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ConcertReport・コンサートレポート

YAMANO BIG BAND JAZZ CONTEST 2010

第41回 山野ビッグバンド・ジャズコンテスト 2010年8月14日(土)・15日(日) 大宮ソニックシティ 大ホール [さいたま市/大宮区]

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仲間と全力を尽くす「夏の祭典」 — YAMANO BIG BAND JAZZ CONTEST

8月14、15日に行われた第41回山野ビッグバンド・ジャズコンテスト。熱い演奏と高度な内容で例年以上の盛り上がりをみせ、国立音楽大学ニュー・タイド・ジャズ・オーケストラの4連覇達成で幕を閉じた。

KOBEjazz.jpを運営する富士通テンは、カーオーディオやホームオーディオを提供する音に携わる企業として、「音に通じて社会に貢献する」という考えのもと、これまでは本社のある関西地区で開催されるビッグバンドを中心とした音楽イベントの支援に力を入れてきました。
この活動を全国に広げていきたいという想いから、今回よりYBBJCの協賛を開始いたしました。

仲間と全力を尽くす「夏の祭典」 — YAMANO BIG BAND JAZZ CONTEST
出演バンド(出演順)
●8月14日(土)

01. 横浜市立大学 [セカンド・ウインド・ジャズ・オーケストラ]
02. 学習院大学 [スカイ・サウンズ・ジャズ・オーケストラ]
03. 早稲田大学 [ハイ・ソサエティ・オーケストラ]
04. 慶応義塾大学 [K.M.P.ニューサウンド・オーケストラ]
05. 名古屋音楽大学 [めいおんジャズ・オーケストラ]
06. 埼玉大学 [スウィング・キューブ・ジャズ・オーケストラ]
07. 青山学院大学 [ロイヤル・サウンズ・ジャズ・オーケストラ]
08. 金沢大学 [モダン・ジャズ・ソサエティ]
09. 専修大学 [グリーン・サウンズ・オーケストラ]
10. 国立音楽大学 [ニュー・タイド・ジャズ・オーケストラ]
11. 中央大学 [スウィング・クリスタル・オーケストラ]
12. 東京工業大学 [ロス・ガラチェロス]
13. 日本大学 [ホワイト・リズム・エコーズ・オーケストラ]
14. 明治大学 [ビッグ・サウンズ・ソサエティ・オーケストラ]
15. 愛知大学 [ブルー・スターズ・ジャズ・オーケストラ]
16. 法政大学 [ニュー・オレンヂ・スウィング・オーケストラ]
17. 天理大学 [ALS ジャズ・オーケストラ]
18. 創価大学 [プリンス・マーシー・ジャズ・オーケストラ]

19. 明治大学 [ニュー・ウェイヴ・ジャズ・オーケストラ]
20. 東北大学 [ジャズ・オーケストラ]
21. 大阪大学 [ザ・ニュー・ウェイヴ・ジャズ・オーケストラ]
 

●8月15日(日)

01. 東京大学 [ジャズ・ジャンク・ワークショップ]
02. 京都大学 [ダークブルー・ニュー・サウンズ・オーケストラ]
03. 立教大学 [ニュー・スウィンギン・ハード]
04. 芝浦工業大学 [カレッジ・ソサエティ・ジャズ・オーケストラ]
05. 神戸大学 [KOBE マソック・ジャズ・オーケストラ]
06. 日本大学 [リズム・ソサエティ・オーケストラ]
07. 慶應義塾大学 [ライト・ミュージック・ソサエティ]
08. 日本医科大学 [ミッドナイト・サウンズ・ジャズ・オーケストラ]
09. 立命館大学 [R.U.スウィンギン・ハード・ジャズ・アンサンブル]
10. 同志社大学 [ザ・サード・ハード・オーケストラ]
11. 名古屋芸術大学 [ジャンパ・スウィング・オーケストラ]
12. 成蹊大学 [コンパル・サウンズ・ジャズ・オーケストラ]
13. 洗足学園音楽大学 [しわしわーず]
14. 甲南大学 [ニューポート・スウィング・オーケストラ]

