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ジャズ探訪記関西を中心に、往年の名盤を聴かせるバーから、生演奏も楽しめるレストランまで人気のジャズスポットを紹介!

vol.119
ブルーノート

あをによし、耳によし。
@奈良・勝南院町

さてさて、奈良に来るのはいったい何年ぶりだろう。
いざ電車に乗ってみれば、大阪から一時間もかからないというのに、馴染みがないせいかちょっと距離を感じるのも正直なところ。
今回、ジャズ探訪記でも初めての奈良の店にお邪魔することになった。

…とはいいながら、初めてとも言いにくいところもあるんですね。というのも、このお店ブルーノートは京都から奈良に移転されたお店なのである。以前は京都三条から南に路地を入ったところにあって、ジャズ探訪記でいうと第80回目に紹介したことになる。

京都時代にもいろんな意味で時代を感じさせてくれるお店だったけれど、奈良に移転された理由というのもまた時代というものを考えさせられる。

大きな理由のひとつは、京都に学生が少なくなったことなのだ。もちろん総数としてはむしろ増えてるんだろうけど、大学の近郊への移転とかが多く、中心部では少なくなってしまったのだ。
そこに加えて建物の老朽化。そりゃそうです、なにしろ開店は1962年なのである。
ついに惜しまれつつも移転…となったわけだ。
とはいいながら、オーナーの大東さんは実は奈良のご出身。

ならまちに開かれた新しいお店は雰囲気も一新、古民家を改装したゆーったりとしたスペース。梁の見える高い天井も心地よい。
どーんと据えられたカウンターの半分は京都時代からのもの。それに新たに加えられたものを合わせて真円のカウンターとなっている。見分けるポイントは、ペイントされた鍵盤で、京都時代のものはなんと手描き!新しい方はシールを貼り付けたような製法だそうで、時代に磨かれ、すりきれているほうが京都時代のカウンターである。
でね、嬉しいのは広くなったステージと壁面にある席。これがアナタ、男の子にはたまらん作りなんですねえ。いや、ここはあえてくわしく説明しないでおこう。

そして!オーディオマニアはぜひご注目。
マッキントッシュの真空管アンプにウェストミンスターのスピーカー。これがなんともいい音なんですねえ、大東さん曰く「小さな音でもよく飛ぶ」。本当によく聴こえるんです。会話の邪魔にもならないしこりゃいいなあ。まあ京都のお店と違い、「住宅もたくさんあるのであんまり大きな音は出しにくい」という事情もあるらしいのだけど(笑)、元PAマンだった大東さんのチョイスは確かである。

基本的にライブは土日、でもイベントやらなんやら、なにかと忙しくなりそうな大東さん。市内にはかの山下洋輔さんのお祖父様による設計になる奈良少年刑務所もあり、その保存に関わる企画なんかもあるそうである。
奈良には奈良ならではの(←シャレじゃありませんよ)ジャズの基地になりそうな気配である。

「学生さんにぜひ来てほしいんですよねえ」とも。
学生でなくとも粉雪の舞い散る休日、お酒でも丁寧に入れられたコーヒーや紅茶でも、ここでぼんやりジャズを聴く…なんてのはとても贅沢な楽しみだろう。

古き良き奈良の中心ならまちにあるブルーノート。
ここから奈良にしかない(いや、奈良に鹿はたくさんいるけど)ジャズが生まれるのかもしれない。