SUEHIRO MITSUO / Music Producer
ジャズの楽しさを多くの人に。
毎年楽しみにしている人も多い、神戸ジャズストリート。国内外から集まった多くのジャズプレイヤーに熱心に耳を傾けるお客さんたち。神戸北野界隈の街がジャズ一色となり、プレイヤーとオーディエンスが一体となって楽しめると好評を得ています。そんな素晴らしいイベントを企画、運営する神戸ジャズストリート実行委員会の実行委員長を務める末廣光夫さんは音楽プロデューサーであり、元ラジオ局のディスクジョッキー。戦後開局まもなくのラジオ局からジャズやポップスを家庭に届け、当時人気DJとして活躍されていました。今ではレコードでしか聴くことのできない数々の名プレイヤーたちの生の音が楽しめた時代。そんな古き良きジャズ全盛期の頃から現在にいたるまでをおうかがいしました。
person

音楽プロデューサー
末廣光夫さん
昭和4年生まれ、神戸在住。「全日本ディキシーランドジャズフェスティバル」、「神戸ジャズストリート」を毎年開催。音楽プロデュースのほか、ジャズコンサートでの司会業や解説者としても活躍。サントリー地域文化賞、神戸市文化活動功労賞、兵庫県文化功労者表彰受賞。
大阪城JazzFestivalって?
KOBE JAZZ STREET
第26回 神戸ジャズストリート
10月6日(土)、7(日)12:00~17:00 パレード両日ともに11:00阪急三宮駅北側よりスタート
1日券/4,600円(前売/4,000円) 両日券/8,500円(前売/7,400円)
interview
「ジャズは当時一番手頃だったんだ」戦後ジャズブームの立役者。
第二次世界大戦が終わり、ようやく日本が立ち直りはじめた昭和27年に、末廣さんはラジオ局に音楽プロデューサーとして入社。当時、原稿を書いて読み上げるラジオ番組が多いなか、現在のようなフリースタイルで番組を進行してみたり、視聴者から電話でリクエストを受けるという「電リク」を採用してみたりと、画期的なアイデアと抜群の選曲、楽しいトークで当時の人気音楽プロデュースとして活躍されました。
「戦後、神戸には進駐軍がいましてね。彼ら専用のレコード『Vディスク』というものがあって、それは一般人の僕らには手に入らないものだったんです。Vディスクは、一般のレコードよりもずっと多くの種類があって、しかもいい音だった。Vディスクをラジオで流すのはまだ無理な時代だったんだけど、当時、アメリカ文化センターという図書館みたいなものがありましてね。そこにVディスクがいっぱい置いてあったんです。僕は通い詰めて、スタッフの人たちと仲良くなってVディスクをラジオで使用する許可をもらったのです。その頃のラジオはまだ放送台本があった頃。でも『ジャズはアドリブなんだから、自分で喋ればいいじゃないか』と先輩に言われまして、それで実際に始めちゃったんですね。まあ、現在でいうDJってことになりますか。面白い喋りが聞ける、しかも質の高い音楽が聴けるっていうんで、私がいたラジオ神戸(現ラジオ関西)が有名になったんですよ。
当時はレコードもまだまだ高価なものだった。基本的にはクラシックかジャズなんだけど、クラシックは曲が長いからレコードが高価だった(笑)。ジャズは曲の長さがだいたい3分とか4分だからね。聴くにも手に入れるにも手頃な存在だったんです」
「自分でコンサートを開いてみたくなった」企画から司会、総合プロデューサーとして。
一方では、音楽プロデューサーとしてラジオ局に勤めるかたわら、レコード鑑賞会やコンサートでの企画、司会、解説者としても精力的に活動を続けていた末廣さん。昭和41年に初めて開催された全日本ディキシーランドジャズフェスティバルを機に、自ら企画運営を行うように。現在では同イベントは41回目を数え、神戸ジャズの伝統を大切にしたイベント、神戸ジャズストリートも26回を数えるほどに。
「昭和27年頃はレコードコンサート(鑑賞会)が主流で、私も企画したり呼ばれたりしました。みんなレコードを一生懸命聴いていた時代。その後安い入場料でいい曲を、というコンセプトでアーティストを呼ぶ労音コンサートが人気を集めて、私はそこで司会を務めていました。そうこうするうちに外国人タレントブームが到来して、その司会にまた呼ばれるようになって。デューク・エリントン楽団のオリジナルメンバーのコンサートなんかもやりましたよ。そうこうするうちに自分で主催するコンサートをやってみたくなっちゃった(笑)。それが全日本ディキシーランドジャズフェスティバル。神戸ジャズストリートはもう少しあとになってから。どちらもコンセプトは異なりますが、生でお客さんが熱心に聴き入る姿と何が起きるか分からないジャズの面白さ。その楽しさに夢中で、気がついたらこの歳になってた!という感じです」
「神戸ジャズストリートのお客は世界一!」第26回神戸ジャズストリート開催に向けて。
子どもの頃からジャズに親しんでいる末廣さんが現在こだわっているのは「昔のジャズ」ということ。プレイヤーとオーディエンスが一体となって楽しむことのできる神戸ジャズストリートはまさにそのもの。アーティスト本位ではなく、観客が楽しんでこその音楽。末廣さんは、みんなが一緒に楽しめる、古きよきジャズの楽しさを今年も神戸に届けてくれます。
「海外のアーティストも数多く参加してくれる神戸ジャズストリート。毎年、『オレも呼んでくれ』と声がかかるのは嬉しいこと。それもそのはずで、神戸のお客さんは世界一のオーディエンスと言ってもいいぐらい、とっても素晴らしい。一番前のお客さんはもちろんのこと、一番後ろのお客さんまでが熱心に音楽に聴き入っている姿に初めて参加したプレイヤーはびっくりするし、すごい感動をしています。今年も多くの名プレイヤーが参加して、会場を楽しい音楽でいっぱいにすることでしょう。
僕は青春期にたくさんのいい音楽に出会って、そして現在、楽しいイベントができてることに、とても感謝しています。少し早ければジャズに出会えなかったかもしれないし、少し遅くても無理だったかも知れない。この時代に生まれて本当に幸せだと思います。今年も多くの方と一緒にジャズを楽しめることを楽しみにしています」
特集「神戸ジャズ文化を彩る人々の魅力」 KOBE Jazz People