ウクレレが奏でる癒しのサウンド
スイングと自由を表現
ウクレレとジャズという今までにありそうでなかった組み合わせ。穏やかな癒しのウクレレをウッドベースとパーカッションのリズムが支えるという新しいジャズトリオ。リーダーでウクレレ担当のスインギー坂野さん、パーカション担当の西浦慎吾さんにウクレレ・スイング・トリオの魅力やこれまでの経験など幅広くお話を伺いました。
ギターからウクレレ、ドラムからカホン。
── スインギー坂野さんはいつからウクレレをされたのですか?
坂野「元々はジャズギターをやっていました。もらったウクレレが家にありまして、ジャズのウクレレでハーブオオタさんという有名な方がいるんですが、その方を真似て3-4か月弾いたことがありました。でも飽きてしまって、しばらく弾くことがなかったのですが、6-7年前にジェイクシマブクロさんの映像をyoutubeで見て、”ウクレレでこんなことができるんだ”と思って真剣に始めました。」
── ウクレレを始めたのは比較的最近なのですね?
坂野「そうですね。ギターをずっとやっていましたからね。ジャズギターを長くやっていました。その前はポップやロックをやっていましたけど。今でもギターは弾きますが、ウクレレが中心ですね。」
── ちなみにギターを始めたきっかけは?
坂野「吉田拓郎さんに憧れて。フォークですね。そこから海外のフォークも好きになってニールヤングやジェームステーラーなどに憧れました。そのあとは、ロックに興味をもってエリッククラプトンなんかも聞いていました。ジャズは社会に出てからですね。」
── 坂野さんがジャズを始めた理由は何だったのでしょうか。
坂野「ジャズは高校生のころから憧れていましたね。ラジオで聞いたとき、”意味わからんけど、かっこいいな“って思い、一度やってみたいと思いました。大学の時はロックがメインでした。その後、いったん音楽をやめて、社会人になってジャズを聴くようになりました。」
── 西浦さんはいつからパーカッションを始めたのですか?
西浦「元々はジャズのドラムを演奏していまして、カホンをライブで使ったことがありまして、坂野さんのウクレレとの相性も良く、楽しかったのもあって、ドラムをやらずカホンばかりになりました。」
── ドラムはいつからですか?
西浦「学生のころからですね。ロックをやったり、色々経験して、ジャズは最後にたどりついた感じです。今のバンドで考えると、ウクレレでドラムだと音が少し大きくて、カホンとのバランスがいいですね。このバンドの活動が活発だったので、今に至っています。」
── ところでお二人の出会いは?
坂野「きっかけはジャズヴォーカルの人に誘われて、ジャズと日本酒のイベントに呼んでいただいて。それぞれのパートがイベントに呼ばれていて、パーカッションが西浦君で、ベーシストがいて、サックスがいて、僕はギターでした。その時にギターも弾くけど、歌を歌わして欲しいとリクエストしたんです。弾き語りもやっていましたので。その時すでにウクレレでも弾き語りをやっていましてね。そこで、パーカションがいて、ウッドベースがいて、サックスがいて。ウクレレとパーカッション、ウッドベース”この組み合わせは面白いな”ということになりまして。一回この形でやってみたいなとは思いました。それがきっかけですね。でも三人でやることになったのはそこから1年先なんですけどね。」
── トリオはいつ結成されたのですか?
西浦「2012年なので4年ちょっとくらいですね。」
── ウクレレでトリオって珍しいと思うのですが、またウクレレでジャズをやるというのはさらに珍しいと思うのですが。
坂野「かなり珍しいですね。ウクレレジャズというとジャズ界から見ると、ほとんど知られていないですね。ウクレレ業界から考えても、ハーブオオタさんというハワイで有名な人がいますけど、そんなにたくさんいるわけではないですね。あとは、ジェイク島袋さんだったり、高木ブーさんがやっているようなハワイアンのイメージですよね。」
ウクレレもハワイアンも進化
でも、ウクレレの魅力はやっぱり”癒し”
── ウクレレでジャズと言うと、穏やかなイメージを連想するのですが。
坂野「やっぱりウクレレの魅力は癒しでしょうね。ギターでやるのとはちょっと違うかもしれませんね。」
西浦「ジャズのスタイルで言うとわりとバップ以降に近いかもしれません。実はおとなしい感じの曲ではないんです。のほほんとした感じとはちょっと違うと思います。」
坂野「僕もモダンジャズ、ビバップ・バップが好きなので、ウクレレでバップをやっているというのは珍しいと思います。結構ガンガンいくところもあります。ジャズをたまたまウクレレとパーカッションとウッドベースでやっているというだけのことだと思います。」
── また、ウクレレと言えばハワイアンのイメージがありますけど。
坂野「スチールギターが”ほわわわーん”となって、フラダンスを踊ってというイメージがあるかもしれませんが、実はオールドハワイアンで、今のハワイではスチールギターが入ったハワイアン音楽を聞いたことないです。」
── 私たちの知っているハワイアンは誤解している可能性がありますか?