REPORT
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 この夏は例年以上の熱さだった。もちろん天気の話ではない。8月14、15日に行われた第41回山野ビッグバンド・ジャズコンテスト(以下YBBJC)のことだ。
 YBBJCは、今年から埼玉県大宮ソニックシティへと会場を移しての開催となった。前回より500席ほど増え、約2,500席の大ホールは、昨年までの殺気だった息苦しさから解放され、来場者は余裕をもって演奏を楽しむことができたのではないだろうか。それでも常時満席、また来場者数も昨年を上回ったそうだから、YBBJCへの関心の高さがうかがえる。
 国府弘子氏の司会と学生来場者との絶妙な掛け合いはいつもどおり盛りあがり、本選には計35校が参加、2日間に及んだ熱戦は、国立音楽大学ニュー・タイド・ジャズ・オーケストラの4連覇で幕を閉じた。
今年はハイレベルな演奏が特に際立った。その様子は、審査員のコメントによく現れている。
 「評などどうでもいい。プロよりうまいんだから」(早稲田大学ハイ・ソサエティ・オーケストラ)「困っている。言うことがない。学生バンドの最高峰」(国立音楽大学ニュー・タイド・ジャズ・オーケストラ)「お手本があることを知らずに聴いたら『参りました』というほかない」(慶応義塾大学ライト・ミュージック・ソサエティ)など、手放しで絶賛されたバンドが少なくない。
 また凝ったアレンジとバラエティに富んだ楽曲が多かったことにも注目したい。いまやプロのアレンジャーがYBBJCのためにアレンジを書き下ろすことはめずらしくない。演奏技術が一様に進歩している現在、質の高い楽曲・選曲が上位入賞のカギとなり、演奏者側のユニークで斬新なアプローチを求める傾向がいっそう強まっているからだろう。また従来のスイング感・ドライブ感とは別の価値をもつ新しいサウンドの参入は、今後ますます増えそうだ。その一方、エリントン、ベイシー、ラテンなど馴染みのある演奏も変わらず健在。YBBJCで演奏される楽曲はさらに多彩なものになっていくだろう。
 長年このコンテストの開催に関わってきた関係者によれば「花形楽器がテナーサックスからアルトサックスに替わりつつある」「女性の演奏者・ソリストが年々増加している」などが、ここ数年の傾向らしい。これらは中・高校のブラスバンド活動が女子によって支えられていることと関係しているのかもしれない。また学生のコメントが「緊張した」から「楽しかった」に変わってきたそうだ。オリンピックでもよくいわれることだが、何事も肩肘張らず、自然体で臨む今どきの若い世代らしく、ほほえましかった。
 それにしても、プロ・アマ問わず、YBBJCに関する情報が即日ネット上にアップされる様子を目の当たりにすると、このイベントがどれだけ注目され、期待されているのかがよくわかる。YBBJCは、これからも若いジャズファンを育て、仲間と音楽を創る楽しさを分かち合う、熱い「夏の祭典」であってほしい。
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内堀勝さん
内堀勝さん

もはや私にとって夏のメイン・イベント化しているこのコンテストは、今年で41回目を迎えた。「毎年毎回、レベルが向上している」は、審査委員長の瀬川昌久氏の常套句だが、今年ほどこの言葉を実感した年はない。演奏技術、内容、表現力の向上はもちろん、上位のバンドは、それぞれしっかりした個性を持っている。
慶大ライトや早大ハイソのコンテンポラリーな作品と粋な表現力。同大の電気楽器を巧みに取り入れた演奏。明大ビッグ・サウンドの完璧なアンサンブル。阪大ニュー・ウェイヴのごっついベイシー。東工大ロス・ガラのラテン。京都大ダークブルーのエリントン・サウンズ。青学ロイヤル・サウンズのギル・エヴァンス等々。今回も優勝した国立音大ニュー・タイドのオリジナル作品は、毎回楽しみでさえある。これはもはや学生ビッグバンドのコンテストという枠を遥かに超えた、音楽的にも立派なコンサートになりつつある。

守屋純子さん
守屋純子さん

今年は、予選会をライブで行ったことなども影響しているのでしょうか、とにかく例年以上にレベルの高い大会でした。どの学校もあまりに上手いので、審査コメントで言うことがなくて困りました。
それぞれの学校ごとの個性もますます際立ってきていて、国立のようなコンテンポラリー系、東工大のような本格的ラテン、甲南のようなベイシー系といった全く異なる系統の音楽をどういう基準で統一して点数をつけるのか、難しいところでした。これ以外にもギルの青学、エリントンの京大など、また別の系統の学校もあるわけです。でも、バラエティーに富んでいて広がりがある、というのは聴いているお客様にとっては嬉しいことですね。
とにかく今回出場した全ての大学の演奏、とても素晴らしいものでした。ビッグバンドってイイよね。青春ってイイよね。一生懸命ってイイよね。・・・というのが全体の感想です。
学生さんたちにとっては、賞や順位と関係なく、山野に向けて仲間と全力を尽くして練習した日々が、後々大きな財産になることと思います。これはわたし自身の経験論でもあるのです。

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