゃん+ACEちゃん」として、コンスタントにセッションライブを行っています。長年、ギタリストとして第一線で活躍し続けるお二人にお話をうかがいました。

  是方博邦

大阪生まれ、神戸育ち。1975年、大村憲司に誘われ上京、村上(ポン太)秀一、小原礼らと「カミーノ」に参加。77年「桑名正博&ティアードロップス」、79年「高中正義グループ」、82年「松岡直也グループ」に参加。83年ソロアルバム「KOBE KOREKATA」をリリース。89年「日野元彦エレクトリックバンド」、90年「JIMSAKU」のリードギタリストとして参加。93年TV番組「タモリの音 楽は世界だ!」で「KORE-CHANz」のバンドリーダーとして参加。2013年には9作目となるアルバム「LIVE OF LIFE」を発表。現在、「野獣王国」「ROCK UNIT」「tamKore」「SOULBALLADE」「CRAZY KORE-I-JUN」を始め、杉山清貴、石井一孝、ACEなど幅広くセッション活動をし、ライブトータル年間150本以上を全国で行っている。

  ACE

ギター、ベース、ドラム、キーボードを操るマルチプレーヤー。「つのだ☆ひろ&ジャップス・ギャップス」のギタリストとしてプロ活動を開始、R&Bやファンク・ミュージックを演奏し活躍していた間にも他のバンドにも精力的に参加。その後、1985年 CBSソニーから「聖飢魔Ⅱ」のギタリストとしてレコードデビュー。そのギターテクニックで高い評価を受け、1999年12月31日の解散までサウンドの柱をしっかり支えていた。音楽理論に基づくギターワークや作曲方法はギターキッズのみならず幅広いジャンルのバンドに対して影響を与え、プロデューサーとしても多くの作品を手掛けている。2001年より本田海月との音楽ユニット「face to ace」として活動。

Interview

アーティストインタビュー by 小倉みか

「お互い違うギタリストなので、そこに敬意を持ってます」。
是方さんとACEさん、二人のギタリストの出会い。

── 是方さんが2013年に出されたアルバム「LIVE OF LIFE」にACEさんも参加されていますが、お二方が初めてご一緒されたのはいつ頃なんでしょうか。

ACE「聖飢魔IIで一緒だったベースの石川(俊介)くんがずっと是方さんと活動していて、僕も誘われてはいたんですよ。でも僕のやっているface to aceとなかなかスケジュールが合わなくて。初めてお会いしたのは2005年のマウント・エナ(ロック・フェスティバル)ですよね」

是方「あーそうそう!マウント・エナやね。覚えてる」

ACE「あのとき、石川くんに紹介されて、それ以降もお誘いいただいてたんですけど、スケジュールが合わなくて、結局一緒にやったのは何年前ですっけ?」

是方「何年前やろ…ブルースアレイ(東京・目黒)やんね。2013年に僕のアルバムに参加してもらってるから、それのだいぶ前やんね。ベースの石川くんとは、聖飢魔IIが解散したときぐらいから一緒にセッションやらせてもらってるんですけど、ACEさんとももう長いですね」

ACE「あ、2010年のブルースアレイだ。それでその年のクリスマスにラグ(京都)」

是方「じゃあもう9年の付き合いだね」

── 来年で10周年ですね。もともとACEさん、是方さんは一見ジャンルは違うギタリストのように思えますが…。

是方「僕もずっと聖飢魔IIをみていて、ACEさんはああいう音楽をやられるんだろうなと思っていたら、意外とAORで僕の好きなジャンルでね。だから、好きな音楽ジャンルがリンクして最初に盛り上がったんです。最初はこっちのセッションに来ていただく感じで、ゲストで何曲か…というのをやっているうちに、ですよね?」

ACE「違いますよ、何曲かじゃなくて最初から全部(笑)」

是方「そっか、最初から全部か(笑)。それで名前も『是ちゃん+ACEちゃん』になったっていう」

── 『是ちゃん+ACEちゃん』、可愛らしいお名前ですよね。

ACE「それはライブの二部の最初に二人で出てって、是方さんが歌われたりするコーナーがあって。そのときに『是ちゃんACEちゃんでーす!』っていう感じで」

是方「『よろしくお願いしまーす!』っていう感じで出ていって(笑)」

ACE「それが今やユニット名にね(笑)」

是方「わかりやすい名前でいいよね(笑)」

── お二方ともギタリストとして素晴らしい方なのですが、お互いのギターの印象を教えてください。

ACE「いや、だって是方さんは神様じゃないですか」

是方「いやいやなにを…亀様だよ亀様(笑)」

ACE「とてもじゃないけど、足元にも及ばないんで。僕はもう本当に、よくこうやって一緒にやらせてもらえるなって」

是方「やめて~(笑)。もう、ずっとそういうこと言うんですよ」

ACE「でもそうでしょう?神戸が誇るギタリストですよ」

是方「もう、本当になに言ってるの(笑)。でも、僕にとってもそうですよ。ACEさんみたいなギターは弾けないし。お互い違うギタリストなので、そこに敬意を持ってますね。なおかつACEさんは歌われるじゃないですか。だからいいなあ、羨ましいなって思いますよ」

── 是方さんもときどき歌われますよね?

