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ConcertReport・コンサートレポート

KWANSEI GAKUIN UNIVERSITY [K.G.SWING CHARIOTEERS 2011] CLINIC REPORT

関西学院大学 K.G.Swing Charioteers 2011 クリニックレポート/2011年11月16日(水) 関西学院大学 軽音楽部部室

 第42回山野ビッグ・バンド・ジャズ・コンテスト(以降、山野BBJC)において、関西学院大学K.G.Swing Charioteers 2011がベストランクアップ賞を受賞し、副賞として、協賛企業である野中貿易(株)よりプロミュージシャンによる「クリニック権」、富士通テン(株)より「メモリアルCDのレコーディング権」が贈呈されました。
 11月16日にバリトンサックス奏者の長島一樹さんによるクリニック、12月3日に富士通テン本社のレコーディングスタジオ「スタジオf(フォルテ)」でレコーディングが行われました。その様子を2回に分けてレポートします。

レポート
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バリトン奏者、長島一樹さんによるジャズクリニック

 山野BBJCのベストランクアップ賞受賞校に「学生ミュージシャンのさらなるスキルアップ」を目的として提供されている「ジャズクリニック」。バリトン奏者の長島一樹さんを講師としてお招きし、大学側から提出された「ライク・サンダー」「マイナー・ワルツ」の2曲の指導が行われました。関西学院大学K.G.Swing Charioteers 2011は、今年で結成66年目を迎えた関西ではおなじみのビッグバンド。バンドマスターの岡本侑子さんは、「軽音学部内で音楽のジャンルの壁がなく、自由な雰囲気がチャリオのカラーです」と話します。

 長島さんのあいさつでクリニックはスタート。プロのミュージシャンを前にして、最初は緊張ぎみだったメンバーも、飾らない長島さんの人柄で雰囲気は和み、サックスの実演を間近で聴いて、本来の姿を取り戻します。「ふだんの感じに触れることができてよかった」と、長島さんの指導にも熱がこもります。ジャズには正解はなく、こうしたら絶対ということは言わないのが、長島さんの指導スタイル。「可能性を持たせながら、いいベクトルに向かうように学生の持っているものを引き出しながらアドバイスするように心がけています」。3時間にわたるクリニックで何かを発見し、演奏に磨きがかかった17人のメンバーたちのレコーディングが楽しみです。

インタビュー
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バンドの団結力に、強いパワーを感じました。

——クリニックを終えて、今の感想をお聞かせください。

長島
「学生のみなさんは気付かれていないと思いますが、短時間の中でサウンドがどんどんよくなり、聴いているだけでうれしくなっていきました。学生を教える機会が多いですが、今日はみなさんの元気のよさを感じました。エネルギーをもらって感動しました。バンドとしての結びつきが強いのでしょうか。団結力があり、すごいパワーを感じました」
岡本
「バンドメンバーは、関学生だけなので団結力が強いのかもしれません。所属する文化総部が他の大学の学生を入れないという決まりがあって、関学生だけというのは当たり前のような感覚です」
長島
「部室に入ってみなさんの醸し出すオーラがとても素敵でした。ギスギスしていないし、そういった伝統や環境が結びつきを強くしているのかもしれませんね。ふだんからいい雰囲気で活動されているんだなと感じました」

——演奏を聴いて感じたことはありますか?

長島
「事前に曲をいただいていたので、曲の研究をしようと思ったのですが、これを教えようということは決めずにいました。みなさんの音からダイレクトに感じたものを大事にしたいと思っていたので、お互いが自然体でクリニックに臨むことができてよかったのではないでしょうか。客観的に自分を見られる状況をつくることを意識するだけでも変わると思います。そういった自然な流れの中で、クリニックを迎えることができて、そんなふだんの自然の流れを演奏の中に感じました」
岡本
「今までいろいろな方にレッスンをしていただいているのですが、長島さんはまた違った視点でストレートに指摘してくださるのでとても新鮮でした。バンドの課題として、パート間のバランスの悩みがあって、その解決方法がわからなかったのですが、1回目の通しで指摘していただけたことがよかったと思います」

——クリニックにはどんな気持ちで臨みましたか?

岡本
「クリニックの日が来てしまう。どうしよう。そんな焦りがありました(笑)。ライブに向けての練習が中心だったので、『もうクリニックの日なんや』という感じで当日を迎えました」
長島
「『マイナー・ワルツ』のときに、その焦りが出ていました(笑)。最初は緊張が伝わってきましたが、最後はリラックスした感じが心地よくバンドに出ていたように思いました。周りに対してアンテナを張ることでサウンドが寄ってクリアになって、最後はとても聴きやすく耳に入ってきました。それはちょっとした意識と筋肉の弛緩具合だけで決まってくるので、肩肘を張らないリラックスした要素は、ジャズのビッグバンドでは大切なことなので、まさに、それを体感することができたような気がします」

——レコーディングに向けてアドバイスをお願いします。

長島
「ふだんは密集空間で演奏しますが、スタジオは環境が違います。録っている意識が強くなり、開いたものが閉じてしまうので、レコーディングの場で大事なことは、とにかくリラックスすること。でも、それはとても難しいことなので、その部分を少し意識するだけでも、聴きやすい、今日のようないい音になります」

——最後に今後の抱負を聞かせてください。

岡本
「引退される2人の先輩と、今年、活動した仲間が、この1年やってよかった、楽しかったと言えるように、今年を締めくくりたいと思います。来年はメンバーも変わりますが、山野ビッグ・バンド・ジャズ・コンテストで入賞をめざしたいです」
長島
「バンドの方向性を大事にしながら目標に向かって、そのベクトルを太くすれば、自ずといい結果になると思います。レコーディングはリラックスして臨んでください」

Next Report

今回のクリニックによってレベルアップしたみなさん。その2週間後「スタジオf」にてレコーディングを行いました。その時の模様はこちら

プロフィール
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長島一樹 (ながしま・かずき)

埼玉県出身。埼玉県立川越高校にてバリトンサックスを始める。2006年、グラミー賞ノミネートの常連でもある、アメリカ学生最高峰といわれるノーステキサス大学の One O’clock Lab Band(ワン・オクロック・ラブバンド)に合格。「LAB2007」のレコーディングに参加し、ワン・オクロックのメンバー初の日本人としてその名を刻んだ。在学中よりホワイトハウスにも招待されたダラスの Emerald City Band(エメラルド・シティー・バンド)に所属し、活動後、2008年に帰国。 帰国直後の「バトルジャズビッグバンド vol.3」(BMG)で日本デビュー。 現在、都内を中心にライブ、レコーディングなどで活動中。