KUSAKA YUSUKE / JAJE Representative Director
プレイヤーとして、教育者として。
関西では稀少なプロビッグバンド、モダンタイムスビッグバンドのバンドリーダーであり、日本学校ジャズ教育協会関西本部(JAJE)の代表理事でもある日下雄介さん。日下さんが行ってきた数多くの活動のなかでも、毎年学生たちの熱演が好評のジャパンステューデントジャズフェスティバルは、二日にわたって関西を中心に全国の中学、高校のビッグバンド部が腕を競い合う姿が楽しめます。今年で23回目を迎えるステューデントジャズの今までを振り返っていただくと共に、現役でビッグバンドでの活動を続ける日下さんにジャズバンドの魅力やジャズ教育についてなど、ジャズへの想いをうかがってみました。
person
モダンタイムスビッグバンド・バンドリーダー JAJE代表理事
日下 雄介さん
私立村野工業高校で教鞭を取るかたわら、自らのバンド「モダンタイムスビッグバンド」でサックスプレイヤーとしても活躍。JAJE(日本学校ジャズ教育協会関西本部)の代表理事も務め、学校におけるジャズ教育の普及にも多大な貢献をされています。2002年には兵庫県文化功労賞、2005年には神戸市文化活動功労賞を受賞。
NABL BIG BAND JAZZ FESTIVAL
ジャパンステューデントジャズフェスティバル2007「JAPAN STUDENT JAZZ FESTIVAL 2007」は8月18・19日に開催。(神戸文化ホール大ホール 1日券\1,000/両日券\1,500)JAJE関西本部主催の中高生ビッグバンドフェスティバル。今年はゲストに渡辺貞夫さん、トロンボーン中川英二郎さん、グローバルジャズオーケストラを迎えます。
interview
「子どもたちの生き生きとした顔が楽しみ」ジャパンステューデントジャズフェスティバル。
毎年、神戸文化ホールで行われるステューデントジャズ。今年は中学校15バンド、高校23バンドの出場がすでに決まっています。ビッグバンドは基本的に17人編成、部員が多い学校を合わせると総勢2000人以上の学生が文化ホールに集まります。そんな大掛かりなイベントを成功に導くには大きな苦労もあったことでしょう。
「毎年大変ですが、賛同してくれる方や子どもたちと一緒に楽しめるので大きな苦労というほどのものはありません。ただ、最初の方はビッグバンドジャズというものに対して、皆さんあまり理解はしてくれませんでしたね。いわゆるビッグバンドというとキャバレーなどで演奏するバンドというイメージがありましたし、ジャズ=不良という印象が強かったようです。でも徐々にジャズという音楽がいかに素晴らしい、優れたものだということが広まってきて、それからはとても楽しくやらせてもらってます。実際、高度成長期でキャバレーやディスコが乱立していた時代はビッグバンドの質もバラバラでした。当時のバンドと比べても、ステューデントジャズに出ている子どもたちはすごいですよ。ステージマナーなんかも大人顔負けで、可愛くてずっと楽しませてくれます。いつもは他の学校がどんな感じで演奏しているか分かりませんから、ここぞとばかり他のバンドが演奏しているときもそれぞれ真剣に見てますね。みんな勉強熱心で、彼らを見ていると続けてきて良かったと本当に思います」
「生徒と講師、お互いに励みになります」3年前から始めた、神戸ジャズ道場の試み。
23年間にわたり、ステューデントジャズを成功させてきた日下さん。それ以前から、私立村野工業高等学校のビッグバンド部の顧問としても活動されていました。現在、全国高校のジャズバンド部の憧れとも言える存在である高砂高校のビッグバンド部創設にも大きく関わっています。3年前からは、ステューデントジャズに関連して、希望する学校を招いての合宿「神戸ジャズ道場」を開催。さらに子どもたちへのジャズ教育に力を入れています。
「ステューデントジャズで、全国から学生が集まってくるのだから、その二、三日前に合宿してから本番に臨めば一石二鳥じゃないのか、という考えからジャズ道場を始めたのですが、やってみると意外と大人数で長丁場なのはしんどいなってことになりまして(笑)。でもせっかくだからと、8月あたまに行ってます。今年ももう生徒だけで200人集まったので、これ以上は難しいなと締め切ってしまったんですけど、この合宿は生徒たちには素晴らしい勉強になるのではないでしょうか。
ジャズ道場にはプロミュージシャンや甲陽音楽院の講師の方が多く参加しています。部活動では顧問の先生方やOBの先輩に教えてもらうことが基本のため、普段知ることができない部分まで指導してもらえるのが、なんといっても素晴らしい点。また、いつも使わせてもらってる神戸セミナーハウスは立地が良いので、朝から晩まで楽器の練習をしていても誰にも文句を言われないというのもいいところです。ビッグバンドは大所帯なので、参加するのも大変だと思いますが、一回参加した学校は必ず次の年にも申し込みがあります。自然いっぱいで楽しめるし、バンド内の雰囲気も良くなって、演奏のレベルも合宿前と後では全然違います。私たち講師も、普段は大人相手にしていますから、中高生相手に教えるのは勉強になりますよ。お互いに励みになります」
「これからも楽しみながら続けたい」ビッグバンド一筋の日下さんのこれから。
ジャズ教育に力を注ぐかたわら、自身のバンド「モダンタイムスビッグバンド」にも熱心に取り組んでいます。19歳の頃からサックスプレーヤーとしてステージに立ち続ける日下さん、その演奏は関西だけでなく全国的にも有名。ビッグバンド一筋という日下さんに、ビッグバンドならではの魅力についておうかがいしました。
「今のバンドは結成してもう20年以上。最初は仲間たちから『ビッグバンドを作ってくれないか?』と声をかけられたのがきっかけ。スイングジャズ、モダンジャズなどを演奏してきましたが、やっぱりデューク・エリントンやカウント・ベイシーなどは難しくても演奏していてとても楽しいです。音楽には、それぞれの楽しみ方がありますが、ジャズの場合はいつでも気軽に楽器を持ち寄って演奏ができるのがいいところ。長年バンドをやっていると、同年代のプレイヤーから若手までいろんなプレイヤーと演奏が楽しめます。
ジャズというと、どうしても年配のお客様が多いですが、若いプレイヤーが増えると自ずと新しい聴き手が増えていきます。今やっているステューデントジャズやジャズ道場などで育った子どもたちが、これからのジャズ界をもっと楽しくしてくれるに違いありません。そういった意味では、バンド活動も教育活動もどちらも楽しい。これからももっともっとジャズを楽しんでいきたいと思ってます」
特集「神戸ジャズ文化を彩る人々の魅力」 KOBE Jazz People