ジャズ探訪記 バックナンバー
●RUG TIME OSAKA
ジャズ聴きたきゃ、三ツ寺に行ってみってら?
梅雨明けも遅い、なんともヘンな今年の夏。
それでも、ホットパンツにジャラジャラアクセも鮮やかな女子率はぐぐっと上がり、そこはやっぱりミナミの夏。時はぼちぼち日も傾き金色の光が満ちて来る頃、やってきたのは道頓堀にもほど近い三ツ寺筋である。お洒落なブティックも多く、夏物バーゲンを目指す人も、さて飲みに行こうぜーなんていう人も御堂筋に溢れ出す華やかな時間帯だ。

このにぎやかな街で、目的の店を見つけられるかな…?なんて心配はいらない。なにせ、通りを挟んで三ツ寺のすぐ南向かい、一階はにぎやかなカフェ。ラグタイム大阪はそのビルの4階なのだ。心斎橋か難波から、会社帰りのOLさんなんかを鑑賞しつつ(笑)御堂筋を歩いてライブを目指す…なんてのも夏の楽しみのひとつになりそうだ。

エレベーターを降りたら、すぐ目の前に大きな振り子時計。なんとなく「おじいさんの古時計」を連想してしまう。そしてすぐに目に入るのが、ゆーったりとしたクラブというかラウンジというか。そう、ここがラグタイム大阪なのだ。いや、それにしても視線がのびのびするゆとりのあるスペース。なんでかな…?と考えて気がついた。目障りな柱がないんですね、このお店。
店の奥には長い長い、分厚い一枚板のカウンター、それも左右に2本! 左にはバー、右にはりっぱな厨房が見える。しかもそれがぜんぜんせせこましくない。いかにゆったりしてるかってことだなーなんて考えてさらに右に目をやると、横長ながら御堂筋に向かって開かれた窓! 銀杏の葉の茂み越しに通りを歩く人々の姿も眺められる。いや、こういう眺めが大好きなんですよ、僕は。
ま、それはさておき。
迎えてくださったのはオーナーの仲 一馬さん。名刺を拝見すると、『日本バーテンダー協会関西地区本部・副本部長』とある。しかも『南大阪支部 常任相談役』なんて肩書きも見えて…。
あちゃー、ネクタイして来なきゃいけなかったかなー(まあ結局しないんですけどね、だって暑いんだモン)。
一瞬ビビったものの、仲さんはいたって軽いというか(笑)飄々とした方、ちょっと安心したりして。
お話をうかがうと、以前は梅田でお店をされていて、そこからこの場所に移転したのが4年前。それまでも帝塚山で、30年来ジャズのお店をされてるのだとか。その名もBUGPIPE。そしてこちらがRUGTIME。
(余談ですが、以前この『ジャズ探訪記』vol.26でお邪魔した、三宮のBar Martiniの飯塚さんはそちらのお店から独立されたのだとか)
『えー、スペルが違うんじゃないの?』と思ったあなた。鋭い!
でも、そうじゃないんですね。
楽器のバグパイプではなくって、こちらは『虫』の方。コンピューター・バグとかの方のバグですね。
「虫みたいなヤツらが集まって、酒飲んでジャズ聴いて楽しくやろうや」ということらしい。
そして、ラグタイムは音楽の方じゃなくってじゅうたんとかのRUG。じゅうたんとかの他に『だらしない』なんて意味もあるそうで、まあつまり「だらしなくてエエから、まあ酒飲んで楽しくやろうや」という、仲さんの明確すぎるコンセプトによるダジャレだそうで(笑)。



ジャズとの出会いは中学の頃。
「まあ夜中に、勉強してるフリして、深夜放送でジャズを聴いてたワケですわ。そしたらなんかハマってもうて。ジャズ喫茶に入り浸るようになってしもて…」と仲さん。どちらかというといや、かなり『こだわり』の多いジャズ界の人にしては、なんというか、とても軽い感じなんですね。このお店の、風通しのいい、気楽な感じは仲さんのそんなお人柄からくるのかもしれないなあ。
とはいうものの、「移転したときに変えたのは、コンクリの床に直接、板を張ったこと。音の響きが違うんですワ」
そして、ステージに鎮座ましますのは名機ハモンドB-3(大阪のクラブにはなんと3台しかないらしい!)。そしてピアノはヤマハC-7。「スタインウェイより良かった」から選んだそうだが、調律が月2回、「いや、これがけっこう大変で…」と苦笑する仲さん。
実に地味に、しかし大切なところには充分に気を遣われているようだ。意外に…というと失礼なんだけど(笑)、音楽ファンには嬉しいところです。

そう、お人柄といえば。
「ぜひライブでジャズを聴いてほしい」
「エエ音楽とうまい酒があったら、なんかニコニコしますやろ。エエ女がおってもそうなるけど(笑)」
と語る仲さん。
いい音楽を紹介するだけじゃなく、人と人とを機嫌良くくっつけるのがお好きなようだ。常連さんやお友達と三ヶ月に一回くらいのペースで開催される内輪のパーティ『酒のまん会』もそんな集まりらしい。
「男性はなんかお酒を1本。女性はだし巻きとか、料理を1品。持ち寄りで、鍋は食べ放題ビールも飲み放題」という、いやもう実に結構なパーティらしい。それも、お客さん同士やミュージシャンの親睦が目的ということで、どうも「人がワイワイ楽しくやってること」がお好きみたいなんですね。

お酒は各種モルトウイスキーの他、ベルギービールやワインも豊富。フードメニューも、パイ生地で作るオリジナルのミックスピッツアにパスタ、和牛ステーキに冷や奴や土手焼きなんて居酒屋メニューも充実している。「あ、ここの料理はぜったいおいしいはず」と思ったのは、取材時に厨房から聞こえてきた音。
クリスさんと一緒にワイワイ話している背後から聞こえてきた、ショキ、ショキ、ショキ…。
『小豆とぎ』ではありません。包丁を研ぐ音だったんです。
「いやあ、儲からへんから、包丁持って銀行にでも押し入らせようかと思て」
そんなアホな(笑)。でも、そんなお店の料理がおいしくないはずはないですよ。

RUGTIME大阪はなんと年中無休。夕方5時から深夜3時まで! 年末のカウントダウンからそのまま元旦の営業につながったりしてるわけで(笑)。「いやもう、エラいでっせ」と苦笑する仲さんだけど、ジャズ好きには実にありがたい話だ。
ふらっといつでも、気の向いたときに。
ジャズが聴きたくなったら、ぜひお気軽に。三ツ寺に行ってみってら?(ああ、また言ってしまった)

RUG TIME OSAKA
●大阪市中央区心斎橋筋2丁目6番14号アクロスビル4F
●TEL:06-6214-5306
取材日:2009.8.03
●http://www.mmjp.or.jp/live-info/shop/rugtime.html
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