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ジャズ探訪記関西を中心に、往年の名盤を聴かせるバーから、生演奏も楽しめるレストランまで人気のジャズスポットを紹介!

vol.113
六本木クラップス

六本木音楽文化を背景に日々奮闘する新拠点
@東京・六本木

六本木交差点の喧噪を後にし、飯倉方面へ向かうあたり、といえば往年のジャズファンなら誰もが懐かしさを感じる場所だ。80〜90年代には『六本木PIT INN』が、ジャズ&フュージョン発信拠点として大勢のファンを魅了した。また一方で、文化人・業界人・音楽関係者が、仕事を離れて粋に集うスポット、というイメージが古くから定着している。六本木クラップスはそんな洗練された界隈の中心に位置する。
地下へ向かう外階段を下りて店内に一歩入ると、清潔感あふれる明るさと広いステージが印象的だ。
案内してくださったのはブッキング/プランニング・ディレクターの中村庸一さん。「お店は3年前にオープンし、僕が来てからはまだ1年。本当にこれからなんですよ」。
実は中村さんは『ジャズ探訪記』Vol.75 STB139スイートベイジルの回でご登場いただいた。残念ながら同店は2014年に閉店してしまったが、同じ六本木で「音楽と食のスペシャリスト」中村さんが、新たなプロデュースをはじめたとの情報を入手。その企みをうかがいに本日やって来たという次第。
「まず客席のキャパに対しステージの広さに余裕があることがここの良さだと思います。ソロ・パフォーマンスからビッグバンドまで対応できますから。出演アーティストはJ-POPやロック、クラシックなど多ジャンルですが、生音かつライブ演奏の魅力、といったらやはりジャズは外せません」と中村さん。

古川初穂(pf)、須藤満(b)、則竹裕之(ds)、スイング・ミネラーゼ、とすでに多くの有名ジャズ・アーティストが出演中だ。本日は小林香織(sax&fl)マンスリーライブ。
柱などのさえぎるものが一切ないので、約70という席数よりかなり広く感じられた。一番後ろのこの席からもすっきりステージが見渡せる。赤いクロスのテーブルに置かれたキャンドルの光が手元を照らし、ライブハウスというよりレストラン・シアターといったほうがふさわしい。ひとりで聴きにきた女性のお客さまもけっこういらっしゃる様子。セクステットのモダンなサウンドを、食事とともにゆったり味わえるのは贅沢で楽しい時間だ。
男性諸氏にはナンですが、今日のようにセンターが美しい女性だと、いっそうおしゃれ感が増す感じ。全面禁煙、というのも音楽ファンには意外と重要かも。
「スペースをさえぎるものがない、ということは見た目だけでなく、どこの席に座っても同じようにいい音を体感できるということです。この点が出演されたアーティスト、お客さま双方にとって特に好評なところです。またコンサートラウンジの趣をもっているので、ストリングス、弦楽器はこの空間に非常にマッチしていますね。アコースティックなライブをさらに増やし、音楽文化の素地のあるここならではの新しいことを考えていければ」と中村さん。
たしかに弦楽器、となれば余計に「黒い」「暗い」じゃなくて、こうした明るいクリアな空間が似合いますね。

「70席というキャパには可能性を感じています。才能溢れる人材を発掘していくのもわれわれの仕事。若いアーティストが負担にならずにパフォーマンスを試すのにちょうどいいんです。また僕にとってはアーティストやお客さまとの距離がほどよく近く、それぞれのご要望やご意見を受け止めながら、時間をかけずに自分の意思を反映できる。いいボリュームなんですよ。音楽好きな方のパーティスペースとしても利用していただいています」。
仕事に関係なく、もともと音楽を聴くことと食べることが大好き、という中村さん。おいしいものが世の中に一杯あるように上質な音楽もたくさんあり、音楽性の高いものをお届けする自信だけはある、とも。
歴史ある音楽の街で、新たなにチャレンジしている六本木クラップスに大いに期待したい。