スタジオfの録音レポート

MSJQ

MSJQ

no.14

オリジナルでありながらキャッチーなMSJQの2ndアルバム。

これまで50枚以上にわたるCD、DVDに参加するなどして、スタジオワークの経験も豊かなピアニスト元岡衛さんがリーダーを務めるMSJQの2枚目のアルバム「Impulse」のレコーディングをスタジオfで行いました。
「1枚目のアルバムから引き続いて、全曲オリジナルでありながら、マニアックではないキャッチーなジャズを、しかし決してイージーリスニングではないジャズがコンセプトになっています」と元岡さん。今回のアルバムに収録されている曲は既に何度もライブで演奏されている曲ばかりなので、音源化されることを待ち望んでいたファンも多いはず。そんな「Impulse」、一体どんなふうに作られていったのでしょうか、MSJQの制作風景をお届けします。


気心しれたメンバー同士、和やかな雰囲気に包まれたスタジオf。

「今回の収録曲はアルバムを作るために作った曲ではなく、曲がたまってきたのでアルバムを作ろうかという感じです。なので、ずっとライブで演奏してきた曲ばかりなので、特にリハーサルをすることもなく、普段どおりに録音できたらと思いレコーディングに臨みました」というMSJQのメンバーたち。数テイクを収録した後、各々の演奏だけではなく、全体的なノリを意識してOKテイクを選出されていました。
楽曲の内容は元岡さんご自身が体験されたいろいろなシチュエーションでの心情を映し出すような楽曲が多く、各曲作られた当時のエピソードなどを話すなど、気心知れたメンバー同士、録音の合間も和やかな雰囲気で進んでいきました。
録音はデジタル信号として記録され、そのまま録音編集ソフト上で編集されていくこともよくあることなのですが、今回は音源をスタジオのミキサーに送り、手動で音量の調整を行ったり、音の調整も真空管を使用した機材を駆使し、元岡さんが持たれているイメージに近づけるべく工夫をされていました。

ミックス終了後、レコーディングの感想を聞いてみました。

元岡衛さん
今回はエンジニアにも友達のパーカッショニストのチ―チョ西野こと西野欣哉に頼んだこともあり、全員が知り合いだったので、私語が多すぎて困りましたね(笑)。録音終了後の編集作業では各楽器の音色はあまりいじらなかったのですが、音の配置を決めるのに時間をかけた感じです。おかげさまで良いアルバムになりました。

西野欣哉さん(レコーディングエンジニア)

今回の録音では「生々しく迫りくるリアリティーのあるサウンド」ではなく、「美しくもどちらかというと生っぽいライブ演奏ではない」ようにするのが大変でした。録音が2日間、しかもマイクとトラック数、そして部屋に限りがありますので、録音時に実験的なことはできません。そのための工夫と、その状況でプレーヤーが気持ちよく演奏できる環境作りにとても気を使いました。
元岡さんの曲はどの曲もアレンジもがすばらしく、その質感を出すためにミックス作業ではエフェクターを随所に使用しましたが、今回はそのさじ加減にとても苦労しました。ライブの生演奏というより「バンドのサウンド」に仕上がっていると思います。

美しいメロディと演奏が、聴く人の心に染み入る一枚。

今回のアルバムは10曲中8曲が元岡さん、2曲が里村さん作曲というオリジナル曲を集めたアルバム。オリジナルでありながら美しいメロディが心に染み入る、まさにコンセプト通りの素晴らしい仕上がりです。これまで何度もライブで演奏した楽曲、メンバーだからこそ生まれたバランスの良い今作、前作「Desert Moon」と併せて、多くのジャズファンにオススメしたい一枚です。

Album Information

Impulse/MSJQ

ピアニスト元岡衛さん率いるMSJQのセカンドアルバム。前作に引き続き、今作も全曲元岡、里村によるオリジナル曲。繊細かつ美しい楽曲と経験豊かなメンバーによるバランスの取れたサウンドが心に残る。
[B0081IOAMC/ステップスアールイーより2012年5月30日全国発売]

Member Information

元岡衛さん (Piano)
17歳よりプロとして活動、以降、ピアニスト、キーボーディストとして国内外の数多くのアーティストと共演。メジャー、インディーズを問わず、50枚以上にわたるCD、DVDなどに参加するなどスタジオワークの経験も豊富。ピアニスト、キーボーディストとしての評価はもちろんのこと、コンポーザー、アレンジャーとしても各方面から高い評価、信頼を得ている。

佐々木研太さん (Bass)
1969年、名古屋生まれ。独学でジャズのフィーリングやテクニックを学び、大学在学中よりライブハウスを中心に演奏活動を開始する。ジャズベーシスト須崎健二氏に師事。更なる技術習得のため、クラシック奏者 坂倉健氏に師事する。海外アーティストとのセッション経験も多く、ウッドベースとエレキベースを使い分け、ジャズを中心にジャンルにとらわれない活動を行っている。

里村稔さん (Sax)
12歳頃に兄弟の影響でアルトサックスを始め、大学でテナーに転向。独学でジャズを学ぶ。主にビッグバンドで活動。その後コンボの活動に力を入れはじめ、関西のライブハウスを中心に様々なジャンルで活躍。98年には大阪のグローバルジャズオーケストラとアメリカ西海岸のモンタレージャズフェスに参加。フュージョンユニットBLACK CANDY参加時には韓国ツアーを年2回行ったりと活動の場を海外にもひろげている。現在、古谷充ネイバーフッドビッグバンド、MSJQなどに参加。関西中心に様々なプレイスタイルで活躍している。

光田じんさん (Drums)
広島県出身。14歳よりドラムを始め、20歳よりプロとしての活動を始める。89年渡米、90年帰国後、関西を中心にジャズ、ブラジル音楽、フリーミュージックなどの分野で活動中。1997年よりフランス在住トランペッター沖至の来日ツアーとレコーディングに参加。2001年ニュージーランドのウェリントンでのジャパンフェスティバルに参加。2004年より打楽器によるソロパフォーマンスを開始。著名な共演ミュージシャンはオテロ・モリノー、フランク・ウェス、鈴木勲、沖至など。