コンサートレポート バックナンバー
KOBE JAZZ VOCAL QUEEN CONTEST
神戸の地に舞い降りた歌姫たち
2010年5月8日。
さわやかに晴れあがったこの日、今年も神戸ジャズヴォーカルクィーンコンテストが開催されました。
数えること11回目の開催、応募者数は前年を遙かに超え、日本国内に限らず海外からの参加も珍しくなくなってきました。
歴史を経るごとに、初めての参加者のみならず「今年こそは…」と意気込む多数回参加の実力派も加えて、会場は早くから熱い空気に包まれています。
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年齢や出身地、キャリアの長短を超えて、予選での応募はなんと130組。
厳正な審査の結果、その中からこの日の本選に臨んだのはわずか10組の歌姫たち。

今回の参加者は
 EntryNo.1  A.K.I. さん[東京都]
 EntryNo.2  鈴木 輪 さん[東京都]
 EntryNo.3  Yukino さん[茨城県つくば市]
 EntryNo.4  ギラ・ジルカ さん[東京都世田谷区]
 EntryNo.5  THE HARMIS さん[大阪府&兵庫県]
 EntryNo.6  堀内 実智代 さん[長野県上田市]
 EntryNo.7 三宅 恵美子 さん[兵庫県神戸市]
 EntryNo.8  Dr.Mellow D さん[サンディエゴ]
 EntryNo.9  粟田 麻利子 さん[岐阜県可児市]
 EntryNo.10  ウィリアムス 浩子 さん[東京都]
以上の10名。
いずれ劣らぬ実力の持ち主なのは周知の通り、どんな熱戦が繰り広げられるか、審査員ならずとも期待に胸がふくらみます。
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審査員長に服部克久さん、特別審査員には小曽根実さん、黒岩静枝さん、道上洋三さん、西谷尚雄さんとおなじみの審査員のメンバーを迎え、いよいよ本選の幕が切って落とされました。
課題曲は、スタンダード曲と自由選曲を1曲づつの計2曲。誰もが知るスタンダードナンバーに加えての自由選曲は、それ自体が参加者のセンスが伝える審査材料にもなることでしょう。

静かに歌い上げる人あり、エキサイティングに盛り上げる人あり、一口にジャズヴォーカルといっても表現は人それぞれ。知っているつもりの曲もまったく違う印象にアレンジされていたりしてとても新鮮です。さらに感じるのは、黒岩審査員のコメントにもあった「歌には今まで生きてきた人生のすべてが出てしまう」ということ。たしかに、テクニカルな優劣に加え、そのことが決定的に大きな違いをその歌に与えるようです。

各参加者のパフォーマンスが終わるたび、各審査員のコメントを聞く聴衆の中からも大きなため息やうなり声がもれてきますが、審査は、その内容の熱さとは裏腹に粛々と進んでいきます。

前半の審査終了後、第10回神戸ジャズヴォーカルクィーンコンテストのグランプリ受賞者・Whoopinさんのライブを挟んで、いよいよコンテストは後半戦に突入。またしても華やかで熱い戦いが繰り広げられました。

すべての参加者のパフォーマンスが終わった後、ゲストのライブが始まりました。
アメリカから迎えた今回のゲストは、なんとまだ17歳、高校生のアリエル・ポウコックさんとこちらはベテランのケリー・アイゼンハウワーさん。
お二人のパフォーマンスに、会場からはいっそう大きな拍手があふれました。
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さていよいよ審査発表。
服部審査員長からも審査の難しさを伝えることばが伝えられました。
張りつめた空気の中、次々に審査結果が発表されました。
激戦を勝ち残った受賞者は以下の通りです。
グランプリ
ギラ・ジルカさん[東京都世田谷区]
準グランプリ
ウィリアムス 浩子さん[東京都]
神戸ジャズストリート賞
鈴木 輪さん[東京都]


ABC特別賞
Yukinoさん[茨城県つくば市]
NHK 神戸放送局長賞
三宅 美恵子さん[兵庫県神戸市]
特別賞・富士通テン賞
粟田 麻利子さん[岐阜県可児市]
受賞者の皆様、ほんとうにおめでとうございます!
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受賞者の方の中から、グランプリのギラ・ジルカさんと、富士通テン賞の粟田麻利子さんにお話をうかがいました。
ギラ・ジルカ(Geila Zilkha)さん[東京都世田谷区]
まずグランプリ受賞のご感想を。
「うれしい!とても素直にうれしいです!」

コンテストに応募されたきっかけは?
「去年の8月に40歳になりました。それまでは、若すぎてできなかったことや未熟すぎてできなかったことをやってみたくなったんです。これからは新しいことにチャレンジしてみようと。」

もともとは地元・神戸のご出身だとか。
「そうなんです。ずっと神戸で暮らしてきましたが、応援してくれる方もあって、震災以降は東京で活動しています。神戸を出発してからずっと旅をしているような感覚があって…。だからよけいに、帰ってきた神戸でグランプリをいただいたことがうれしくて…」

受賞をいまいちばん伝えたいのはどなたですか?
「5歳になる息子です!」

結婚や出産など、人生の大きな出来事も経験して、「これからはあらためて自分の人生を考えたい」と、何度も大きな瞳からあふれそうになる涙をこらえながら、明るく熱く語るギラさん。
これからの活動のご予定は?

「自分のソロ・アルバムを、そろそろ本腰を入れて作ろうと思っています。いままで、それを作っていなかったので…」



お父様がつけられた”Geila”というお名前には「喜び」という意味があるのだとか。グランプリ受賞、本当におめでとうございます!


粟田麻利子さん[岐阜県可児市]
富士通テン賞受賞、おめでとうございます。
「ありがとうございます!」

今回、初めての応募だったそうですね。
「そうなんです。昨年末に卒業したんですが、バークリー音楽大学に留学しておりまして、活動の拠点をアメリカと日本と、どちらに置こうか…と考えていたんですね。夏に一時帰国していたときに偶然このコンテストのホームページを見つけたんですが、『ダメモトで応募してみたら?』と母に言われまして。本来はまだボストンにいる予定だったんですが、今日の本選に参加するために予定を早めて帰国しました。3日前に帰ってきたばかりです」

ということは、今日はまだ…?
「はい、まだ時差ボケです(笑)」

ジャズを始めたきっかけなど教えてください。
「ずっとアカぺラを歌っていたんですが、ジャズも好きで聴いているうちにだんだん惹かれていきました。自由に自分を表現できるおもしろさがあるような気がしたんです」

今後の目標をお聞かせください。
「ジャズはもちろん大好きなんですが、ひとつのジャンルにとらわれず、いろんな活動をしていきたいです。たとえば、お母さんやちいさな子供たちも安心して聴けるようなやさしい歌、そんな歌を歌いたいなあとも思っています」
まっすぐにこちらを見つめて話す明るい瞳。
その瞳が見ているのは、粟田さん自身の未来なのかもしれません。
富士通テン賞、おめでとうございます!

この受賞をきっかけに、どんなふうに羽ばたかれるのか…。
ジャズファンならずとも楽しみなところですね。


いつのまにか会場は夕闇に包まれていました。
また来年、どんな歌姫がこの神戸の地に舞い降りるのか。気が早いとは思いながらも期待してしまう初夏の神戸の一日でした。