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ジャズピープル

「謙虚でオープンマインド」。

多方面で活躍され、スナーキーパピーのグラミー賞受賞でさらなる注目を集めている小川慶太さんですが、とても謙虚でオープンマインドな方。実は、神戸には学生時代を過ごしたたくさんの思い出があるそうです。神戸で過ごした2年間、また、同期とも言えるミュージシャン仲間とのつながり、スナーキーパピーやニューヨークでの音楽生活などを幅広く語っていただきました。

person

小川慶太

82年生まれ。出身は長崎県佐世保出身。学生の頃から地元で様々なバンドに所属し自らイベントなども企画し中心となって地元の音楽シーンを盛り上げる。高校卒業後、甲陽音楽学院で二年学んだ後、上京しアーティストのサポートやライブ活動を行った後に、バークリー音楽大学へ入学、そこでジェイミーハダッドに出会い大きな影響を受ける。 在学中ブラジルで三ヶ月過ごし、マルシオ•バイーア、キコ•フレイタス、セルシーニョ•シルバなどに師事。バークリー在学中から世界的に有名なチェロ奏者ヨーヨーマとの共演を初めアサッドブラザーズ、オスバルド•ゴリホフ、マリア•シュナイダージャズオーケストラ、スナーキーパピーなどジャンルの枠を飛び越えて現在の音楽シーンに欠かせないパーカッショニスト/ドラマーとして世界的に活躍中。様々な伝統を吸収した後、独自の解釈で多種多様な楽器を自由自在に使い音の世界を創り出す。常に新しい音を探求し、躍進中。ニューヨーク在住。

interview

「10年後みんなでニューヨークとかにいるんだろうなって」。神戸で志を共にした仲間とニューヨークで出会う必然。


── まずは、グラミー賞受賞おめでとうございます。色々なところで受賞についてはお話されていると思いますので、今回は神戸について色々と伺いたいと思います。元々は京都で生まれ、長崎県佐世保で育ったそうですが。

ありがとうございます。京都は生まれた時にいましたが、両親が長崎県佐世保出身で、生まれてすぐに佐世保に引越しして、高校生までは長崎にいました。そこから甲陽(音楽学院)がきっかけで神戸に来ました。

── 甲陽(音楽学院)を選ばれた理由は何だったのでしょうか?

ボストンにあるバークリーに行きたくて、バークリーとつながりがあるのが、甲陽だとわかったので、甲陽を選びました。

── 当時、ジャズをやっていたのでしょうか?

特別ジャズをやっていたというわけではなかったんです。高校時代はロックやポップスが多くて。ただ、当時習っていた師匠がいるのですが、その方がジャズをやっていて、それがきっかけでジャズをやりたいなと。ですので、甲陽に来てからジャズをやるようになりましたね。そこから、ジャズを勉強するには、ジャズバーやジャズハウスでアルバイトするのが手っ取り早いと思い、芦屋にあるレフトアローンでアルバイトを始めました。レコードもたくさんあったので、聴きたいレコードをたくさん聴きましたね。レフトアローンには本当にお世話になりました。当時、ライブも観れるし、ジャムセッションで同じ世代の甲南(大学)のジャズ研の人達が毎週ホストやっていたので、そこに混じったりしていました。そこからジャズに触れる機会がありました。

── ところで神戸はどういう印象ですか?

僕も佐世保という港町出身で、佐世保にもサンセットジャズフェスというジャズフェスがあって、毎年1回開催されていて、ジャズフェスが身近にありました。なので、初めて神戸に来たときは、すごい親近感を覚えました。ただ、故郷の佐世保より全然都会だったので、大都会で怖かったですね。住み慣れてくると、海も山もあって、音楽もジャズが盛んで、すごい好きな街になりました。神戸には2年間いました。甲陽に通っていた間ですね。

── 小川さんと同世代で同じ場所(神戸)にいた人たちもたくさん活躍されていますね。

黒田卓也さん、広瀬未来さん、清水勇博さん、西口明宏さんは同じ時にレフトアローンに通っていましたね。その時から交流があって、みんなでジャムセッションやりましたね。 不思議なことですが、神戸に居たころ、僕はアメリカに行きたいなと思って。ただ、その時、10年後みんなでニューヨークとかにいるんだろうなって漠然とイメージがありましたね。なので、その時は、熱かったですね。

── 全国広いと思うのですが、同じ時期に神戸に居た人たちが、国内外で活躍しているのは不思議な縁ですね。特にニューヨークで全員に会うのはすごいことですね。

そうなんです。関西のこの神戸にかたまっていた連中がバリバリ頑張っているのは、本当に不思議ですね。

── そういった方々の活動は刺激になりますか?

そうですね。とても刺激になります。仲間ですね。 ニューヨークにいても、日本人のミュージシャンはたくさんいるんだけど、黒田卓也さんは昔からよく知っているし、今回のJ-SQUADでも一緒だったし、清水さんはこの間ニューヨークに戻って来たのですが、だいたい一回日本に戻って、またニューヨークに来る人もいるし、みんなが頑張っているのでとても刺激になります。他に、広瀬さんはニューヨークから神戸に戻って、神戸を盛り上げるために頑張っていますね。

大所帯ならではの楽しさ。スナーキーパピー。



── バークリーへ行くきっかけは何だったのでしょうか?

