2013年8月17〜18日に行われた第44回 山野ビッグ・バンド・ジャズ・コンテスト。早稲田大学ハイ・ソサエティ・オーケストラが14年ぶりの優勝を果たしました。会場は連日超満席。各バンドそれぞれの持ち味が輝きを放った2日間でした。
今年も盛り上がった第44回 山野ビッグ・バンド・ジャズコンテスト(以下YBBJC)。ここ大宮での開催は4回目となり、入場者にも会場を案内するスタッフにも余裕が感じられました。
予選では沖縄や東北から参加した大学もあり、惜しくも出場を逃したものの、YBBJCへの注目度がますます高まっていることを感じさせます。また、6連覇を続けていた国立音楽大学ニュー・タイド・ジャズ・オーケストラが7月に入って辞退を表明、話題となったことも記憶に新しい出来事です。しかし蓋を開けてみれば、上位シード校は優勝に向けていっそう切磋琢磨し、常連シード校・予選通過校からはランクアップするべく猛練習を重ねた成果がひしひしと伝わってくる、例年以上にハイレベルな2日間だったといえるでしょう。
今回特に感じたことは、いまやコンテンポラリーな楽曲がYBBJCでは「メインストリーム」になってきた、ということ。また、だからこそ「少数派」である伝統的な4ビートやスイングの演奏が、かえって新鮮にきこえるという現象です。王道の4ビートで上位入賞を果たした明治大学・大阪大学はもちろん、「グルーブ感が気持ちよく楽しめる。(本田雅人氏)」と評された日本大学ホワイト・リズム・エコーズ・オーケストラ、「楽しい。むしろ新しく聞こえた(三木敏悟氏)」と立命館大学R.U.スウィンギン・ハード・ジャズ・アンサンブルなど、オーソドックスなスタイルでの演奏が好評だったことが印象的でした。
出場校34校のうち、ほぼ半数が日本人作・編曲家の作品を取り上げたり、自分たちでアレンジを工夫していたことも注目すべき点です。宮嶋みぎわ氏のオリジナル作品でベストテンにランクインし、「賞があるなら作曲家にあげたい(前田憲男)」とコメントされた立教大学ニュー・スウィンギン・ハード。チック・コリアの名作「Rhumba Flamenco」を宇関陽一氏の情熱的なアレンジで演奏し、頂点を極めた早稲田大学ハイ・ソサエティ・オーケストラなど、メイド・イン・ジャパンの質の高いオリジナル楽曲を聴けることは、間違いなく YBBJCの楽しみのひとつになったといえます。
審査員長・瀬川昌久氏の「みなさんのバンドによって、ビックバンドの歴史と伝統の上に、ほかでは聴くことのできない日本人作曲家の、日本独自のジャズまで聴くことができた。困難な時代を乗り越える気合いを感じる」という講評には共感された方も多かったのでは。
また「学生であれば専攻は問わない。入賞には価値がある。胸を張って受け取ってください」という表彰式での山野社長の挨拶は、音楽大学出場の是非への明快な解答として、さらには44回続くYBBJCという音楽文化への意思表明として心に残りました。
「全力ジャズ!」のキャッチフレーズそのままに火花を散らし、最後までたくさんの声援と拍手につつまれて、コンテストは幕を閉じました。
毎年、伝統を受け継ぎつつ新しさを追求することがテーマ。「他の先生がたの意見もあるとは思うが、優勝、かな」と前田憲男氏。異例ともいえる優勝予告?!に会場がどよめいた。
ギタリストは優秀ソリスト賞受賞。「ここ数年の中でベスト。プログレッシブ・ジャズともいうべき楽しい音楽。色彩豊かで聴いていてシビれました」と三木敏悟氏絶賛。
コンテンポラリー系筆頭。優秀ソリスト賞も受賞。「熱意が伝わった。高音のコントロールや歌い方はアマチュアとは思えない。すばらしかった」と角田健一氏絶賛。
強烈な4ビート炸裂。「文句のつけようのない演奏。サックス陣はプロ並み。リズムセクションはリズムが全部頭に入っている。計算し尽くした演奏」と三木敏悟氏絶賛。
