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コンサートレポート

神戸・真夏の夜のJAZZ THE TRIO in KOBE
■2018/8/3(金) 神戸ラピスホール(神戸市中央区)

レポート

それぞれの魅力が光った夏の夜の至福の時間

 関西を拠点に国際的に活躍されているギタリスト、山口武さんが長年深い信頼で結ばれたジャズベースのレジェンド、ロン・カーターと敏腕ドラマーのルイス・ナッシュとの「THE TRIO」のライブが先日ラピスホールで行われました。神戸での公演は昨年に続き2度目。当日は3人のハイレベルな演奏を間近で聴こうと沢山のお客様が来場されていました。

 颯爽とステージに登場した3人の放つ雰囲気から演奏への期待が大いに高まります。 山口さんのオリジナル、「On Time」から軽快にスタート。それぞれの音をしっかり聴きながら、アイコンタクトも交えて心地良いサウンドを繰り出していきます。「That’ All」や「After Hours」といった聴き慣れたジャズのスタンダード曲もこのトリオで聴くと極上の味わい。「Cute」というタイトルからして和やかな曲ではルイス・ナッシュの繊細かつスピーディーなドラムソロを大きくフィーチャー。抜群のリズム感、お客様を大いに楽しませる一流のエンターテイナーとしての実力を如何なく発揮。また、「’Round Midnight」では山口さんの逞しいギターサウンドに観客は大いに酔いしれていました。

 セカンドセットの1曲目はロン・カーターがジャズギターの巨匠ジム・ホールとのデュオで名演を残す「Receipt Please」から。その名演を知るだけにこの曲をカーター自身の演奏で間近に聴ける喜びもひとしお。山口さんのオリジナル、「Mr.Smokin’」は山口さんのブルージーなギターが全開!ロンとルイスが作り出す極上のグルーヴに乗って、気持ちよく歌い上げていました。またミシェル・ルグラン作曲、映画音楽としてつとに有名な「シェルブールの雨傘」の演奏を山口さんがアナウンスすると観客からも一際歓声が。こちらの曲も名演が多いですが、さすがこのトリオでの演奏も堂々たるものでした。美しいメロディがさらに映えていたように思います。そしてこのトリオではおなじみとなっている、ロン・カーターのベースソロパフォーマンス。最初、静かにまるで音の行方を探っていくかのように一音一音、深く威厳に満ちた音を発していきます。その音からは長年ジャズシーンの一線で幾多の名演を残してきた歴史を感じるとともに、いまだ色褪せぬ重厚な輝きがありました。独創的なソロの中、童謡「ふるさと」のフレーズが!日本のファンに向けてのサービスもしっかり織り込むのも一流の余裕と貫禄か。ロン・カーターのベースの魅力をたっぷりと味わえる貴重な時間でした。観客の熱気が上がり続ける中、最後はまたまたルイスをフィーチャーしての「Caravan」。ドラムスティックを置き、手拍子でリズムを刻んでもそのリズムのキレは天下一品。ファーストセットに引き続き、お客様は彼の至高のテクニックに目と耳が釘付けでした。

 3人それぞれの魅力がバランスよく光った夏の夜の至福の時間を多くの観客が共有できたのではないでしょうか。終演後のサイン会では名演への惜しみない賛辞と感謝を伝える方も多くいらっしゃいました。トリオの面々と記念写真を撮られた方は一生の記念となったことでしょう。盛況に終わった今回のライブ、早速来年の再演の期待が高まります。是非また神戸でこのトリオの円熟したパフォーマンスを楽しみたいと強く思いました。

取材・文
小島良太(ジャズライター、ジャズフリーペーパーVOYAGE 編集長