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ジャズピープル

ドラムで現代音楽を。生誕10,000日記念ソロドラム作品。

生誕10,000日を記念したソロドラムの作品をリリースしたスズキトモヒサさん。スズキさんは、ポップなものではないので興味ある人しか観ないかもしれないと言いますが、今回の作品は観る者に熱く迫るものがあります。活動拠点を関東から生まれ育った神戸に移して約2年、自身がこれから目指す"本当に好きな音楽をやる"ということをカタチにした作品に仕上がっています。作品を作る経緯やこれまでのスズキさんの経験など様々なお話をお聞きしました。

person

photo by Maiko Hara
撮影協力:兵庫県立美術館

スズキトモヒサ a.k.a. Soopy

1990年9月2日生まれ、神戸市出身。
幼い頃からピアノを習うが、10歳でドラムに転向し、その後、各種パーカッションも始める。学生時代よりロック、ジャズ、マーチングやクラシックなど様々なジャンルを経験。また、菅沼孝三氏、カルロス菅野氏らに師事。16歳の若さで菅沼氏のDVD「究極のスティックコントロール」にゲスト出演。活動拠点を首都圏に移し、20歳の頃よりプロとしてのキャリアをスタート。2010年には「PASIC 2010(全米打楽器国際コンベンション)」内のドラムセット・コンペティション(R&B, Funk, Gospel部門)にて準優勝。2015年末に拠点を地元・神戸に戻すも、自身のプロジェクトでCDを全国展開したり、他のプロジェクトではテレビCM曲への参加や海外ツアーの参加も果たすなど、独自の活動を展開し続けている。 自身が主宰するドラム&パーカッション教室、不定期で開催しているドラムクリニック(セミナー)やワークショップも好評を得ており、プロに対してのレクチャーも行なう。
Pearl Drums & Percussion(パール楽器製造株式会社)公式エンドーサー。

interview

コンテンポラリーの根源にはゲーム音楽。

── ソロドラムの映像作品(詳細は後述)を拝見しました。すごく、面白いですね。自由で型にはまっていない印象です。

スズキ「現代音楽というか、ジャンルレスな打楽器ソロだと思っています。全く新しいものを創るということを意識しましたね。」

── スズキさんがドラムを始めたのはいつごろですか。

スズキ「10歳から始めました。」

── ドラムに興味を持ったのはどうしてですか。

スズキ「小学3年生の時、音楽会で打楽器をやっていたのを母親が見て、”素質があるのではないか”と言ったのです。僕が幼い時から母は趣味でバンドをやっていて、いつも見ていたので、ドラムは既に身近な存在でした。近くにドラム教室があったので習いに行き始めたことがそのスタートでしたね。」

── いきなりジャズやコンテンポラリーな音楽を始めたわけではないと思いますが、どんな音楽に関心がありましたか。

スズキ「その当時、周りの友達と同じくテレビゲームをしていたので、ゲーム音楽が好きでした。ですから、インストゥルメンタルにすごく自然に入れましたね。」

── 確かにゲームの音楽は、クオリティが高いですよね。今やられているところにつながっている印象はありますね。

スズキ「僕が一番影響受けた、今でも凄いなと思うのが、ドンキ―コングシリーズです。そのメインの作曲家がデビット・ワイズという方なんですけど、素晴らしいと思います。ゲーム自体は今はやらないですけど、20年くらい前のその曲を最近でもよく聴いていますね。」

自分のやりたい音楽を模索する学生時代。

── バンド組んだりはしなかったのですか。

スズキ「中学では部活で吹奏楽のパーカッションを担当していました。ロックやジャズなどのバンドは組んでみたかったですね。周りでバンドやろうという雰囲気はあったのですが、定着はしませんでした。ただ、ドラムにどんどんのめり込んでいったのはこの頃です。」

── どのようにのめり込んでいきましたか?

スズキ「当時はゲームデザイナーを志していたぐらいで、何十本もソフトを持っていましたが、それを一つ残らず売って、売ったお金を全部楽器に変えました。そこまでスイッチが入ったのは何故なのか、今でも不思議に思えます。」

── 高校では吹奏楽などの部活には入らなかったのですか。

スズキ「部活には入りませんでした。高校は普通科でしたが、芸術コースだったので、学校の授業でクラシックをいろいろとやりました。部活ではクラシックや吹奏楽以外の音楽をやりたかったのですが、その高校には軽音楽部はなかったので、外部で活動の場を探しました。ロック系のバンドも考え、いろいろな人に会いましたが、ジャズのビッグバンドが自分のやりたいことに近いかと思い、社会人ビッグバンドに入らせてもらいました。」

── ジャズとの接点はビッグバンドなのですか。

スズキ「そうですね。ビッグバンドではドラムが花形的存在で、自由な雰囲気が自分には合うなと思いました。社会人ビッグバンドにお世話になった後、地域の学生ビッグバンドの企画に参加したりしました。」

プロとしてやっていくには東京でやらないと。


── 高校を卒業されて、すぐに東京に行かれたとお聞きしました。

スズキ「高校生のころはビッグバンド中心でした。本当はロック系もやってみたかったのですが、自分のやりたい音楽と合う人がいなかったので。ただ、僕自身はジャズミュージシャンになりたかったわけではないです。ジャズも好きですけど、色々こなせる打楽器奏者を当時から目指していました。高校生の時は、プロとしてやっていくには東京でやらないと多分だめだろうと漠然と思っていましたね。」

