クリスのワッツ・ジャズ? クリスのワッツ・ジャズ? インデックスへ
クリスのワッツ・ジャズ?
VOL.6  今聴くならこの1枚!


クリス教授の6回にわたる連続講義もいよいよ最終回。
というわけで今回は、「いまジャズを聴き始めるならコレ!」と、教授オススメのアルバムなどをお聞きしました。

CDだけじゃなく、ライブも聴いてほしいんですけどね。でもまあ、スイングジャズが聴きたい!って思ってもなかなかライブで聴ける機会は少ないですよね。だから、手に入れやすくて、ビバップ以降のインストゥルメンタルの中で選ぼうと思うんです。そう考えると、まずオススメはね、マイルス・デイヴィス&オールスター・クインテットの『Walkin'』。
チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーが始めたビバップは、『スイングジャズのつまらなさ』(笑)に対して『他にもこんなことも、あんなこともできる!』っていうアンチテーゼというか、反抗心のもたらしたスタイルでした。


そのへんの感じはとーってもよくわかりました(笑)。

そして、白人がそれに対抗して起こったのがウエスト・コースト・ジャズでしたねー。さらに今度は、それを聴いた黒人が『なんじゃ、それ。我々のジャズはそんなもんじゃないよ』と、ブルースやゴスペル、R&Bを取り入れつつ再構築していったのがハード・バップなんですね。でも、ウエスト・コースト・ジャズを無視するんじゃなくて、洗練されたハーモニーみたいな新しいテイストはうまく取り入れて創りあげたスタイル、それがハード・バップなんです。
残念ながら、この講義の中ではその時代まで行けなかったけど、このアルバムはハードバップ時代の幕開けとなった一枚です。現在聴かれたり演奏されたりしているジャズの基本みたいなことがよくわかるアルバムだと思うんですねー。
あ、他にも、アート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズの『モーニン』が入ってるアルバム。ピアノ・トリオが好きな人ならウィントン・ケリーやケニー・ドリューもいいかもしれませんね。


CDショップとかを見てると、その辺りのアルバムがリイシューというのか、ずいぶん安く出てますよね。


そうそう!そうなんですよねー、だからジャズを聴いてみたいという人にはとてもいい時代だと思いますよー。
いま僕が紹介したようなアルバムをとりあえず聴いてみて、『あ、このサックスの音色ステキですねー』とか『この曲を演奏しているメンバーは誰だろう?』、『この曲はすごく気に入った、じゃあ他のプレイヤーはどんなふうに演奏してるのかな?』というふうに、どんどん探して、体験していくといいと思うんですね。幸い、いまはインターネットの時代。アーティスト名とか曲名で検索すれば簡単に見つかります。そのままアルバムを買うこともできますからねー。


インターネットはジャズ入初心者にもすばらしくいいツールですねえ。この講義もネットでしか読めないわけで(笑)。


曲によっては試聴までできたりしますからね。アルバムもホントに安く買える時代ですから、興味のわいた方向でどんどん買って聴いてほしいですねー。もし想像していたのと違ったとしてもそれも勉強ですよ。ホントにサイアクだったら中古屋さんに売ったっていいんですから(笑)。


逆に言えば、想像以上のものに当たる可能性だってあるんですもんね。同じ曲やアルバムでも、例えば若い時と、年齢を重ねてからでは聴こえ方も変わってくると思います。あ、ところでクリスさんが初めて買ったジャズのアルバムってなんでした?


あ、ボクですかー、ボクの場合は、ベニー・グッドマンの2枚組のライブ盤『ベニー・グッドマン・トゥデイ』でした。当時の彼の最新盤、もちろんLPでしたけどね、いまでも持ってますよー(笑)。


そりゃまたどんなきっかけで?

そのころクラリネットを習ってて。ずっとクラシックのクラリネットだったんですけど、ジャズ・クラリネットをあらためて聴いてみようと思って。父がジャズ好きなこともあってボクも昔から聴いていたんですけど、父はスイング系のレコードを持っていなかったんですね。彼のコレクションならいつでも聴けるから、ウチで聴けないものを…ということで買ったのがそれでした。中学生の頃でしたかねー。


いきなり2枚組ですか、そりゃスゴイ!

でも当時は、2枚組でも7ドルくらい。まだまだ安かったですねえ(笑)。

さて、最近注目してるアーティストとかありますか?

そうですねー、トランペットのロバート・クラスパーやロイ・ハーグローブ。ストレイト・アヘッドのジャズももちろんやってるんですが、ヒップホップの要素も取り入れてどんどん新しいことをやっています。ベテランのベーシスト、クリスチャン・マクブライドの新しいアルバムや、若手ピアニストのジェラルド・クレイトンなんかはオススメですよー!


へええー、ジャズは今でも進化し続けているんですねえ!そして進化を押し進めているアーティストが生まれてきている。


そうですよー、かつてのマイルスがそうでしたし、ハービー・ハンコックやある意味チッコ・コリアもそうでした。伝統的なスタイルもありながら、その時代その時代のスタイルみたいなものがあるのは事実。でもジャズは、やっぱり変化していくものなんですね。こんなに楽しく興味深い音楽ですから、もっともっとみなさんに聴いて、楽しんでほしいです。


いやあ、ホントにそうですねえ!僕もこの連続講義を通じて、ジャズの楽しさがだいぶわかったような気がします。またライブにも出かけたくなりました。半年間にわたってありがとうございました!


どこかのライブハウスで出会うかもしれませんね。
こちらこそありがとうございました!

さてさてそんなわけで、一応は講義は終わったわけですが。
その後で、余談、というにはあまりにもモッタイナイ話題が出たんですね。そこで、この6曲入りアルバム「クリスのWhat's Jazz?」にもボーナス・トラックをお付けしましょう。


ジャズが固定したジャンルではなく、どんどん変化していくもので、若手のミュージシャンには特にその傾向が強い。スイングやバップ、ロックやポップスの枠も自由に飛び越していってしまう…なんてことから、リズムの時代による変遷みたいな話題になり、そこから『変拍子』の話になりました。
「なんか変拍子の曲って、とっつきにくいというか、聴きづらい感じがして…」
と思っているのはたぶん僕だけではないはず。どうしたらすんなり聴けるようになるんでしょう?と質問をしたんです。
そしたらクリス教授曰く。


「普段と違う環境で聴いてみるといいですよー、例えば地平線や水平線が見えるところ。山の上とかでもいいです。普通の生活環境の中で聴いてると、どうしても歩いていたり目が何かを見ていたり何か考えていたりするでしょう?そうすると、耳もそれにつられちゃうんですね。広々したところなんかに出かけていって、ぼーーーーんやり水平線を眺めたりしていると耳がリラックスして自由になるんです。そんな聴き方をしてみると、いままでと全然違うように聴こえてきますよ!」


なんかとーっても新鮮だったんです。
ジャズっていうと、その背景にあるのはどうしても都会の風景という気がしていたんですけど…、そうでもないんですねえ。
サーフィンの休憩にデイブ・ブルーベック。
ピクニックのBGMにパット・メセニー。
こりゃあ意外にイケるかもしれません。
いや、なるほど、この自由さこそがジャズの楽しさなのかもしれませんね。


クリス教授、本当にありがとうございました、お疲れさまでした!





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