ジャズ探訪記 バックナンバー
●Bar with Jazz COMODO
小バコなジャズの玉手箱。
今宵ふたたび大阪へ。キラキラ華やかな、夜のミナミなんである。
夜の心斎橋を訪れる機会は少なくなってしまったけど、来れば自然に気持ちがウキウキ。にぎやかな街はやっぱりステキだ。
大丸とそごう(いやー、いまやこれも変わっちゃったんですよねえ。でもこのほうがわかりやすいのでとりあえず旧名で)の間の筋を東へ。ハハハ、通りが狭くなるぶん、すれちがう女のコたちの長い脚も、より間近に見えたりするわけですね。
そういえばチャイの美味しかったあの店もこの辺りだったなあ。昔さんざん通ったカメラ店もずいぶんスケールダウンしている。これはちょっと寂しいんだけど…。なんてこと考えながら歩いていると、つい今夜の目的を忘れそうになったりもして。でも街の様子は、しばらく見ないうちにどんどん変わっていってしまうんですねえ。

まあしかし、そんな感傷にどっぷり浸る間もなく到着してしまうのが今回の目的地。エレベーターに乗って4階へ。
「こんばんわー」とドアを開けると、お、意外にこじんまりしたお店である。
いや、実はこのサイトでもおなじみのDJ・クリスさんの番組でもCOMODOの名前はよく聞いていたんですけどね、なんとなく、もっと大きなハコをイメージしていたんでした。もっとライブハウス的なお店、みたいなね。でも実際のお店はとてもシックで、ごくごくオーセンティックなバーみたいなんでした。
こじんまりした印象とはウラハラに、ドアを開けてすぐに気がついたのは、壁に立てかけられたウッドベースのハードケース!まあ知らない人は知らないでいい話ですけど、まあこれがデカいんですよ。楽器自体がデカいんで当然ですが、2メートルくらいあるんですよね、長さが。ベーシストでもこんなケース持ってる人はそんなに多くないんじゃないかなあ。




へええーと思いながらお話をうかがったのはオーナーの長江敏郎さん。なんというか、「ちょいワル」を絵に描いたようなというか(笑)、いや、もちろんいい意味で言うんですけどね。趣味の良さと洒落っ気とを併せ持つ、いい雰囲気のある方なんでした。そしてお聞きしてナットク、長江さんご自身ベーシストなんである(しかもサウスポー!←その苦労話も実に興味深いんですが…まあそれはまたの機会ということで)。
印象的だったのは、「この店を始めるとき、『趣味の店』にはしたくなかった」という言葉。そして、「ジーパンは禁止という、スタッフへの無言の圧力(笑)」
哲学と美学を感じるじゃありませんか、ねえ。
しかもガチガチのものではなく、とてもこなれた、洗練されたもののような気がするんですね。もちろんそれはお店そのものにも反映されていて。
そう、安直な言い方になっちゃうけれども、実に『お洒落』な感じなんですね。きっとジャズは、そしてお酒は、とてもお洒落だったはず。カッコよくて豊かで、だからこそファッションがそこから生まれたはずで。

「ライブを最優先とは考えていません。まず、ちゃんとしたバーでありたい。そのうえで、『いい音楽』が聴ける店にしたいんですね」と長江さん。
そのせいかどうか、ライブは週に3日ほど。しかしきちんとスーパーバイザーをつけて、ディレクションしていく。そしてバーにはキッチリ正統派の美人バーテンダー(重複しますが…ホントです)。
どうです、実になんとも「ちゃんとしている」じゃあーりませんか。いただいたビールやジンジャーエールのチョイスにも、きちんとその姿勢はあらわれているようで。
エンタテイメントは、いやエンタテイメントだからこそこうこなくちゃ。なんだか嬉しくなっちゃうんですねえ、こういうことお聞きすると。海外からもよく出演依頼がくるというのも、とってもうなずける話なんでした。
なんでも長江さんは昔、圧倒的人気だった漫才ユニット「マンガトリオ」のバックバンドの経験もおありなのだとか。そのせいかどうか、お話ししててとってもおもしろい方。正直、取材を忘れてお話をうかがいました。お店に関わることも関わらないことも、全部をここで紹介できないのが残念だ。

『こだわり』という言葉はなんとも美しくない。ここはやはり『哲学』と言おう。
そして哲学は、目に見えるものの後ろに、そっと佇んでいる。
諸君、Rich taste・Rich toneとはこのことである。
ついつい「ブルータス」的なコピーを考えつつ(笑)COMODOを後にすると、外は心斎橋の冬の夜。
僕の心の口角は、きっと3センチくらい上がっていた。

Bar with Jazz COMODO
●大阪市中央区東心斎橋1-17-15 丸清ビル4F
●TEL:06-6258-8088
取材日:2009.12.15
●http://www.comodo-jazz.com/
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