是方「僕の歌は賑やかしのようなものというか。そいうのではなくて、ACEさんはボーカリストとしていいんですよ。羨ましい。最近また声が太くなりましたよね。存在感が増してきた」

ACE「そうですか?でも確かに、やっぱり歌ってると変わってきますよね」

是方「すっかりボーカリストですよ。やっぱり歌うために音楽をやっているので、歌えるのは羨ましい」

ACE「そのぶんギターが歌ってるじゃないですか」

是方「そのつもりで、それを目指してはいるけどね」


「是方さんは神戸が近づくと神戸弁になる」「えっ、ほんまに!?」
毎年開催されている、神戸・チキンジョージでのライブ。

── 是方さんは神戸がご出身だそうで、やはり神戸に来られるときは故郷という感じはしますか?

是方「僕は甲南出身です。甲南中学、高校、大学を中退して東京に出てプロになりました。だから、神戸にはこうやって仕事で帰ってくることになるんですが、住んでいた芦屋の家は親の都合でもうなくなっちゃって。故郷なのに帰っても家がないのはちょっと寂しいんですよね。でもやっぱり中学高校から吸ってきた空気だから、『ああ、帰ってきたな』という気持ちになりますね」

ACE「是方さんは普段から世に言う関西弁でお話しされることが多いんですけど、車で移動していて、神戸が近づいてくると自然と神戸弁になっていって」

是方「あれ、ほんまに!?」

ACE「たぶん本人は気づいてないと思うんですけど」

是方「それは気づいてへんかったわあ(笑)」

ACE「大阪弁と神戸弁ってなんか違いますよね」

── 違いますね。でも、それは神戸のファンとしては嬉しい話です(笑)。ところで、神戸という街はツアーでは飛ばされることが多いんですが、ACEさんがチキンジョージで3DAYSやってくださるのは嬉しいです。

ACE「ああ、神戸は大阪が近いからね。チキンジョージには毎年来ていて、今年でもう8年目になります」

是方「そう、毎年来てるよね」

ACE「だいたい3DAYSの中日に僕が一人でアコースティックライブをやるんです。で、本編が終わって楽屋に戻っている間に何かが仕掛けられてるんですよ。それでアンコールに出てくると、もう次の年の予定が発表されるんです。それまでは一切教えてくれないんですよ」

是方「そんなことが(笑)」

ACE「去年は僕がアンコールで出てきたら、後ろのスクリーンに、いつ撮ったんだかわからないドラムの長谷川(浩二)くんが『来年は~』っていう映像が映し出されて発表されて(笑)」

── 神戸の街に抱いている印象とか、イメージとかありますか?

ACE「やっぱり港町だね。あと、復興がどんどん進んでて、それは良かったなあと思いますね。僕が初めて仕事で神戸に来たのは、つのだ☆ひろさんの仕事で、まだ震災前でね。高架下とか汚い感じの店がいっぱいあって、その中のきったない店がすっげー旨かったりして」

是方「ああ、いいよねえ。好きやったわ~」

ACE「元町の方に行くと、どんどん怪しくなってくんだよね(笑)」

── その頃に比べるとずいぶん街もキレイになりましたね。

ACE「あと僕、布引の滝が好きでね。新神戸駅からちょっと登ってったらすぐでしょ。素晴らしいよね」

── すぐ海、山なのも神戸のいいところです。布引の滝は是方さんは行かれたことありますか?