甲陽を出てすぐにバークリーへ行ったわけではないんです。甲陽を出て、東京に2年間ほどいて、ジャズやポップスの仕事をやっていましたね。東京の最初の1年はあるパーカッショニストのローディーをやっていて、やっぱりアメリカに行きたいなという気持ちが強くなって、残りの1年間は東京で活動して、バークリーへ行きました。甲陽に居る頃にバークリーの奨学金試験は受けていたのですが、卒業してすぐに行ったわけではなく、ミュージシャンとしての活動した後ですね。バークリーは音楽理論、作曲、アレンジメントやいろんな専攻があるんですが、映画音楽だったり、音楽療法だったり、エンジニア、音楽ビジネス、教育など音楽全般何でもあるとことです。この規模での学校は日本にはないですね。バークリーには2年半いて、今にいたるまでアメリカを中心に活動しています。

── KOBEjazzではビッグバンドを応援しているのですが、小川さんはビッグバンドに参加された経験はあるのですか?

特にビッグバンドに関わって来たというのはないですが、ビッグバンドは好きです。 甲陽にいた時にビッグバンドのアンサンブルなんかもやっていましたし。ただビッグバンドメインでバリバリ演奏していたわけではないですが。

── 所帯でいうと、スナーキーパピーもビッグバンドのように大きいですね。また、日本にはない発想の編成だったり楽しみ方だったりできるバンドですよね。

そうですね。メンバーは大勢いますね。特に、メンバーの入れ替わりが多くて、それでもすぐに対応できるミュージシャンもたくさんいて、メンバーが出たり入ったりしているうちに、音楽面や人間性も含めて、気に入った人がバンドに残っているような感じでやっています。

── 練習はほとんどしないと聞いたのですが、一同に会して演奏する機会が少ないと思うのですが、アンサンブルとして合うものなのでしょうか?

それが合うんですね。みんなリハをしていないからという心配はしていないですね。 それぞれのミュージシャンが素晴らしいレベルにあるし、それぞれが素晴らしいインプロバイザーなので、演奏している中でどんどんアンサンブルが出来てくるので。

── お話を聞いていると日本にはないバンドの印象を受けます。どんなミュージシャンでも事前のリハをしっかりやっているのを取材などでよく見かけます。

スナーキーパピーのメンバーは自分達がジャズをやっているとは思っていないんだけど、ジャズって基本的にジャムセッションもあるので、インプロビゼーションで成立している音楽だと思うんですね。失敗しても、それもジャズの魅力なんだと思うんですね。スタンスとして、そこまでリハーサルしなくてもいいんじゃないかと思うんですよね。その緊張感も含めて、ジャズの魅力なんだと思う。

── やっぱり緊張感はありますか?

スナーキーパピーに関しては、ライブなどで積み重ねてきたものがあるので、リハをする必要性はないのだけど、スナーキーパピー以外の場面だと、ジャムセッションなんかの緊張感は好きですね。

「地下鉄の駅での演奏は楽しかった。」
自由なジャズの街ニューヨーク。


── 日本とニューヨークとの比較を聞かれることが多いと思うのですが、やはり違うものですか?

全然違いますね。どの場所と比べてもニューヨークは全然違う場所ですね。よくも悪くもごっちゃ混ぜの刺激のある場所ですね。

── ハイソな部分と下町風情のような二面性がある街という印象があるのですが

ジャズクラブでいうと、日本だとジャズを聴きに行くというと少し敷居が高いと思われますが、 ニューヨークは安いところは無料で聞けたり、有名なミュージシャンでも500円くらいで聞けたりするジャズクラブがあったり、簡単にジャズに触れられる環境があるんですよね。ニューヨークと言えばジャズ。ニューヨークに来たからにはジャズ聴きたいなって時に気軽に聴きに行ける場所があるっていうのはいいですよね。そこは日本とは違うところですかね。お店もたくさんあるし、ミュージシャンもたくさんいて、ミュージシャンのレベルも高いですよね。

── 世界中回っている中で、これまでで記憶に残るステージはありますか?

これまですごくいいステージばかりだったのですが、ニューヨーク在住のベーシストで僕の先輩の福島幹人さんらとニューヨークの地下鉄の駅での演奏は楽しかったですね。日本だと難しいかもしれませんが、ライセンスがあれば地下鉄の駅でも演奏できるのがすごいですよね。 そういうのがあるのもニューヨークの魅力ですよね。

「辞めずに続けて欲しい。」
未来のミュージシャンへ。


── 色々なバンドで活躍されていますが、それぞれのバンドで求められるものは異なると思いますが、苦労はありますか。

それぞれのバンドで”これをやって”という指示はないですね。今やっているグループ、プロジェクトは自分の持っているものを”いいと”評価してくれていると信じているので、精一杯やれることを楽しんででやっていますね。

── 今後、チャレンジしたいことはありますか?

いろんなプロジェクトをやっていますが、自分の名義のアルバムなんかも出せていけたらいいですね。

── 若い人へのメッセージはありますか?

辞めずに続けて欲しいです。オープンマインドで好き嫌いせずに吸収して欲しいです。自分よりも上手い人といつも演奏するように心掛けていくことが大切ですね。

information

[ ライブ情報 ]

SNARKY PUPPY来日公演
2017年4月16日(日)・17日(月)・18日(火) ブルーノート東京