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ずっとこうしてくつろいでいたいところだけど、なかなかそうもいかないのが辛いところだ。オーナーの末松さんにお話をうかがった。
末松さんがこのお店を開いたのが2006年の3月というから、まだ2年と少しという若いお店。そして末松さんご自身もとてもお若いんですよ。バーテンダー歴9年目、フランス料理の経験もあるというキャリアながら、なんとまだ29歳の若さ!三ノ宮のバーで5年ほど店長を務めた後、「もっとゆったりできる空間をつくりたい」と独立を決意。うーん、その思いはかなり成功していると思います。 |
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BGMには、これまたゆったりとジャズが流れている。自然でいい音だなあ…と思ってお聞きすると、スピーカーは富士通テンのイクリプスTDスピーカー。「音楽がちゃんと聴こえて、なおかつ会話の邪魔にならない」、そしてその音質のおかげで「奥の席からのオーダーもはっきり聞こえる」というのが、このシステムに惚れ込んだ理由なのだとか。そして、店内に4台あるスピーカーはそれぞれ別のアンプを繋げ、スピーカーごとにコントロールできるようにセッティングしてあるらしい。なるほど、カウンター席だけでなく奥にはソファ席もあり、お客さんのバランスによって細かくコントロールできるメリットは大きいのだろう。 |
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スピーカーでさえこれだから、さぞ音楽のチョイスにも凝られてるのでは…?
「いえ、音楽にはあまり詳しくないので(笑)。ジャズももちろん好きでかけますが、時々クラブ系・ラウンジ系とかもかけるんですよ」
ハハハ、そのこだわりのなさがいいですねえ。
「音楽もインテリアみたいなものというか…、くつろいで、美味しくお酒を飲んでいただくためのBGMと思っています。その意味では、グラスのチョイスとかに似ているかもしれませんね」
そうなのだ。
たしかにお酒って、グラスの形や重さ、口当たりの具合でずいぶん味わいが変わる。音楽もスピーカーによって大きく味わいが変わる。大切なことは「ゆったりお酒と時間を楽しんでもらうこと」で、音楽がその邪魔をしてはいけない。このあたりも末松さんの「ゆったりできる店作りをつきつめてやってみたい」という気持ちから来ていることなのだろう。グラス選びもインテリアも、そんな末松さんのセンスで統一されているのだろう。 |
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あらためて、流れてくるジャズに耳をすませる。
カウンターに頬杖をついてグラスを傾けると、ダイヤモンドカットの氷がグラスを鳴らす。さらに蒼さを深くしていく窓の外で、ポートタワーやハーバーランドの観覧車にも灯りが点り始めた。
「オーセンティック」なんて言葉がチラリと脳裏をかすめるけれど、いや、そんなお約束の言葉はしまっておこう。
もしBAR esに足らないものがあるとすれば、それは僕の隣の席にいる(はずの)美女くらいなものだろう。とりあえず今夜は、一人で。
静かに深まる夜を楽しむことにしよう。 |
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