HINO TERUMASA / Trumpeter
究める国際的トランペッター
9歳の頃からトランペットを始め、現在では「世界のヒノ」としてその名を知られるトランペット奏者、日野皓正さん。パワフルかつ繊細に、自在にトランペットを操るテクニックと心に響くステージングはジャズ界だけでなく、幅広い音楽シーンに影響を与えています。近頃では、国内外のコンサートやレコーディングのかたわら、「アジアを一つの国に」というテーマを掲げアジア地域での演奏活動や学生たちへのジャズクリニックなどにも積極的に参加されています。今年で5回を数える、関西の中高生ビッグバンドが集まる神戸元町で開催されるJAZZ PICNICにも初回からゲストプレイヤーとして参加、その気さくな人柄は学生たちから絶大な人気を集めています。今回は日野さんに神戸という街の印象、ジャズ教育についてうかがってみました。
person

トランペット奏者
日野皓正さん
1942年東京生まれ。9歳の頃からトランペットを学び始め、13歳の頃には米軍キャンプのダンスバンドで活動を始める。国内外で公演を行うかたわら、チャリティー活動やジャズ教育などの方面でも活躍。大阪音楽大学短期大学部客員教授。2004年には紫綬褒章を受章。
interview
「神戸はやっぱりオシャレな雰囲気だね」まずは神戸のイメージを。
中高生のビッグバンドイベント元町JAZZ PICNICにゲストプレイヤーとして毎年神戸を訪れている日野さん。数多くの国や街でさまざまな文化に触れている日野さんからみた神戸はどんなイメージなのでしょうか。
「神戸はやっぱりちょっとオシャレな感じがするね。神戸と横浜はどっちも『ジャズ発祥の地』って言い張ってるみたいだけど(笑)、どちらも港町ならではの独特な雰囲気がある。山と海があって建物も美しい。アジアンチックな雰囲気もあれば欧風な雰囲気もあるのがいい。横浜もいいけど、神戸はのんびりしてる感じがいいね」
「人に教えるより自分が上手くなりたい」ジャズを教えるということの意味。
日野さんは、今回の元町JAZZ PICNICでのクリニックのほか、現在は東京世田谷区教育委員会主催の青少年のビッグバンドDreamJazzBandの校長や大阪音楽大学短期大学部客員教授を務め、さらにさまざまな地域で新しい才能を育成するためのクリニックを精力的に行っています。多忙なスケジュールのなかでもクリニックの依頼を引き受けるのには「大人が子どもに教えてあげられること」の大きさに理由があると日野さんは言います。
「クリニック関係はこの歳になって、どんどん依頼が増えてきてるけど、本当はそれどころじゃない(笑)。正直に言うと、人に教える時間があったら自分の上達のためにもっと頑張りたいよ。もっともっと上手くなりたいんだ。

でもね、自分が子どものときに学校行事で行った渋谷公会堂(現C.C.LEMONホール)での東京フィルハーモニー交響楽団の感動は今でもしっかり覚えてるわけ。オーケストラの人たちが『トランペットの音を鳴らしてみましょう』って、ものすごい多彩な音が出て。そういう感動から人って楽器を始めたりするじゃない?

そうやって少しでも楽器に触れたりしていれば、大人になって社会人バンドを組んでみたり、定年退職したあとに久しぶりにやってみようかって楽器をまた始めたりとか、そいう活力につながったりするんだよね。

そもそも音楽をやっている人間っていうのはものすごくピースフルなんだよ。音楽ってコミュニケーションだから、音楽やってるときに物騒なことは考えないからね。音楽は楽しいっていうことを、東京フィルハーモニー交響楽団が僕に教えてくれたように、今度は僕が子どもたちに教えてあげなくちゃいけないと思う」
「もっと上手く、もっと格好良く」現在の活動、これからについて。
教育だけでなく、「アジアを一つに」というご自身の夢のもと、アジア各国での公演やチャリティー活動など、幅広い活動を続けている日野さん。人一倍音楽を、ジャズを愛するからこそ生まれる想いがそこにあります。
「ジャズは僕にとってご飯を食べるためっていうのもあるけど、人生かけてやってるんだから当然ビジョンは大切だね。さっきも言ったけど、音楽は本当にピースフルなもの。国には国境があっていろんな問題があるけど、音楽には国境がない。音楽でみんなが幸せになれる、そういう平和を考えていきたい。最近やってるアジアの演奏活動もそれが大きな理由です」

「トランペットがあったから今ここにいるんだっていうのを実感してます。絵を描いているのもトランペットがきっかけだし、スポーツもそう。生活のすべてがトランペットから始まってる。万全の調子でずっとやっていきたいからね。だって80歳になってもこの音が出せたらめちゃくちゃ格好良いと思わない?聴いてるだけで感動するような、サッチモみたいな音が出したいね。これからも格好良くいい音を、楽しい音楽をやっていきたいと思います」
特集「神戸ジャズ文化を彩る人々の魅力」 KOBE Jazz People