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クリスのワッツ・ジャズ?
VOL1.ジャズ進化論・すべてはニューオリンズから始まった。


ひとくちに「ジャズ」とはいっても、ジャズはあまりにも広範囲。
僕のような初心者にはいったいどこからどこから始めたものかわからない。たくさんの有名ミュージシャンにはいろんな神話や伝説もあって、あまりにもフクザツで難解な音楽のような気がしてしまう…というのが正直なところ。
今回から、FM COCOLOのDJとしてもおなじみのクリスさんに連続講義をしていただくことになった。
第1回の今回は、題して、「ジャズ進化論・すべてはニューオリンズから始まった。」
ーさてさっそくですが…、いきなり大きすぎる質問から(笑)。
ジャズはどこでどんなふうにして生まれたんでしょう?

最初はねー、ニューオリンズからなんですね。そもそもは南北戦争の終結。南北戦争が終わってアフリカ系の奴隷がやっと解放されました。ところが、解放されてみても仕事がない。みんなが『大都会・ニューオリンズならなんか職があるんじゃないか?』と、どんどん集まってきたわけです。

うーん、なんか今の日本にも通じるような…。

でもねー、彼らには仕事のスキルが何もなかったんですねー。でも彼ら には音楽を作って演奏する力があった。そこで、南軍の軍楽隊が残した楽器を使って、お金を稼ぐ手段として演奏を始めたんです。それがニューオリンズ・ジャズの前に出来たラグタイムなどで、10人以上のピアノを含んだ編成で吹奏楽みたいな感じで演奏してたんですよね。軍楽隊 の残した楽器だから、コルネットとかトロンボーンとか、マーチン グができるような、いろんな管楽器がありました。これがニューオリンズ・スタイルの元になったんですねー。

楽器編成もそういう原因で決まってきたんですね。

そうそう。彼らは最初、バーとかで演奏してたんですが、仕事だからね、冠婚葬祭、どんなイベントにも現場に行って演奏した方が儲かるでしょう?それで和音の弾ける楽器としてバンジョーなんかが加わってきたんです。

あ、そうか、ピアノをかついで出かけるわけにいかないですもんね。音楽の宅配みたいに演奏をしてたんだ。

そんなふうな形で当時の労働歌なんかを演奏してるうちに生まれたのがブルーズ。そこに、自分たちが持っているアフリカのリズムを加えていったのがジャズの原型になったんです。でもねー、みんな独学で楽器を覚えるしかなかった。楽譜も読めないし…というか、楽譜そのものもなかった(笑)!!もし曲を忘れたらその場その場でゴマカすしかなかったんです。

そりゃそうだ(笑)。あれ、ひょっとしてそれが…?

そうなんですねー、そのあたりからインプロビゼーション(アドリブ)というスタイルが生まれてきたみたいなんですね。
で、その一方で、ニューオリンズ以外のところでも、白人が楽しむための音楽もあったわけで。その白人ミュージシャンたちが、このニューオリンズの新しい音楽に目をつけたんです。
『南部ではこんな音楽が流行ってますよ!!』と、シカゴのクラブで紹介しました。まあ最初の演奏では総スカン(笑)だったらしいけどね。でも、早くも3日目の演奏にして大ブレイク!!人気が出てきたんですね。

いやあ、ずっと後のプレスリーとかビートルズとかと事情は同じですねえ。

だから、いちばん古いジャズの録音といわれているのは1917年、全員白人のバンドでした。でもぜんぜんスウィングしていない!!(爆笑)。反対にニューオリンズでは、ジャズを演奏していたクラブなんかがどんどん閉鎖されて、ミュージシャンは仕事がなくなっちゃった。そこで、蒸気船に乗ってミシシッピー川を北上。シカゴに新天地を求めて出稼ぎに行った彼らの演奏がだんだん注目されてきたんです。

なんかアレですね、音楽の誕生とか発展も、かなり経済や社会状況の影響が大きいんですねえ。

そうなんですねー。今年、デューク・エリントンが硬貨のデザインに採用されたのも、初のアフリカ系の大統領が生まれたことと無関係じゃないし。いろんな影響があるんですね。
このころからジャズは、ダンス音楽を演奏するバンドとしてだんだんビッグバンド化していくんです。そしてジャズは、シカゴ・ブルーズと融合しつつニューヨークに伝わっていきます。中でも有名なコットン・クラブ。ハーレムにあったクラブなんですが…。当時のハーレムはどんな街だったと思います?

え、ハーレムですか?? いまはなんか、かなりヤバい街っていう印象ですが…。
(実は、ハーレムは今全然やばくない)

いやー、当時は高級住宅地でね。マンハッタンに住む人の別荘地でした。デューク・エリントンのバンドとかもここで演奏してたんですね。多くの白人たちがジャズを楽しむようになり、そしてラジオの開局。ジャズはかなりビジネスになってきたわけです。

なるほど、チーム・プレイとしてのビッグバンドよりも、少人数の方が自分が主役になりやすい。メンバー全員が主役になれる可能性もあるわけですね。 苦あれば楽ありというか(笑)、逆境もチャンスになりうるというか…。ここにきて、また新しいスタイルの音楽が生まれようとしているわけですね。

そうなんですねー。じゃ、次回はモダン・ジャズの変遷みたいなテーマにしましょうか。ジャズのいろんなスタイルのことなんかを話しましょう!

ありがとうございました!

ジャズの歴史は、まるでアメリカ史をなぞるように変化・発展しているようだ。
講義中の余談だけど、例えばSPレコードに入る長さが3分ほどだったから当時の曲はその長さで収めなきゃいけなかったとか、LPレコードの長さは、あるクラシックの曲が全部入る長さが基準になったとか…。
音楽をめぐるテクノロジーの発達とも切り離せないものなのだった。
音楽も社会の動きと無関係ではない…というか、まさに「歌は世につれ、世は歌につれ」。
そんなことを考えると、一枚のCDを聴くときの気持ちも少し変わってきませんか?




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