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コンサートレポート

The Maguire Twins Quartet
■2018年11月21日(水)神戸BORN FREE

レポート

“ジャズへの深い愛情と探究心”

 アメリカのメンフィス在住、カール征太郎マグワイア(兄・ドラムス)とアラン秀太郎マグワイアという双子の兄弟コンビ、その名も「The Maguire Twins」が先日、初の神戸ライブを「BORN FREE」で行った。今年リリースした彼らの2ndリーダーアルバム「Seeking Higher Ground」は本国のジャズウィークチャートで32位にランクインするなど、日に日にジャズファンの間でも注目が高まっている。今回の神戸では関西で活躍中のミュージシャン(トランペットの横尾昌二郎さんとピアノの永田有吾さん)との競演という事もあり、平日にもかかわらず多くのジャズファンが集まり、熱気ある雰囲気に。

 1曲目は彼らの師であり、アルバムのプロデュースも手がけた偉大なるピアニスト、ドナルド・ブラウン作曲の「Biscuit Man」から。カールの力強いドラミングと骨太なビートを楽しげに繰り出すアランのベースによって、横尾さんと永田さんも勢いのある気持ち良い音を奏でていきます。カール作曲の「Machi No Michi」は童謡のような懐かしさを感じるメロディが印象的な曲。オリジナルの次は多彩なアレンジと作曲でもその名を残す、名サックス奏者、ジジ・グライスの佳曲「Social Call」を披露。ジャズの伝統を大切に守りながら、自分達のサウンドもクリエイトしていく彼らの姿勢が選曲からも伺えます。1stセット最後はジャズスタンダードの「Someday My Prince Will Come」。アランの編曲で大胆に生まれ変わった名曲を四者四様、自分たちの表現の引き出しを最大限に使った熱演となりました。

 2ndセット冒頭はアラン作曲の「Song for Arjun」。原曲ではピアノがリードする所をまずカールのドラムから。本来のピアノのリードする部分でも永田さんが創造性豊かな彩りを曲に付け加えていました。ピアノというポイントではニューヨークのトップジャズピアニストであるデヴィッド・ヘイゼルタインの「This One’s For Bud」を取り上げるなど、なかなか渋い選曲も。22歳にしてジャズへの深い愛情と探究心も感じました。ライブ中、MCをアランがほとんど担当したのですが、関西でのライブという事もあって、「おおきに!」という関西弁を披露するなど、お茶目な部分も。また休憩中にスマートフォンを見ている二人の姿も若々しく、現代っ子の一面も見せてくれました。ライブ本編最後は再びドナルド・ブラウンの作曲した「New York」。マグワイア兄弟の威勢の良いプッシュを背に横尾さんの渾身のトランペットが鳴り響き、迫力のあるジャズサウンドに観客の興奮も最高潮に。

 終演後、CDはもちろん、Tシャツなどのグッズの売れ行きも好調でしたが、この日の熱演であればそれも納得。今回は神戸だけでなく、京都、東京、秋田など日本各地でライブを行った「The Maguire Twins」。日本のミュージシャンやファンとの触れ合いによって、きっとまた新しい創作意欲も生まれた事でしょう。今回の経験を活かした演奏、曲をまた日本で聴く事が楽しみです。そしてこの兄弟のジャズシーンでの更なる活躍への期待も改めて高まりました。ジャズファンの方、絶対注目ですよ!

取材・文
小島良太(ジャズライター・ジャズフリーペーパーVOYAGE編集長)




  • Someday My Prince Will Come by The Maguire Twins Quartet
  • New York by The Maguire Twins Quartet