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ジャズ探訪記関西を中心に、往年の名盤を聴かせるバーから、生演奏も楽しめるレストランまで人気のジャズスポットを紹介!

vol.82
阿羅仁(あらじん)

神戸の町を見つめ続ける坂道の我が家
@神戸・三宮

神戸ジャズファンならずともおなじみの、たくさんのジャズクラブが軒を連ねる三宮・北野坂。
そこを上ってもうすぐ加納町の交差点に近い、というあたりに阿羅仁(あらじん)はある。
古びたレンガの壁、歩きなれた坂道の歩道と街路樹。
この辺りを「神戸の町」と認識している人も少なくないことだろう。

ドアを開けると、いかにも歴史を重ねてきた…といった感じの古びたバーの風景がある。
英語には、「人のひじで磨かれる」という表現があるそうだが、まさしくその言葉通り。
たくさんの人が訪れ、たくさんのおしゃべりがあり、くつろぐ人の姿があったであろう古びた木のカウンター、その後ろには琥珀色のボトルが並ぶ。
自分でも気づかないうちにタイムスリップして、「いったい今っていつだっけ?」
なんて思いにとらわれてしまうような、いかにも心地良さそうなたたずまいである。

オーナーの木村琳代ママによると、ここでお店を開いてすでに400年(まあ人間の尺度では40年くらいなのだが)ということだ。
その琳代ママ、なんでも大きな病気をされたそうで、最近ようやくお店に立てるほどに回復されたそうである。
その復帰をささえたのも、きっと神戸の町と神戸のジャズファンの力なのだろう。
ライブは隔日、ご自身でも歌われるそうだけどピアノは弾けないってことで、お店にベイビーグランドを入れたのも最近の話、
それでも「生の歌伴を入れたのはウチが神戸で最初なんですよ」ということだ。
ま、事情もあってちょいと名を秘すけれども、その名を聴けば誰でもが「ああ、あの…」というサックス・プレイヤーさんの伴奏が入るチャンスに出会うこともある。
週末だけとはいえ、生でピアノとサックスの伴奏で歌える…というのは魅力的だ。
それに比べると、いわゆる「カラオケ」ってのは味もそっけもないものですねえ。

「400年もお店やってれば、お酒なら何でもありますよ。昔は舶来のウイスキーはかっこ良かったもんですけどねえ」とは琳代ママの言。
なるほど、よく見ると本当にたくさんのお酒が並んでいる。

前回の神戸ジャズウォークには病気のため不参加だったということだけど、今年のジャズウォークには、またたくさんのジャズファンが阿羅仁を訪れることだろう。

初めてでも懐かしい、坂道にある阿羅仁。
今宵もそこに灯りがともる頃、一人、また一人とこのドアをくぐる。
静かに、そして変わりなく。