ジャズ探訪記 バックナンバー
ジャズバー ヘンリー
淡麗辛口、しかし芳醇。
まあこのお店ほどアクセスのいいお店もないだろう。
三宮駅を北に出て、アイスクリームの店を左に折れると、一分も歩かないうちに見つかるのがジャズバー・「ヘンリー」。大きなサインは出ていないのだけど、ちょうど目の高さに店名が書かれているので、キョロキョロ探す必要はないだろう。らせん階段を降りるともうそこがヘンリーだ。
さすがサントリーバー、目の前のバーコーナーにはズラリと「山崎」のボトルが並ぶ。木のハイバックチェアも座り心地が良さそうだ。ピアノやベースが置かれているスペースにはいわくのありそうな写真パネルが。お?その中にひときわ目を引く美女が…。常盤貴子ばりのこの美女こそ、「ヘンリー」の石井順子さんなのだった。まあ「ずっと昔の」という注釈がつくんだけど(笑)。
 
ヘンリー、実は今年開店50年になるという老舗中の老舗。先代の社長に見込まれ、『「ここなら定年もないから…」とい言葉に騙されて(笑)』順子ママが手伝うようになってからでももう25年になるんだそうだ。
先代は料理好き・将棋好き、まあつまりはとても世話好きな人だったみたいで、バーと言うよりサロン的な雰囲気が強かったとか。その雰囲気は順子ママにも受け継がれていて(と言うより、もともとそんな人柄だったんでしょうね)、お客さんとスタッフの方もなんだか「お友達」っぽいカンジなんである。
 
昔、店に出入りしていた学生にも、「ゴハン食べられなかったらおいで」なんて言って、ちょくちょくお金もとらずに食事させていたりしたそうだ。そんな学生達が成長し、そして引退し、今でも家族ぐるみのおつきあいが途絶えないというんだから、順子ママの「おかあさんぶり」も推して知るべし。彼らが、例の震災で避難していた順子ママを探し出し、何かと手助けをしてくれたなんてお話もうかがった。
 
いや、じつにお話がおもしろいんですよ。知ってる人も知らない人も、知ってる話も知らない話もいろいろ出てきて。山下洋輔やミッキー・カーチスなどの著名人を始め、次々に出てくる名前やエピソードはまさにHistory of Kobe jazz。取材を忘れてお話をうかがっているうちに、おっと、もうライブの始まりだ!





順子ママとは「親子同然」というコルネットの池田公信さん、ピアノの藤森省二さんとのデュオで始まったオールド・ディキシー・ランド。のんびりと、ちょっと間延びした南部訛りを思い出すような暖かい演奏。そのうちにママがボーカルで加わり(僕も大好きな「All of me」!)、ベースさんにバンジョーさんも加わり、一気に盛り上がる。壁に貼られたライブスケジュールを見ると、「ヘンリーの仲間たち」とある。なるほど、みんなこのお店でつながっている人々なんだなあ。
結局、お店の魅力・音楽の魅力も「人の魅力」ということになるんだろうなあ。その証拠に、初めてお邪魔した僕自身、すでにヘンリーと順子ママのファンになりかけている。あ、そうだ、これって通い慣れた割烹とか小料理屋の雰囲気に似てるかも(笑)。ジャズのことを忘れても通いたくなるお店だなあ。
ジャズバー ヘンリー
●神戸市中央区北長狭通1丁目3-11 ノアールビルB1F
●TEL:078-391-2689
取材日:2007.06.08
●http://www.bar-henry.com/  
PAGE TOP