ジャズ探訪記 バックナンバー
BAR M-CUATRO(エム・クアトロ)
まるで夜桜のような…静かな華やぎ。
阪急・武庫之荘駅を降りて、ふと見ればホームの向こうには満開の桜。
大阪からもほんの近間の街にこんなにのどかな風景があるなんて…。ちょっと不思議な気がする。
なんとこの武庫之荘駅、駅前のロータリー付近にも信号がない!のんびり、おだやかな顔の街である。
さて、その武庫之荘駅の南改札を出て歩くことほんの1分ほど(笑)。
レンガ造りの瀟洒なビルの2階がBAR Mcuatroだ。ビルのあちこちにはたくさんの緑や花が飾られ、見る人の心を和ませてくれる。ジャスを聴きに行く…というより、デートの待ち合わせに向かうような錯覚に(ま、錯覚ですけどね、僕の場合)とらわれてしまうような、美しいたたずまいだ。
階段を上がった入り口のドアの前にもたくさんも花が配されている。
なんというか、お店に入る前から、すでに何となく気持ちが華やぐというか、なんとも嬉しい気分にさせてくれる拵えである。
ドアを開けると正面にはバー・カウンター。長いカウンターには花が飾られ、奥のキャビネットにはグラスやティーカップが整然と並んでいる。
カウンターは左に延びて、視線は奥に置かれたピアノを越え、ゆったり広がるテラス席に向かう。テラス席の部分も含め、お店のもう一面も総ガラス貼り。紺色のカーテンに縁取られて、街の灯りもチラチラ。この開放感は素晴らしい。とりあえずカウンターの隅に陣取って、ビールなんかいただきながら(えへ)オーナーの中川えつこさんにお話をうかがった。
いつごろからこのお店を?
「こちらには2000年に移転してきたんですが、お店はもう14年になりますね。お友達同士で『こんなお店やりたいねえ』なんて話しているうち、なぜかお酒も飲めない私がお店を始めることになってしまって(笑)」
やっぱり昔からジャズがお好きで?
「いえ、どちらかというとシャンソンが好きだったんです。でも、パリを訪れたときなど、シャンソニエよりもジャズクラブのほうが元気があったりして、ジャズにも注目していました。もちろん今でもシャンソンは好きですけれど」
そんなふうに話す中川さんの柔らかいアルトの声は、このお店の雰囲気にとてもよく調和している。
毎日行われるライブはジャズ中心だけど、中川さんのシャンソン好きのせいかどうか、スケジュールをよく見るとシャンソンやブルーグラス、そして中には「ヴァイオリン・クラシックナイト」(!)なんて表題のついている日もある。
そして、なんとスタッフであるケイスケさん(現代風イケメンである)がこのヴァイオリン奏者でもあるのだ。
ジャズのお店のスタッフがシャンソン好き・クラシック好きってのもなんだか面白いなあ。もっとも、そんなジャンルにとらわれないのが本来のジャズの姿なのかもしれないけど。




…なんてことを思っているに、ライブが始まった。
今夜はピアノトリオ+ヴォーカル。
vo:ボンビ柿本、pf:アヤコ、b:田代泰之、dr:柿本秀明というメンメン。
何度もライブを重ねたおなじみのメンバーなのだろう、息の合方もバッチリ。
多少アルコールも入ったお客さんの楽しそうな顔に心地よいサウンド。
こんなふうに、武庫川の夜はおだやかに更けていくのだった。
通常のライブの他、飛び入り参加OKのジャムセッションの日もあり、また毎月第2日曜には「サンディ昼下がりライブ」と題した、主にアマチュア・ミュージシャンを起用するライブも行われている。
お店に新しい風を入れるため、風通しのよいお店であるためにも常に新しいミュージシャンの起用をこころがけているという。
「アマチュアの方にも、演奏の場を提供したいと思っているんです。
また、ミュージシャンだけでなく、お客様だけでなく、もちろんお店側の私たちだけでなく、みんなが少しずつ嬉しくなるような、ちょっとずつ『ああ、来てよかったなあ』と思えるようなお店作りやライブにしたいなと思っています」
にこやかに語る中川さん、でもその言葉には、静かな確信と自信が感じられる。
また、4月30日にはヴォーカリスト、スー・ガイズルをアメリカから招いてのライブが行われる。昔のビーボップの雰囲気を感じさせるという彼女のライブ、これも見逃せないところだろう。
 
素敵なライブとビールの余韻を感じながら、駅へと向かう。
ふと見上げれば、来るときにも見上げた桜が、夜目にも鮮やかに浮かび上がる。
きっとこのお店を訪ねた誰もが、こんな幸せな気分で駅への道を歩むのだろう。わずか1分ほどとはいいながら(笑)。
BAR M-CUATRO
●尼崎市南武庫之荘1-14-20 ジミーズマーケット2F
●TEL:06-6433-3126
取材日:2008.04.11
●http://www.geocities.jp/m_cuatoro/Mcuatro.htm
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