featuring Kobe Jazz People
Momoko Iijima / Jazz Vocalist

師匠の言葉を胸に秘め、
世界で通用するシンガーになりたい。

5月に開催された「第13回神戸ジャズヴォーカルクィーンコンテスト」初出場で、しかも、トップバッターというプレッシャーをはねのけ、富士通テン賞を受賞した飯嶋ももこさん。亡き師匠の言葉を胸に臨んだステージで、歌に賭ける思い、シンガーとしての夢を熱く語っていただきました。

person

飯嶋ももこさん[ジャズヴォーカリスト]

兵庫県出身。音楽系専門学校在学中に洋楽に出会い、スティービー・ワンダー、アレサ・フランクリンなどに影響を受ける。2003年、「the power of soul」でインディーズよりマキシシングル「BIRD」をリリース。2005年、大阪Royal Horseヴォーカルオーディション入賞。ジャズの老舗「Royal Horse」でライブ活動を開始。2009年 、初のソロアルバム「etape」をリリース。2010年からはビッグバンド「The Big Wind Jazz Orchestra」のメインヴォーカルを務め、2012年、第13回神戸ジャズヴォーカルクィーンコンテストで富士通テン賞を受賞。

interview

コンテスト出場が決まって1か月間、今までにないくらい歌のことを考えました。

——コンテストに応募した動機を教えてください。

「自分のシャズを評価していただける場所がなかったので、自分への挑戦でもありました。コンテストは知っていましたが、周囲に勧められたことも後押しになりました。本選出場が決まってうれしかったのですが、それからの1か月間は、今までにないくらい歌のことを考えて練習しました。ライブではお客さんからの評価が日々の糧になるのですが、専門家からの評価や意見を聞くことができる機会はないので、コンテストはとてもいい経験になりました」

——実際に初めて立ったコンテストのステージはいかがでしたか?

「トップバッターだったので緊張しました。リハーサルのとき、司会の三浦さんに“何回目なの?”って聞かれて“初めてです”と答えたら驚かれました。何度も挑戦されている方が多いことを初めて知りました。進行が遅れていて、審査員の黒岩さんが“好きなようにやりやー”と言ってくれてリラックスできました。他人の歌を聴いて歌うのではなく自分のペースで歌えるので“トップバッターで私が基準になってやるぞー”と、気持ちを切り替えました。周囲の期待や応援がいいプレッシャーにもなり、当日はたくさんの仲間が応援に来てくれて客席は大盛り上がりでした。皆様の応援のおかげで1曲目が終わってリラックスできて、自分らしく歌うことができました。そして、結果として富士通テン賞をいただけたことはとても嬉しく、私だけの力ではなく、支えてくださった皆様のおかげだと実感しました」

——本選出場が決まってからの1か月間は、どんな気持ちで過ごしましたか?

「今まで本格的にジャズのレッスンは受けたことがなくて、師匠について勉強していただけで、そんな自分がどこまでの評価が得られるのか気になっていました。師匠が亡くなって4年になりますが、デモテープを持ってお墓参りに行きました。ちょうど、帰るときに予選通過の連絡をいただきました。自分自身の区切りとして、そして、応援してくださっているたくさんの方の気持ちに少しでもお応えしたいという思いや、感謝の気持ち、師匠に良い報告がしたいという思いで過ごしていました」

1コーラスに命を賭けて歌い切ったコンテスト。

——コンテストで歌われた2曲を選んだ理由は何ですか?

「コンテストで1曲目に歌った『I wish you love』という歌は、師匠が好きな歌でよく歌っていました。私が最初に覚えた歌でもあり、自分の中で深い思い入れがある歌だったので、より感情表現できるように、安定して伝えられるように、歌詞をもっと理解して、英語も一から勉強し直して、1か月間、歌い込んで臨みました。ひとつの歌を1か月かけて集中して取り組んだことはなかったくらいです」

——それほど、思い入れがあった歌だったわけですね。

「いつもはイントロ、コーラス、間奏、さびから入って、2コーラスという歌い方をするのですが、間奏もピアノソロもしないで歌い切りました。私の中で繰り返すことはしない。必要ないのではと思いました。1コーラスに命を賭けて歌い切りました。歌詞、スペルの一語一語に思いを込めて、それを1回で伝えるという気持ちで歌いました。2曲目の『The Lady is A Tramp』は、レディ・ガガとトニー・ベネットのデュエットで知られた歌になって、“誰が何と言おうが自由に生きていくのだ”という歌詞が、今の自分の心境に合っていました」

コンテストに出る前と出た後で、自分の歌が大きく変わった。

——コンテストが終わって、自身の心境の変化や周囲の変化はありましたか?

