比較的最近の仕事で言うとNHKの「もっともっと関西」の仕事が嬉しかった。最初に話がきたのは、70歳すぎてから。メインのMCである濱ちゃんこと濱中博久アナウンサーがジャズ好きということで僕にお誘いがきたのだ。70過ぎてからテレビにレギュラー出演したオルガニストはまずいないだろう。これはちょっとした僕の自慢でもある。
心に残ってるのは、僕の初出演のときにオルガンを聴きにスタジオが満員になるぐらいの人が見学に来てくれたこと。最近の若いNHKの人たちはアナログであるハモンドの真空管の音を知らないのだという。よく考えたら、テレビはデジタル放送に移行しつつあって、僕は時代に逆行しているのだ。デジタル化の波が押し寄せるNHKで、僕は「アナログや」と大きな声で話していたのは、今考えるとちょっとした反逆児のようで面白い。
また、こんなこともあった。濱ちゃんに「小曽根パパは民放が長いから気にしたことないやろうけど、NHKでは言葉に気をつけてな」と忠告された。その直後の番組でアナゴ料理のレシピを紹介しているときに、濱ちゃんが「小曽根パパはアナゴは好きですか?」と聞いてきたので、僕は思わず「アナゴもオナゴも大好きや!」と思わず言ってしまった。もちろん言葉的には問題なし、おそらくスタッフはひやっとしたに違いない。でもあれは二年間の間で一番のヒット発言だったと思う。
そんなこんなで「もっともっと関西」でも僕はハモンドを弾き続け、もちろん今もハモンドを弾いている。今の時代、デジタル中心と言われているけれど、ジャズやクラシックのコンサートでは完全にアナログが圧勝している。テレビも楽しいけれど、音を楽しめるのは生のコンサートが一番だ。
ハモンドやピアノの音色の美しさは何と言っても生が一番だし、お客さんと直接触れ合えるのも楽しい。74年生きてきたけれど、これからも僕は皆さんと一緒にジャズを楽しんでいきたい。僕のエッセイは今回で最終回だけれど、次は一緒に生のジャズの楽しさを分かち合えたら嬉しい。コンサート会場でお会いできる日を楽しみにしています。では、またお会いする日まで。 |