坂野「音楽もどんどん変わってきていますよね。日本の演歌や昭和歌謡が変わってきたようにハワイアンも変わってきています。リズムはロックのものだったり。あとはレゲエがすごいですね。ハワイアンレゲエは当たり前みたいですね。」
── ウクレレはハワイが中心なのですか?
坂野「今は東南アジアでも盛んですね。ウクレレフェスティバル自体もイギリスやオーストラリアなんかでもやっていますし。グローバルになりつつありますよ。」
── ギターと比べてウクレレの魅力はどこにありますか?
坂野「ウクレレはやっぱり癒しですね。楽器もかわいいし4弦ですし、柔らかい音が魅力ですかね。科学的にもアルファ波が流れているそうです。癒されるというのは科学的にも証明されているようです。ちっちゃな楽器で十分音楽できるというのが魅力ですね。また、楽器が手に入りやすくなりましたし、値段もそれほど高くはないですね。」
── 一方で、カホンの魅力はなんでしょうか。叩いている様子を拝見しているととても楽しそうに見えます。楽器がシンプルなだけに難しさみたいなものもあるのでしょうか。
西浦「叩けば音は出ますし、音の種類もたくさんあるわけではないので、難しくはないと思います。今からやる曲にどんなリズムパターンがあるのか。そういう選択のところがあるかもしれません。ウクレレが生きなかったら意味がないので。ドラムでできることほどカホンはそれほどできないんです。カホンってシンバルレガートがそもそもできませんし。それがない中で4ビートをどう表現して、どう曲に参加してくかということが難しいし、魅力でもありますね。」
── ウクレレでジャズをされている方はほかにいらっしゃるのですか?
坂野「トリオというかバンドでは日本では我々だけかもしれません。ソロでは、ハーブオオタさんとか、ベニーチャンさんとか有名な方がハワイにはいて。日本だとキヨシ小林さんという日本で一番有名なウクレレ奏者がいらっしゃいますね。今度大阪でジョイントライブをやりますけど。アロージャズのギターの中村さんもウクレレの方が有名ですね。ソロでやっている人でもそれほど多くはいないですね。」
── 坂野さんの楽器は特別なものなのでしょうか?
坂野「いやいやそんなに特別なものではないですよ。ハワイの楽器メーカーのものではありますが。こんなちっちゃくても中にピックアップが入っていてアンプから音を流すこともできます。ギターと遜色ないですね。今のギターと全然変わらないですよ。今のプロのプレイヤーはギターと同じで足元にエフェクターがずらっと並んでいます。ロックギターみたいなもんですよ。ウクレレも昔とは違うんですよね。」
ウクレレの本場ハワイでも認められる
第40回ナ・ホク・ハノハノ・アワードでの受賞
── 全国でライブをされているようですが。
坂野「そうですね。最近は関東や名古屋、四国にも行ってますね。」
── 各地での反応はどうですか?
坂野「聴いているお客さんは実はジャズのお客さんではないですね。ウクレレが好きな人が多いんです。」
── 失礼な話ですが、ウクレレファンというのはどのくらいいるのでしょうか。
西浦「ウクレレ人口すごい多いんですよ。」
坂野「たぶん、今、全楽器協会のような団体が一番力をいれているのがウクレレなんです。ウクレレは一番手軽な楽器ですし、ギターで”F”のコードでつまずくことがあると聞きますけど、ウクレレだとだれでも簡単に弾けますし、ワークショップで教えれば1~2時間あれば1曲弾けてしまうんですよね。入り口は入りやすいところですが、ジェイク島袋さんにしろ、僕のジャズにしろ、奥はとても深いです。」
── レッスンとかもされるんですか?年齢的にはどんな方が多いですか?
坂野「やりますよ。30代以降が多いですね。年配の方は増えていると思います。何か楽器やりたいというときに、いきなり”サックス”とか”ピアノ”とか憧れはありますけど、お金もかかるし大変ですよね。ウクレレは一番手軽なんじゃないかな。買って1時間で弾けるような楽器ほかにないと思います。他にウクレレも昔はハワイアンしかなかったのですが、今のイメージも少し変わりつつあるのかもしれませんね。」
── ところで、ハワイで“ハワイのグラミー賞”と言われる” 第40回ナ・ホク・ハノハノ・アワード”でインターナショナルアルバム賞を受賞されましたが。どんな賞なのでしょうか?
