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コンサートレポート

波止場ジャズフェスティバル「アート・ブレイキー生誕百年祭」
■2018年2月4日(日)100BANホール(神戸市中央区)

レポート

“ブレイキーよ、永遠なれ”
熱きハードバッパー達の饗宴

 神戸元町のジャズバー「Doodlin‘」のマスターである小倉慎吾氏が毎年企画、主催するライブイベント、「波止場ジャズフェスティバル」。今年はジャズ史に偉大な足跡を残したドラマー、アート・ブレイキーの生誕百年を祝うべく、プロアマいずれもブレイキー愛に満ちたバンドが100BANホールに集った。午後3時から午後9時30分まで、約6時間半に渡っての当日の熱いライブの模様をバンドごとに焦点を当てながらレポートする。

[ 宮崎晃和クインテット ]
宮崎晃和 ts 猪子知暁 tp 難波直樹 p 小河真生 b 井上雄太 ds
この熱狂の宴の先陣を見事に飾ったのがこのバンド。 “Quicksilver”、ハッキリしっかり二管が威勢良く、とにかく元気いっぱい!!激しい曲調が続いたのでちょっと緩やかに、ということでのチョイスが“Dat Dere”!ブレイキー愛の素直な表現に観客から拍手喝采。そしていきなり1バンド目から“チュニジアの夜”!おなじみのパーカッションに煽られて、ドラムの井上氏のブレイキー魂が炸裂爆発。会場の熱を一気に上昇させた。

[ 大谷宏信セクステット ]
大谷宏信 ds 浅井良将 as 柏谷淳 as 武藤浩司 as 李祥太 p 坂井美保 b
三宮のバー(祝2月1日で2周年!)、Mumbo Jumboのマスターである大谷氏が率いるこのバンド、リーダー以外はお店の常連プロミュージシャンで固めた布陣。大谷氏のドラミングにはブレイキーの精神が乗っかっているかのようにダイナミックにフロントをプッシュ。次に出演のテナー3姉妹と対照的にアルト3兄弟となったが各人の個性の棲み分けがなされており、ファンキーなアルト3管という珍しいブレイキートリビュートとなった。ブレイキーが作家の三島由紀夫を愛読しており、その事から作曲した“Mishima”という珍しい曲も演奏し、ブレイキーへの深い探究心が垣間見えた。

[ ザ★テナー3姉妹 ]
秦ゆり ts 田淵美緒 ts 高井晶子 ts 池田則彦 p 辻丈嗣 b 星長信昭 ds
主催の小倉氏がプロデュースするバンド。やはりこのバンドがいないと波止場は落ち着かない!歴代メッセンジャーズのテナープレイヤーに焦点を当てたプログラムのこだわりには恐れ入る。レギュラーバンドならではの安定したライブ運び、いつ聴いても握り拳でガッツポーズをしたくなるような力強い演奏。3姉妹がパーカッションを手に持ち、ドラムソロを煽るのもまた楽しいシーンだった。

[ 下村光輝セクステット ]
下村光輝 tb 小倉直也 tp 奥田龍弥 as 中瀬達哉 p 川中健士 b 藤原醇平 ds
ハードバップを常日頃愛好するリーダーの下村君と気持ちを共にする面々だけに、そのブレイキーサウンドへのリスペクト溢れる熱演!!アート・ブレイキーの名盤「バードランドの夜」を元にした選曲がジャズファンには嬉しい。トランペットの小倉君フィーチャーの“Once In A While ”も渋く光っていた。ラストで披露された下村君オリジナルの“Crimbing Silver”はハードバップの流儀に則った佳曲で、これまたメンバー全員その流儀がハマる好演。

[ ハードバップ研究会withゲスト小林陽一 ]
志水愛 p 横尾昌二郎 tp 里村稔 ts 今西佑介 tb 光岡尚紀 b 弦牧潔 ds 小林陽一 ds
ブレイキー生誕百年祭にこのバンドが出演せねばいつ出演するのだというほどバンドコンセプトがハマる、現在関西で人気の「ハードバップ研究会」。さらに今回は東京からジャパニーズジャズメッセンジャーズ、グッドフェローズなど数々のハードバップグループを率いる、まさに日本のブレイキー的存在であるドラマーの小林陽一さんがゲスト参加。それに触発されてかレギュラードラマーの弦牧さんもハッスル、小林さんとのツインドラムでブレイキーへの愛を語り合う2人の姿が眩しい!!勿論これだけのプッシュがあればフロントも燃えないわけにはいかない、日頃の研究成果以上のジャズ魂を感じた。

[ THE QUINTET ]
唐口一之 tp 宮哲之 ts 岩佐康彦 p 荒玉哲郎 b 北岡進 ds
関西、いや日本のジャズシーンを背負ってきた漢達が見せつけるハードバップ。マイペースに朴訥と自分の言葉を音で表わす宮さんと唐口さん。借り物ではない自分自身の音を出す、これがなかなかできそうでできない。それを追い求める日々を今後模索する若いミュージシャン達に己の音を持つ彼らの存在はどう映っただろうか。岩佐さんの疾風怒濤のピアノソロも印象的。また本来なら大トリを飾ることの多いバンドをあえてこの出演順にした構成もニクい。

[ 橋本有津子 “The Sermon” ]
橋本有津子 org 橋本裕 g 河村英樹 ts 田中洋一 tp 東敏之 ds
毎年、波止場ジャズフェスティバルを狂乱の渦に巻き込む“The Boss”オルガンの橋本有津子さんグループの登場!一昨年の同メンバーでの熱演もいまだ記憶に新しいが今回も期待以上のパフォーマンス。有津子さんのオルガンが唸り、いやいやそれは雄叫びと言って良いだろう。観客の喜ぶツボを押さえまくったファンキー大会、田中洋一さん、河村英樹さんの今脂が乗り切ったフロント陣、阿吽の呼吸の橋本裕さん、そしてドラムソロフィーチャーではこれまた東敏之さんの本領発揮!!そのソロを見守る有津子さんも微笑ましい。

[ KANSAI YOUNG JAZZ MESSENGERS ]
下村光輝tb 宮崎晃和ts 武藤浩司as 中瀬達哉p 川中健士b 井上雄太ds 大谷宏信ds
気分最高潮の中、まずは若手主体のセッションで“Moanin‘”!やはりこれを聴き、そして合唱せねばこの祭は帰れない!ベースの川中君の弦がブチ切れそうなほどの力感溢れるソロがその熱さを体現していた。 ベテランに負けじと奮闘する若いミュージシャン達の熱気が漲っていた。

[ KANSAI ALL STAR JAZZ MESSENGERS ]
ハードバップ研究会 and 唐口一之tp 田中洋一tp 小倉直也tp 河村英樹ts 小林陽一ds
総勢11名、ツインドラムによる“Alamode”を演奏。このようなセッション大会は今後なかなか見る事のできない光景になっただろう。

各世代のミュージシャンがブレイキーの名のもとに集い、共に音を出す。ブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズが有能な若手育成、アピールの場であったように、ベテランたちの胸を借りて思いきり演奏する若手ミュージシャンの健闘ぶりが光る一夜であった。

文・写真
小島良太(ジャズライター、ジャズフリーペーパーVOYAGE編集長)