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ジャズピープル

「音楽を自由に楽しむ」。

ロックでもない、クラシックでもない「ハイブリッド・インストゥルメンタル」。ピアノとカホンというシンプルな構成ながら、二人とは思えない広がりと厚みを持つピアノジャック。「ゴーストバスターズ」や「ミッション・インポッシブル」など、おなじみの映画音楽を大胆にアレンジした最新アルバム「Cinema Popcorn」が好評発売中。「ジャズでもない」けれど、自由自在に音楽を楽しむお二人の魅力に迫りました。

person

→Pia-no-jaC←(ピアノジャック)

2005年4月結成。
HAYATO(Piano)、HIRO(Cajon)の二人で構成されるインストゥルメンタルユニット。鍵盤と打楽器だけというシンプルな構成ながらも、力強く激しいピアノの旋律と独特な存在感をもつカホンの音色がせめぎ合うスリリングかつ重厚な演奏はオーケストラ並みの迫力。
ジャズでもクラシックでもない、「ハイブリッド・インストゥルメンタル」という斬新なジャンルを確立した。独自の音楽性が各方面から注目を浴び、ディズニー、SQUARE ENIX、KONAMI、など多数のコラボレーションを発表。

interview

「三宮でストリートもやってました」。
ピアノジャック初ライブの地、神戸。


── 大阪がご出身ということは神戸でも活動されていた時期があるんでしょうか?

HAYATO「そもそも最初にライブをやったのも神戸だし、HIROが神戸に住んでた時期もあって、神戸は馴染み深いですね」
HIRO「その頃は二人とも、それぞれ大阪や神戸でライブのサポートをしてました。三宮駅の北側の広場でよくストリートしたりとか。それで組むことにしたんですけど、当時から結構アドリブばっかりだったので…もちろん決まったテーマはやるんだけど、その日の気分でどんどんソロが長くなっていって…歌い手さんが大変でしょう(笑)?」
HAYATO「当時20組くらいサポートしてたんだけど、組んでから一気に減って(笑)」
HIRO「お互い別々でやってたときは結構呼ばれてたんですけどねえ(笑)」
HAYATO「じゃあ二人でやってみよっか、ということで」
HIRO「その頃はサポートしてる人たちの曲をインストでアレンジするという感じが多かったですね」

── カバーアルバムも多く出されていますが、もともとオリジナルとカバーという垣根があまりないところから始まってるんですね。

HAYATO「そうですね。これ通り弾いてって言われるとキツイなとは思いますけど、自由にしていいよって言われると、なんでも楽しく弾いちゃう感じです。だから本当に、ジャズでもロックでもクラシックでもないんですよ」
HIRO「もともとそういうのが俺ら本当になくて、自由にやりたいってところくらい」
HAYATO「ただ、どうしてもピアノとカホンと聞くと『クラシックですか?』『おとなしいBGM的なものでしょ』と見られるので、それはひっくり返そうとは思ってました。二人以上の音が聞こえてくるような音作りを目指して、かつ、言葉がないから音だけで景色を見せられたらいいなと思っています。ただ、そんな難しいことはしないでおこうと思ってますね」

── なるほど。自由に楽しく作られてるからこそ、聴いていて気持ちいいんですね。

HIRO「そう言ってもらえるのが本当に嬉しいです。三宮でストリートでやってた頃は誰も止まってくれなかったですからね。そこから音楽もパフォーマンスも手探りでやってきたので」
HAYATO「だから今、こうやって神戸でライブに来るのは嬉しいですよね。チキンジョージとか憧れてましたもん」

「カホンは1cmズレると音が全然違う」。
HIROさんが語るカホンの魅力。



── 本当に独学だということで、ジャズは一度も通らなかったんですね(笑)。ちなみに「ジャズ」はどういう印象ですか?

HIRO「残念ながら本当に通ってこなかったです(笑)。ジャズはやっぱり敷居が高いイメージはありますね。ジャズドラマーの方もテクニックがとんでもないじゃないですか」
HAYATO「そうですね。僕も小学6年生までしかピアノは習ってなくて…今でも初見で譜面では弾けないですし」
HIRO「一作目のスコアブックのチェックは本当に大変そうでしたよ。初めてヨーロッパ行く飛行機の中で、ずっとド、レ、ミって数えてたもんね」

── てっきり天才肌なのかと思ってました!

