featuring Kobe Jazz People
Osamu Yoshida / BATTLE JAZZ BIG BAND Leader, Saxophonist, Composer, Arranger

言葉が通じなくても、音楽で通じ合うのです。

今年で31回目を迎えた神戸ジャズストリートで、第1回目から音楽監修を務めている秋満義孝さんは、83歳の今も現役のピアニストとしてご活躍されています。今年のステージでも円熟したプレイを披露。ステージ直後の秋満さんに神戸ジャズストリートの思い出から将来について、お話をうかがいました。

person

秋満義孝さん[神戸ジャズストリート音楽監修/ジャズピアニスト]

1929年生まれ。東京都出身。武蔵野音楽大学ピアノ科中退。1947年から活動を始め、1948年に松本伸とイチバン・オクテットに入団。1953年にクラリネットの鈴木章治とリズムエースの結成時に参加し、リズムエースの黄金時代を築き上げる。1957年には秋満義孝クインテットを結成。“日本のテディ・ウイルソン”と呼ばれ、スイングジャズの第一人者として、現在も活躍中である。

interview


即興演奏こそがジャズの楽しさ。

——今年も神戸ジャズストリートの音楽監修として参加されています。

「今年は実行委員長を務められた末廣光夫さんが9月に亡くなり、クラリネットの北村英治さんが入院されて、直前になってトラブルが相次ぎました。末廣さんの奥様の大牧暁子さんや、東京の花岡詠ニさんたちが中心となって、私たち音楽家が協力して、なんとかイベントを開催することができてホッとしています」

——今、ステージを終えたばかりですが、演奏されていかがでしたか。

「ジャズのステージには共通の方程式のようなものがあります。みんなが集まってやるわけですから外国の方も知っていなきゃいけない曲もあって、その中で誰かがリーダーシップを執って即興で演奏するのがジャズなのです。みんなの意見を聞いて曲を決めて、流れをつくり、45分間のステージで演奏します。そして、お客さんが納得して楽しんでいただくことがいちばんです」

——リハーサルは行わないでステージに臨むわけですね。

「先ほど、ご一緒したのはドイツの方で、英語で打ち合わせをして、見ていただいておわかりのように即興です。今回の場合、移動して別のステージがありますが、曲は同じでもメンバーが変わり、別の編成になるので次のステージは先ほどとは違ってきます。ドラムとベースは同じメンバーですが、3人がしっかりしていれば管楽器は乗ればいいのです。いいバックがつくと気持ちよく乗ってくれる。だからリズムセクションは大事ですね」

——ディキシーランドジャズの編成を教えてください。

「ディキシーランドジャズの編成は、トランペット、クラリネット、トロンボーン、そして、バンジョーが入ります。それでディキシー風になります。ベニー・グッドマンもやっているのですよ。スイングになるのです。ちょっとスマートになりますね。これはディキシーの曲だからディキシーの編成でないとできないと決めつけてはいけないですね」

神戸らしい音楽として祭りのようなもの。

——音楽監修に携わって来られて、どんなイベントにしようと思っていましたか。

「最初、東京から来るときにこういったイベントはありませんでした。このようなイベントを開催するのは初めてで、いろいろと不都合はあったかもしれませんが、文句を言わずにやろう。そこから始まりました。だから、平和にやってこられたのです。モダンなものはしない。ディキシーからスイングまでという思いはありました。それと、神戸の色を出したいという思いは、末廣さんも同じです。聴いていて難しくない心地よいもの。聴いていてうまくても何が言いたいのはわからないのは困ります。理屈じゃない楽しいものを届けたいという思いは、末廣さんも北村さんも同じでした」

——神戸ジャズストリートの楽しいエピソードを聞かせてください。

「今はバス移動ですが、最初のころは歩いて移動していました。ピアノは置いてあるからいいですが、コントラバス、サックスは大変です。移動に加え、曲を決めなくてはいけない。楽器が変わると編成も変わります。メンバーは曲を知っているかどうかわからないから編曲したものはできないですね。でも、ステージでは、いかにもこの編成で練習しましたというように見せるのです(笑)。プレーヤーもそれを楽しんでいました。それがジャズのよさなのです」

——そのステージはどんな演奏になったのですか。

「2日間で6ステージあって、やっているときはいいですが、終わると疲れがどっと出ます。末廣さんもプレーヤーもみんな慣れていないから大変でした。末廣さんは怒鳴るだけ(笑)。いろいろありましたが、終わってしまえば水に流して。終わってよかった。その繰り返し。やっているときは一生懸命でした。そんな感じで30年があっという間に過ぎたという感じですね」

——来年以降、神戸ジャズストリートは、どのように変わっていくと思いますか。

「プレーヤーも含め、末廣さんの遺志を継いで若い人にやってほしいですね。神戸のディキシーやスイングをそのまま、神戸に見合った音楽として、若いお客さんに聴いてもらいたい。ジャズのことは知らなくても、気分がよければいいのですから。いいものだから聴いてほしい。来年のことはわかりませんが、30年以上も続いたお祭りみたいなものだから、御輿が出ないのと同じなので続けてほしい。今日、演奏させていただいた『鈴懸の径』もジャズですよ。そんなふうに普通のお客さんに聴かせるならわかりやすいものをやっていかないといけないですね」

第31回 神戸ジャズストリートのコンサートレポートはこちら