ジャズ探訪記 バックナンバー
Jazz Dining  azul
 
※ 掲載内容は取材時のものです。現在、店舗は移転しております。(現住所は、下記参照)
ジャズを聴きたいウィークデイの夜には。
梅田センタービル…と聞いて「ああ、あそこね」とわかる人は、若いお父さんお母さんがたかもしれない。
というのも、ここには、子供たちに大人気の「ポケモンセンター大阪」があるからだ。各私鉄や地下鉄・地下鉄の梅田駅、もちろんJR大阪駅とエストや阪急メンズ館を挟んで東側と思えばまちがいないだろう。
まあ僕はあんまりポケモンには興味ナシ(笑)。梅田からエストの西の端に入り、華やかな女の子たちを鑑賞しつつ東の端っこまで歩き、横断歩道を渡ればすぐそこがセンタービルである。

そして、今回の目的地「Jazz Dining azul」はこのビルの地下。とはいっても、ぜんぜん地下って感じはしないんですね。本来なら地下の高さのフロアは、大きく掘り下げた盆地上の広いオープンスペースになっていて、そこを囲むようにいろんなお店が並んでいる。ハンバーガーショップや蕎麦屋さん、コンビニにポケモンセンター。そして、さらにそのお隣が目指すazulなんである。

「azul」とは「青」という意味。
その名のとおり、入口あたりにも青い色が溢れている。ジャズクラブ…というとなんとなく室内っぽい感じで(もっとも屋外のジャズクラブなんてないと思うけど)、なんというか、慣れていないうちは「意を決して」入って行かなきゃイケナイような気がしません?でも、ここazulは、シックでオトナな雰囲気と気軽に入っていける窓の大きなダイナーみたいな印象が同居していて。なんていうのか、空気がきれいな感じがするお店なんですね。
ドアを開けるとすぐに、クロークを兼ねたレセプション、その隣にはウェイティング・バー。あれ?この感じってなんか知ってるような気が…。そうか、ホテルのバーとかレストランみたいなんだ。へええ、こりゃあ素敵だなあ、無意識にバーのほうに向かいそうになる我が両足と舌を、強靱な意志の力で押さえ込みつつダイニングルームに歩みを進める(涙)。
あ、クリスさん先に来てはったんですね、スンマセン、お待たせしました!
同じテーブルで迎えてくださったのは支配人の赤井達矢さんと、中嶋俊夫さん、多田恵美子さんのお三方である。
赤井さんによると、azulはオープンして3年半ほど。「単なるジャズクラブではなく、接待にもちゃんと使える店」というコンセプトの元にお店造りをしたんだそうだ。「接待ができる」…というのは、イコール「きちんとした空間で、きちんとした食事とお酒を、きちんとしたサービスのもとに楽しめる」と言い換えてもいいだろう。そしてその言葉どおり!ダイニングの奥にはオープンキッチンがあり、その佇まいを見ればイイカゲンな料理でないことは歴然としている。お店としても「ホテルのメインバー的な存在とサービスを目指しています」と赤井さん。お聞きすれば以前はホテルマンだったということで、お店に入った時の印象やサービスのテイストがホテルっぽいのも当然なんだなあ。
メニューの内容も、フィンガーフードからコースまでと充実している。もともとはフレンチテイストだったけど、素材の持ち味を大切にした創作イタリアン系に移行してきたらしい。そんなわけで人気メニューはパスタ類。とはいえ、ドルチェのチョコレートはベルギー産を仕入れてお店で手作り、ジュース類もフレッシュに限定。さらにワインはオーナーの知人のワイナリーから直接輸入。ということはもちろん、
「他では飲めない…」
ってことですね。
うーん、ダイナーとしての充実度が高くてなかなかジャズの話にいけないぞ(笑)。



さて前述の中嶋さん、多田さん。
この名前にピンと来たら110番!じゃない、かなりのジャズ好きですね。僕もおどろきました。そう、中嶋さんはアロージャズ・オーケストラの辣腕ドラマー、多田さんはもちろん大人気のピアニストである。あれ?ミュージシャンのかたにもインタビューするんだったっけ?と思いながらお話をうかがうと、中嶋さんは音楽・音響面でのディレクター、多田さんはazulのハウスピアニストでもあるのだ。
たくさんのステージを経験しているお二人だけに、ジャズに関わる話になるといや熱いこと熱いこと。
取材…ということを離れてジャズをめぐる話が盛り上がってしまう(お二人に加え、クリスさんもいるんだから当然ですね)わけだけど、共通するのは「もっとジャズを聴いてほしい」「もっとジャズを楽しんでほしい」ということだ。
こんなにキャリアの長いミュージシャンでもそんなふうに考えてはるんやなあ…と、モンガイカンの僕もちょっと驚いてしまう。
支配人の赤井さんも、このお店に来るまではほとんどジャズなんて聴かなかったそうだ(笑)。
でも毎日ここで聴いているうち、聞き覚えのある曲もできてきたし、ミュージシャン同志のインタープレイも聞こえてくるようになったという.。そう、ジャズを楽しむ秘訣は、まず「聴くこと」。
ジャズは決してむずかしい音楽じゃない。難しく聴きたいヒト、難しく演りたいヒト、難しく語りたいヒトがいるのは事実だけど、それとジャズの面白さとはまた別の話だ。
azulでは平日のほぼ毎日ライブが楽しめる。今日もそろそろライブの時間だ。
今日は中嶋さんのドラム・多田さんのピアノに加えて、素敵な笑顔の時安吉宏さんのベースを加えたピアノトリオ。(ライブにしろ料理にしろ、この充実度でテーブルチャージとミュージックチャージがそれぞれなんと500円!ハイコスパにもホドがある!)
さあ、ステージにも青い光があふれ、いよいよライブが始まる。
ちょうどこの日は雨模様。
こんな日に、スタンダードの名曲「Moon river」なんて選曲も粋ですね。

クリスさんによると、オードリー・ヘップバーンがギターをかかえて歌うあのシーンはカットされるはずだったらしい。その報せを聞いたオードリーが激怒して、ようやくカットされずにすんだのだとか。へえー、そのおかげでこの名曲が生き残ったんですねえ。

音楽をめぐるいろんな話や、仕事の話、人生の話。そんな話を聞いたり、おいしい料理を食べながらジャズを楽しめるなんてとてもゼイタクな気分である。
いささか教訓めいてしまうけれど、人生に必要なのは、おいしい食事と語り合う友、そして素敵な音楽である。
あ、カワイイ女の子とお酒も要るかな(笑)。

azul
●大阪市北区茶屋町4-4 茶屋町ガーデンビル5F
●TEL:06-6373-0220
●公式HPはこちら
取材日:2009.2.13
PAGE TOP