HAYATO「全然です。耳もいい方ではないので、気持ちいい音を探しながら曲を作ってます」

── HIROさんも同じく独学だそうですが、カホンと出会ったきっかけを教えてください。

HIRO「そうです、もともとドラムやってたんですけど。弾き語りやってる幼馴染みがいて、一緒にストリートやろうかとなったときにドラムセットは持っていけないから、なんかいい楽器ないかなと探しててカホンに出会ったんです。そしたら友達が『お前は絶対カホンが合ってる!』と言ってくれて。自分でも手応えを感じて、そこからずっとカホンです」

── カホンの魅力についてもう少し教えてください。

HIRO「カホンは叩くところが1cmズレるだけで音が全然違うんですよ。生楽器との相性もめちゃめちゃ良くて。シンプルな楽器なんですけど、奥が深いんです。それでいて、セッションにも向いてて、一曲も知らない初対面の人とでも結構合わせられるし、音楽初めてっていう人でも取っ掛かりやすいので、是非始めてほしい。懐の深いところが魅力です」

── 今年で結成12年目、デビュー10周年を迎えるお二人ですが、本当に仲が良いですよね。

HIRO「そうですね。結成する前もずっと一緒にいたしね」
HAYATO「なんでしょう、性格が全然違うからでしょうか(笑)。一緒だったらしんどくなることもあるんでしょうけど、違う部分が面白いっていうか」

── お互いリスペクトしている部分とか良かったら教えてください。

HAYATO「照れくさいなあ(笑)。いやでもHIROは本当にムードメーカーなんで、そのへんはいつもありがたいと思ってます。場を盛り上げてくれるというか、オイシイところは全部持っていくというか」
HIRO「それ僻みじゃないの(笑)?」
HAYATO「いやいや(笑)。HIROの一言でライブの盛り上がりが決まるっていうか」
HIRO「ハードル上げないで(笑)。僕にとってHIROはこうやって背中預けられる存在なんですよ。さっきも言ってましたが、天才肌に見られるけど、めちゃくちゃ努力の人なんです。本当にピアノが好きで、気に入ったピアノがあったら延々弾いてるような人なので安心できるというか。たとえ転んでも支えてくれるので、すごく信頼しています」
HAYATO「あらたまって言うと恥ずかしいですね(笑)」

「音楽にやってはいけないことなんてない」。
自由な音楽を奏で続けるピアノジャック。


── 最新アルバムである「Cinema Popcorn」は映画音楽のカバーということで、同世代にはたまらない選曲なのですが、どういった基準で選ばれたのでしょう?

HAYATO「カバーするときの基準は誰もが知ってる曲です。知らない曲だと忠実にカバーしないと伝わらないですし、知ってるからこそ思いっきりアレンジできるし、『この曲がこうなるんだ!』という面白さがあると思うんですよね。なので、今回も俺たちに馴染みの深い映画にしようと思って」
HIRO「僕らと、関わってるスタッフ全員で好きな映画をピックアップして絞り込む感じで」

── ちなみに最近観て良かった映画は?

HAYATO「僕はやっぱりローグワンですね。スターウォーズ好きなんで。そもそもライブでスターウォーズの曲をやったらウケたっていうのがこのアルバムのアイデアの元なんです」
HIRO「一緒に観に行って俺はちょっとウトウトしちゃったけどね(笑)。僕は『パコ・デ・ルシア』が良かったです。カホンですし、CD持ってたのもあるんで、興味深かったですよ」

── なんでも音楽につながるんですね。もうすぐデビュー10周年ですが、何か新しい挑戦とかありますか?

HAYATO「そうですね、それに向かっていろいろ企画してることはあります。支えてくれた人たちに恩返しする気持ちでツアーもやりたいと思うし」
HIRO「デビュー当時は聴いてたけど今どうしてるんだろうって人にも来てもらえるようなのをね。あとまた海外でツアーもやりたいです。もっともっと人と関わっていきたいですね」

── ありがとうございます。最後になりますが、ミュージシャンの卵である学生さんたちにメッセージをお願いします。

HAYATO「単純ですが、楽しんでってことですね。楽譜を前にすると間違っちゃいけないと緊張しちゃうんですけど、僕の場合は間違ってもいいやと思ってるので。間違いから次に繋がることもあるし、それがまた面白いこともある。同じ音楽をやるなら楽しんだもの勝ちなので、一緒に楽しんでいきましょう!」
HIRO「僕もそうですね。結構自由に…叫んだりもするし、それも音楽です。HAYATOの言うように音楽は自由なものなので、やってはいけないことなんてないと思うんです。だから恐れずに、音楽を楽しんでいって欲しいですね」