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コンサートレポート

東京ピアノ爆団 関西ツアー
■2018年2月26日 神戸・クラブ月世界

レポート

新しいカタチのクラシック。

 肩肘はらずにクラシックピアノが楽しめる、その名も「東京ピアノ爆団」。本業は指揮者でありながらDJを務める水野蒼生さん、ジャズとクラシックの世界を行き来するピアニスト鶴久竜太さん、作・編曲もこなすピアニスト高橋優介さん、世界中で歌やピアノを披露する三好駿さんの4人で結成された東京ピアノ爆団は、飲んで踊れるクラシックがコンセプト。

 ジャズではないけれど、「ジャンルフリーで聴いて欲しい」という自由で新しい現代のクラシックのかたちを、2月16日に神戸・クラブ月世界で見せていただきました。 クラブ月世界は神戸東門街にある元キャバレーをそのまま利用したライブ&イベントホールです。

 古き良き時代の雰囲気がそのままの空間の中でのピアノ・リサイタル、これは期待が高まります。一人目の奏者は可愛らしい雰囲気を纏った高橋優介さんが登場。三大バレエ音楽のひとつ「ペトリューシュカ」を紹介してくれるMCも可愛い。でもさすがはピアニスト、鍵盤に向かうとときには力強く、ときには繊細に、観客を魅了します。この「ペトルーシュカからの3楽章」は楽譜の多くを三段譜で書かれている難度が難しいことで有名な一曲。

 マンガ「のだめカンタービレ」でも主人公・のだめが弾いていたことで、クラシックを知らない人でもご存知の方は多いのではないでしょうか。クラシックのピアニストには当たり前に要求されることなのかもしれないけれど、暗譜で15分間難度の高いこの曲を弾ききるのは、記憶力とテクニックと表現力のなせる技。飲んだり踊ったりする暇もなく、あっという間の15分でした。そして、クラブ月世界にちなんでと披露してくれたドビュッシーの「月の光」。しっとりした美しさに酔いしれます。

 幕間はDJ水野蒼生さんによる爆音クラシック曲とMCで空気がガラっと変わります。その間にも曲に合わせて踊ったり飲み物を頼みに行ったりと他にはない自由な空気感が楽しめるのも東京ピアノ爆団ならでは。

 続いては、普段ジャズ・ピアニストとしても活躍されている鶴久竜太さんによるブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」。ヘンデルのクラヴィーア組曲第2巻のテーマをもとに25の変奏曲が展開され、最後に対位法を用いたロマンチックなフーガで締めくくられる、約30分もの大曲です。楽譜に書かれたメッセージを一つひとつ読み取り、解釈し、自分の表現にする。鶴久さんのクラシックならではの技術や表現に圧倒されます。ジャズ・ピアノを弾いている鶴久さんもまた観てみたいと思わせてくれる圧巻の30分でした。

 再びDJタイムを経て、艶やかな着物を纏った三好駿さんが登場。1曲目はベートーヴェンの「エロイカ変奏曲」。音の粒がきれいで思わず聴き入ってしまいます。同じピアノで奏でていても、曲はもちろん演奏する人が違うと、全然違った楽器に聴こえてくるのがわかるのも東京ピアノ爆団のライブの面白さ。そして2曲目はドビュッシーの「喜びの島」。幻想的で美しい、素敵な曲だけど実は…というドビュッシーのアウトローな背景を聞いてから演奏を聴くと、才能と人柄は別物なんだな…という謎の感動を覚えつつ、やはり美しい一曲でした。

 アンコールではピアニストの3人が一つのピアノで連弾。自然体で楽しそうに弾く三人にこちらも笑顔になります。ジャズのコミュニケーションも楽しいけれど、クラシックの「今」も面白い。ジャンルにとらわれずにさまざまな音楽に触れる喜びを感じた一夜でした。普段は東京を中心に活動されている4人、また関西でのライブを楽しみにしています!




  • 東京ピアノ爆団 ORCHESTRA MIX 2016/AOI

出演

東京ピアノ爆団



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