是方「あることはあるけど、一回くらいしかないな(笑)」

── ところでACEさんは、聖飢魔II時代にやっていらしたラジオ番組で結構ジャズの曲を流されてた印象があります。

ACE「言われてみればそうだったかも。パット・メセニーがすごく好きなので、あの辺のジャズですね。昔はビバップとかピアノトリオとかばっかり聴いてたんですけど、ある日、カウント・ベイシーを聴いてぶっ飛んじゃって。だから、カウント・ベイシーも大好きですね。亡くなってから、まだフレディ・グリーンがご存命の頃、フェスで大きなベイシーさんの写真が降りてきたときは泣きましたもんね」

是方「ACEさんはそういう、聖飢魔IIとはまた違った音楽も好きなんですよね。僕もジャズは通ってるし、やっぱりそういうところが気が合うのかなあ」

── お二方とも幅広く音楽を聴かれているところが共通点なんですね。

是方「ほんと、お互いそういうとこだよね」

── その頃、ACEさんが出されたソロアルバム「TIME AXIS」にもそういう要素が含まれていたのかなと。

ACE「んー、まあ、なんちゃってですけどね。相方のルーク篁ってのがものすごいじゃないですか。速弾きとかすごくて。それで対抗するには、音の並びで工夫したりとか、休符の入れ方で工夫したりとか、音色とか、そういう違うベクトルを目指さないとダメだなっていうところからスタートした感じはあります」

是方「確かに、速弾きとはまた違う系だよね。歌う系っていうのかな」


「理論は、感性の集大成を明文化したもの。先人たちの知恵」。
ミュージシャンを目指す人たちに向けてのメッセージ。

── ギターは他の楽器よりも独学で始めることが多いと思います。お二方は教則本を出されたり、後進を育成されることもあると思いますが、ミュージシャンを目指す今の若い人たちに思うことやメッセージをお願いします。

是方「今はYouTubeとかあるから、皆それ見てやっちゃうよね。そこにいいところもあるし、悪いところもある気がする。僕らの時代はインターネットがなかったから全部耳コピだったんですよ」

ACE「うん」

是方「レコードを何回も何回もね(笑)。でも、今から思うとあれがすごく良かった気がするんですよね。自分で『フレーズを取れた!』っていう感触があったというか」

ACE「僕も自分で何冊も教則本を出してるし、講師もやってたんですけど、そのときよく言ったのは、『理論と感性は相反するもの』みたいな考え方ってあるじゃないですか。『理論ばっかりに縛られず、俺は感性で弾くんだ!』みたいな。違うんですよ。理論っていうのは、感性を集大成して明文化しただけのことであって、結局、理論で言ってるのも『こうすると気持ちいい』『こうなってないから気持ち悪いんだよ』というのを体系化してるだけなんです。それって全部先人たちの知恵だから、理論が苦手な人は、面倒くさがって勉強しないだけでしょ?って思いますね。音楽が好きなんだったら、利用できるものは全部利用して、上手くなっていって欲しい」

是方「確かに、理論が使えるようになったら面白いですしね。だから、面白くなるまで乗り越えて、しこたま練習してほしいなって思います。特にギターは練習したぶんだけ返ってくる楽器ですし」

── やっぱり目標がある方がいいですか?

是方「もちろん!身近なところで、ライブやるからそれに向かって頑張るとか、CD作るから頑張るとか。あ、そうだ、絶対バンド組んだほうがいいよね」

ACE「それはそうですね」

是方「これは絶対条件のひとつに入りますね。一人でやってても頭打ちになるときがいつか必ずくるので、絶対バンド組んだほうがいいですよ」

── 最後になりますが、ACEさんのバンドface to aceのアルバム「SALVAGE PHASE1」が3月にリリースされました。

ACE「レコード会社からデビューしたんですけど、その頃の盤がもうないんです。ずっとライブでやり続けた曲を今のアレンジで、そして新曲も2曲足して、というアルバムです。新しくファンになった人に、あの曲が手に入らない、Amazonにもない、ヤフオクで…とよく言われるので、それなら新しく出し直そうと」

── 「フェーズ1」ということは…。

ACE「最初は、そんな代表曲ではないけども、最近ライブでアレンジし直した曲が何曲もあって、それをアルバムにしようと思ってたんですよね。でも、昔の代表曲が手に入らないんだったら、まずそっちからやろうということですね。フェーズ2は…再来年くらいかなあ(笑)。レコーディングって大変ですもんね」

是方「大変ですよね。僕もアルバム出したのは6年前だから、そろそろ次を考えようとは思ってるんですけど…一枚作るのって本当に大変なんだよね。だけど、まあ、頑張りたいと思います」

── お二方とも今後のご活躍も楽しみにしています!今日はどうもありがとうございました。


<関連>
KOBEjazz.jp:『是ちゃん+ACEちゃん』コンサートレポート
KOBEjazz.jp:face to ace コンサート情報

INFORMATION

是方博邦Official HP

http://toy-music.net/korekata/

face to ace Official HP

http://www.facetoace.jp/