「1か月を集約した1日になりました。歌い終わって悔いが残ることはなかったですね。“やってやったー”という達成感でいっぱいでした。これで結果がわかり、賞をいただけなくても、素の自分はすべて出せた。これが今の結果であってこれ以上でも以下でもない。デモテープを送ったときも同じ気持ちでした。予選を通過してもしなくても、それが今の私の実力と思っていました。ステージでは審査員の方のすべての目が私に向けられるわけで、そのとき、一人で耐えられるか心配で、師匠の写真をドレスの中に入れて歌いました」

——富士通テン賞を受賞して、周囲の反応はどうでしたか?

「コンテストに出る前と出た後では、明らかに自分の歌は、まったく違うものになりました。それがいちばん変わったことかもしれません。自分が変わったから、きっと、周りの反応も変わったのではないでしょうか。歌詞に対する捉え方や、歌に対する気持ちの入れ方、今まで歌ってきた歌にはそこまでの思いはなかったのかもしれません。ここまでしないと歌は歌ってはいけないのかもしれないと思いました。その中で、結果として賞をいただいたことはうれしいことであり、やってきたことが間違いではなかったと確認することができました。賞をいただきましたが、賞とは関係なく評価していただいたことは、自分の中で大きな自信になりました」


自分がいちばん好きなことをいつもプラスしていきたい。

——アルバムの内容を教えてください。

「今回は2枚目のアルバムになるのですが、1枚目は『etape』というタイトルで、フランス語ですが、英語で『step』と同じ意味になります。今回のアルバムのタイトルは、オリジナル曲として入っている『Two steps behind of the happiness』のタイトルから取りました。長いので『Two Steps』と略しましたが、曲のタイトルの意味は『幸せの二歩手前』。今回のアルバムタイトルは、あくまで通過点、まだまだこれから止まることなく進んで行くことを表しています。12曲の収録曲のうち、3曲は弦楽四重奏を入れたアレンジになっています。クラシックが好きでよくオーケストラも聴きに行きますが、生の弦で歌うことに憧れていて、今回は夢が叶って嬉しいです」

——実際にレコーディングを終えて、今の気持ちをお聞かせください。

「当日、譜面をお渡ししてご一緒させていただいたのですが、リハーサルを聴いただけで感動して泣いてしまいました。こんなすばらしい中で歌えることに感謝でした。スタッフ、ミュージシャンとも仲が良くて、選曲からアレンジまで私の希望をすべて叶えてくれてやりたいことを形にしてくれました。すばらしい方に恵まれ、とても私らしいアルバムに仕上がっています」

——将来はどんなヴォーカリストをめざしていますか?

「小さいところでも大きなところでも、どんなところでも楽しんでいただけるような歌を歌っていきたい。自分の中でいろいろな課題がありますが、いつかは世界で通用するシンガーなりたいですね。そう言うと“バカじゃないの。大きなこと言って”と、笑われるかもしれませんが、“いいねん。ほっといて”という精神でやりたいですね。『The Lady is A Tramp』の歌ではないですが、“誰に何を言われても、私はこれでやっていくねん”という気持ちがあります。 “あなたが持っている力は自慢するのではなく自覚しなさい。好きなことをまっすぐ見つめて進んでいきなさい。ここまでやれたのだからこれから先もできるはず”と言ってくれた、師匠の言葉がいつも自分の中にあります。好きなものは変わっていくものですが、そのとき、自分がいちばん好きなことを、去年、好きだったものとプラスアルファして、雪だるまのように大きくなっていけばいいと思います」

飯嶋ももこ 2nd Album「Two Steps」リリース記念ライブ
※レコーディング参加メンバー全員出演します!

■日時 2013年3月23日 Open 17:00~、Start 19:30~/21:20~
■場所 梅田Royal Horse
■メンバー
Vo:飯嶋ももこ
Gt:田村太一
Sax:辻川弘子
Per:チーチョ西野
Strings:江口陽子、山本綾、澤田知栄子、三宅恵
Flu:飯嶋豊、飯嶋照子
■チャージ
S席 3675円(割引チケット使用 3150円)
A席 3150円(割引チケットなし)
バーカウンター 1000円

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