── 東京ではどのように音楽活動をされていましたか。

スズキ「東京へ行くのに、何もベースがないのは親も心配していましたし、僕としても何をやって良いか分からなかったので、どこか音大か専門学校に行こうと考えました。色々と考えた末、都内の専門学校の作曲科に行くことにしました。」

── 学校以外ではどんな音楽活動をされていましたか。

スズキ「ウェブでマーチングパーカッションを主体としたパフォーマンスグループの公募の記事を偶然見つけました。一般的なマーチングバンドのようにフィールドを動き回るのではなく、マーチングパーカッションを使って、ステージでパフォーマンスをやるグループです。これだったらやりたいと思い連絡し、加入することになりました。それが関東での活動の第一歩ですね。」

── それ以外に活動はしていなかったのですか。

スズキ「最初のうちはほぼそればかりでしたが、少しづつコネクションもできてきたので、他の活動も増えていきましたね。ジャズもあれば、ロックもエレクトロニカもありました。数で言うとジャズ・フュージョンが多かったです。自分がリーダーとなった企画ライブや、サポートもやっていました。」

── ご自身がリーダーでの活動はどんなことを。

スズキ「実質的なリーダーとなってやっているバンドは凸"TOTSU"というものがあり、2015年にCDをリリースしました。元々は金沢ジャズストリートに出演する目的で結成されたバンドで、サウンドとしてはコンテンポラリージャズやフュージョンといった感じですね。」

生誕10,000日記念。自分自身の音楽活動の一つの節目。



── 活動の拠点を神戸に移されたとお聞きしました。

スズキ「2015年の終わりには神戸に戻ってきました。神戸でのレコーディングやライブなどがその年に重なり、地元でも色々できるなと思ったことが神戸に戻ってくるきっかけですね。今でも関東で時々呼んでもらうことはありますけど、拠点は完全に神戸です。僕は7年ほど関東にいましたが、向こうでないと出来ない経験も色々とさせてもらったので、一度は行って経験することも大切だと思います。」

── 現在の活動を教えてください。

スズキ「レギュラーメンバーとしてやらせて頂いているバンドやユニットは幾つかあります。今のところは呼んで頂いて演奏することが多いですね。」

── 生誕1万日って面白いですね。どういう経緯でこの作品を作られたのですか。

スズキ「年齢は普段意識しますが、日齢って意識しませんよね。4、5年前、ふと日齢を計算してみて、もうすぐキリの良い数字になるということに気づき、何かやりたい、音楽活動の節目としたいと思いました。生誕1万日という括りはなかなかないだろうと。そのタイミングでライブをするか、CDを出すか・・・。ただ、ライブしてもリーチする数は限られますし、いっそのこと、今回は投資をしてでも集大成といえる作品を作って、なるべく沢山の人に観てもらえるようにしようと思いました。」

── 作品拝見させていただきましたが、かっこよくて、迫ってくるものを感じました。

スズキ「ありがとうございます。自分の目指しているものはポップなものではないので、興味を持ってくださる方が多くはないと思いますが、それはそれで良いと思っています。本当に好きな音楽をやる・・・僕はこのスタイルでいこうと。」

── 今はレッスンなどもされていると聞きましたが。

スズキ「神戸市内3ヶ所(三宮、六甲アイランド、ポートアイランド)と出張レッスンで開講しています。年齢・性別問わず来て頂いています。ドラムもパーカッションも、ジャンルも幅広くという感じです。教えることも好きですね。かなり頭は使いますが、考えをまとめて伝えることは自分のためにもなりますし、自分の音楽活動にも活きています。最近はこれも天職だと思っています。」

── これからやっていきたいことは。

スズキ「今後はより本格的に自分の音楽を展開していきたいですね。そのために、まずは練習や制作のための”環境整備”を、これから数年かけて進めていきたいと思っています。」

── 生誕10,000日記念動画はとても面白い作品ですので、たくさんの方に見てもらいたいですね。そして、これからの活動を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

information

[ RECOMMEND MOVIE ]

Solo Drums 10,000 days


The Equal Suite - l. Gate (Tomohisa "Soopy" Suzuki)



[ Release ]

The Amazing Letter/凸"TOTSU"
内容紹介
西日本出身の若手実力派ミュージシャン3人による、インストゥルメンタル・プロジェクト「凸"TOTSU"」。 同プロジェクトで初となる音源が完成! 全曲をメンバーのオリジナル楽曲で構成した本作はキャッチーかつグルーヴィー、そして、技巧的・・・ジャンルを超えた表現で、様々な情景が見える内容。インスト好きの方にはもちろん、新たな音楽を探している方にもオススメの一枚! (制作協力:株式会社デンソーテン)

注目のバンド=凸"TOTSU"の1stミニアルバム
バンド名=凸"TOTSU"の読みは「トツ」。2014年にベーシスト小山直人の呼びかけにより、キーボードの金沢法皇とドラムのスズキトモヒサの3人で始動した新進気鋭の若手実力派ミュージシャンによるインストゥルメンタル・プロジェクトだ。この5曲入りの1stミニ・アルバムは彼らにとって強力な名刺代わりの1枚に仕上がっている。1曲目を飾る金沢法皇作曲の「Heavens Lake」。楽曲もアレンジもカッコいい小山直人作曲の「Maelstrom」。哀愁を感じるようないい曲、スズキトモヒサ作曲の「Cosmic Wave」等、3人のテクニックと作曲の才能にも注目。2016年春にはアルバムリリース記念ライヴツアーが予定されている。3人とも20代! 勢いある注目のバンドです。(The Walker’s 加瀬正之)
レコーディングの様子はこちらから

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