昨年に続き香取良彦氏のオリジナル曲を演奏。「高度で素晴らしいアレンジ。自分たちでリズム隊と管とのバランスを考えほしい」と本田雅人氏。
気合い充分、裸足で4ビート。「楽しさが音にこめられている。サックスの歌い回しは完璧。各セクションそれぞれキャラクターを持っている」とエリック・ミヤシロ氏。
名曲をモダンなアレンジで演奏。見事ベストランクアップ賞も受賞。「想像を超える演奏。音量のバランスがよく、自然。ソリストもまんべんなくよかった」と本田雅人氏。
硬派なラテンで会場を魅了。「すばらしかった。ベーストロンボーンもいい。パーカッションは休むスペースをつくるとさらによくなる」とエリック・ミヤシロ氏。
正統派スイングで挑戦。「リズムも管も音色がいい。コンテンポラリーが多い中、かえって新鮮。歌心のつかみ方が一致している。とても音楽していた」と三木敏悟氏。
オリジナル曲でランクイン。ピアノ連弾に会場が沸いた。「アイデアいっぱいでおもしろかった。セクション間のハモり方を研究するとさらによくなる」と前田憲男氏。
特別賞とのW受賞に歓喜するメンバー。
富士通テンより、「レコーディング権」が副賞として授与されました。
(出演順)
8月17日(土)
- 01. 天理大学[ALS ジャズ・オーケストラ]
- 02. 名古屋芸術大学[ジャンパ・スウィング・オーケストラ]
- 03. 東京大学[ジャズ・ジャンク・ワークショップ]
- 04. 慶應義塾大学[ライト・ミュージック・ソサエティ]
- 05. 慶應義塾大学[K.M.P. ニュー・サウンド・オーケストラ]
- 06. 中央大学[スウィング・クリスタル・オーケストラ]
- 07. 明治大学[ビッグ・サウンズ・ソサエティ・オーケストラ]
- 08. 学習院大学[スカイ・サウンズ・ジャズ・オーケストラ]
- 09. 名古屋大学[エーデル・レーテ・ジャズ・オーケストラ]
- 10. 愛知大学[ブルー・スターズ・ジャズ・オーケストラ]
- 11. 東京工業大学[ロス・ガラチェロス]
- 12. 金沢大学[モダン・ジャズ・ソサエティ]
- 13. 日本大学[ホワイト・リズム・エコーズ・オーケストラ]
- 14. 早稲田大学[ハイ・ソサエティ・オーケストラ]
- 15. 立命館大学[R.U.スウィンギン・ハード・ジャズ・アンサンブル]
- 16. 昭和大学[メディカル・オール・スターズ・ジャズ・オーケストラ]
- 17. 日本医科大学[ミッドナイト・サウンズ・ジャズ・オーケストラ]
- 18. 法政大学[ニュー・オレンヂ・スウィング・オーケストラ]
- 19. 群馬大学[G.K.オールスターズ]
- 20. 青山学院大学[ロイヤル・サウンズ・ジャズ・オーケストラ]
- 21. 洗足学園音楽大学[ゲット・ジャズ・オーケストラ]
8月18日(日)
- 01. 立教大学[ニュー・スウィンギン・ハード]
- 02. 横浜国立大学[ベイサウンド・ジャズ・オーケストラ]<初出場>
- 03. 埼玉大学[スウィング・キューブ・ジャズ・オーケストラ・ブルー・バンド]
- 04. 洗足学園音楽大学[しわしわーず]
- 05. 日本大学[リズム・ソサエティ・オーケストラ]
- 06. 名古屋音楽大学[めいおん ジャズ・オーケストラ]
- 07. 横浜市立大学[セカンド・ウィンド・ジャズ・オーケストラ]
- 08. 国際基督教大学[モダン・ミュージック・ソサエティ]
- 09. 京都大学[ダーク・ブルー・ニュー・サウンズ・オーケストラ]
- 10. 同志社大学[ザ・サード・ハード・オーケストラ]
- 11. 甲南大学[ニューポート・スウィング・オーケストラ]
- 12. 上智大学[ニュー・スウィング・ジャズ・オーケストラ]
- 13. 大阪大学[ザ・ニュー・ウェイヴ・ジャズ・オーケストラ]
取材協力:BIGBAND!編集部