坂野「ハワイで一番の音楽祭で、日本で言うところの日本レコード大賞のようなものですね。ちょうど40回目だったのですが、ハワイの人ための音楽祭で、日本人は応募できないんですけど、一つだけ応募できる枠がありまして、それが”インターナショナルアルバム賞”なんです。そこも誰でも応募できるわけではなく、ハワイに関係する音楽をやっていることが条件になります。ぼくらの場合はウクレレという楽器を使用しているということで条件をクリアしました。もちろん他にも様々な条件がありますが。今回は5組ノミネートされていて、4組は日本人で1組は台湾の方でした。2枚目のアルバムの時です。」
西浦「ノミネートは毎年日本人もされるのですが、受賞までは至らないケースが多かったみたいです。」
坂野「ウクレレでは2組目の受賞ですね。去年、メジャーデビューした東京の方ががとっていました。個人的にはジャズでとったのは、初めてと自負しています。」
── KOBEjazzではビッグバンドを応援しています。ビッグバンドとの関わりがあれば教えていただけませんか?
坂野「ぼく同志社大学のサード・ハードを見てジャズを始めたようなもんです。たまたま、ダンスパーティのようなところで前座でポップスバンドで参加したんです。そこにサード・ハード・オーケストラが来ていて、その演奏を見てかっこいいという印象しかなかったですね。その音楽に合わせてダンスをしているのもよかったですね。次の日にジャズ習いに行こうと思いましたね。」
── 最後に、今回の3枚目のアルバム” Sunset Breeze”について教えてください。
坂野「アルバムはコンセプトを決めていますので。1枚目はセッションアルバムでした。2枚目は映画音楽など聞き覚えのあるジャズスタンダードを中心にしています。3枚目はハワイアンをジャズアレンジして作りました。ライブは初めから最後まで楽しんでもらえると思うのですが、CDだと楽曲がバラエティに富むとBGMとして聞きにくかったりしますので、わりとシビアにコンセプトを決めてやっています。今回は、ハワイアンをジャズにアレンジしています。スイングにしたり、ボサノバにしたりですね。アレンジはみんなで考えました。オリジナルは2曲いれています。「Happy Swing」と「Sun Set Breeze」という曲です。私が作曲しました。楽曲はウクレレを持って、ポロポロと弾いている時に、作る感じですね。それをバンドに持ち込んで、リズムを入れていきます。ウクレレは癒しの印象があると思うのですが、そういった面もありつつ、普通にジャズとしてのスイングや激しさ、自由さを感じてもらえれば、うれしいですね。」
[ RECCOMEND MOVIE ]
- MYSTERIOUS NIGHT/UKULELE SWING TRIO
- SUNSET BREEZE/UKULELE SWING TRIO
- THE DAYS OF WINE AND ROSES/UKULELE SWING TRIO
[ ライブ情報 ]※詳細はwebにてご確認ください。
- 香川県丸亀市 カラシアクラシック
- 日時:7月22日(土)19:00~ 2回ステージ
- 料金:チップ制
- お問い合わせ:香川県丸亀市原田町1586-1/TEL.0877-24-7771
- 徳島 JIRO'SギターBar
- 日時:7月23日(日)open 13:00 start 14:00
- 料金:チャージ2500円(1ドリンク付)
- お問い合わせ:徳島市栄町1丁目30J'sビル1F(千福ビル)/TEL.090-3436-9992
- 天満 フラットフラミンゴ
- 日時:8月26日(土) 20:00~ 2回ステージ
- 料金:チャージ 2000円
- お問い合わせ:大阪市北区天神橋4-10-22 千寿ビル3F東/080-3800-7797(マスター渡邊)
- 夙川 ウクレレカフェ オコナ
- 日時:11月12日(日)15:00~ 2回ステージ
- 料金:チャージ2500円(1ドリンク付)
- お問い合わせ:西宮市若松町3-2-201/TEL.0798-70-7057
[ リリース ]
- 2017/4/19 Sunset Breeze(サンセット・ブリーズ)
UKLELE SWING TRIO(ウクレレ・スイング・トリオ) - 1. Pua Lililehua リーリーレフアの花
2. Sophisticated Hula 月の夜は
3. Pearly Shells 真珠貝の歌
4. Sunset Breeze サンセット・ブリーズ
5. Moonlight Serenade ムーンライト・セレナーデ
6. Happy Swing ハッピー・スイング
7. On A Tropic Night 南国の夜
8. Love Letters ラブ・レターズ
9. Beyond The Reef 珊瑚礁の彼方
10. Smile スマイル
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