ジャズ探訪記 バックナンバー
JAZZ ON TOP 
ジャズの楽しさ「ing」
さてさて、今回からはジャズ探訪記も大阪編。
通い慣れた神戸の街をちょっと離れて、大阪は北区、いわゆる「キタ」のど真ん中なんである。
JR大阪駅を降りてヒルトンホテルを越え、桜橋の交差点を西に。最近オープンした「ブリーゼ・ブリーゼ」のはす向かい…というから、駅からカウントしても10分ほどのモンだろう。視線をやや上に向けながら歩いていくと、おお、夜目にも鮮やかなパンプスをデザインした大きなネオンサイン。これなら迷うことはない。

階段を降りていくと正面に重厚な木のドアが。どことなく上品なで洗練された雰囲気は伝わってくるものの、ここまでは、フツーのビル地下のお店という感じ。でも違ったんですねえ、ここからが。
店内は間接照明の暖かい光に満ちたとっても広い空間で、天井の高さや横の広がりはちょっと地下とは思えない感じ。窓がない(地下ですからね)にもかかわらず、なんだか爽やかな空気を感じるんでした。へええー、こりゃあステキだなあ。
絢爛豪華という作りではなく、木を多用したシンプルなモダンデザイン、それがなんとも心地よい印象で、広々としたリビングルームにいるっていう感じ…。あ、そうか、ライブが聴ける(しかも毎日!)お店ではあるんだけど、いかにも「ライブハウス」っていう感じがしないんですね。上質のホテルのラウンジにでもいるような、くつろいだ雰囲気がいっぱいなんでした。

今日のライブは、JAZZ ON TOPのハウスボーカリストでもありママでもある清水ひろみさんと、高岡正人さん(p)神田芳郎さん(b)御薬袋一男さん(ds)のピアノトリオ。
それなりにリハーサルとか打ち合わせもあったようだけど、ミュージシャン同志で行き交うのは「うんうん、わかってるよ、どんなふうにでもサポートしてあげるから好きなようにやんなはれ」的な阿吽の呼吸(笑)。
口切りは「ニューヨーク・ニューヨーク」、そこから「TAKE THE A-TRAIN」、「センチメンタル・ジャーニー」、「FLY ME TO THE MOON」、「なだそうそう」、「ROUTE66」と続く。
とてもわかりやすくて誰もが耳にしたことのある選曲、実は今日のライブタイトルは「WHAT 'S NEW?」。ジャズ初心者の人にもぜひその魅力を体験してほしい…という月イチの企画なんですね。(なんと3,000円で1ドリンク・1フード込み!しかも入れ替えナシ!)
清水さんのMCも曲の解説だけでなく、『大阪の地名を織り込んだ、大阪版「ROUTE66」もあるんです』(この日は聴けなくて残念!!)…なんて話題もあって客席からも笑いが起こる。
すっかりくつろいで和やかな演奏を聴いていると、体も心もすり切れるような激務の(←ホントはそうでもないけど)疲れもゆーたっりとほどけていくようだ。まあたまには戦闘的?攻撃的?緊張感いっぱいの演奏も楽しいんですけどね、僕が毎日聴きたいのはこんな演奏だなあ。



歌と演奏のファーストセットが終わると、続いて今日のゲストMC、FM COCOLO(76.5MHZ)唯一の、そして最高にゴキゲンなジャズ・プログラム「WORLD JAZZWAREHOUSE」のDJとしてもおなじみのクリスさんの登場。クリスさん自身大変なジャズファンで、ジャズの魅力をもっと知ってほしい!という想いは清水さんとも同じ。ってことで、「WHAT 'S NEW?」の企画につながったということらしい。
そして、今日のネタ(?)は、「J-POPをジャズにしてみよう!」。
おそらく誰でも一度は聴いたことがある、そしてひょっとすると鼻歌でうたったことがあるこの曲、松田聖子「SWEET MEMORY」を、なんとジャズ・アレンジでライブ演奏。客席からも「あー」とか「おー」とか、あ行活用ナシの歓声があがっている。聞き慣れた曲でも、こんな新鮮な感じになるんだなあ、そう思ったのは僕だけではないだろう。さらに、ホレス・シルバーの名曲「SONG FOR MY FATHER」のピアノのリフが、スティーリー・ダンのあの曲にも非情に大きな影響を与えてる(音楽好きのみなさん、おわかりですね・笑)とか、「FLY ME TO THE MOON」は最初まったく違うタイトルで売り出された…なんて楽しい話題が、クリスさんの「ええ声~」で次々と紹介され、ビギナーもベテランも、誰もが本当に心から音楽を楽しんでいるみたい。 聴いている僕自身、あらためて、あー音楽って楽しいなあ、ライブっていいなあ、なんて思ったんでした。
さほぼ毎日ジャズライブが楽しめるってことは前にも書いたけど、その他にも日曜のお昼にジャズを聴こうという企画「SUNDAY BRANCH」もあり、ジャズの魅力に触れる機会がいっぱいだ。
清水ひろみさんが講師を務めるボーカルスクールも開講されていて、その中からCDデビューするシンガーも育ってきている。
オーナーの清水真吾さんがプロデューサーするオリジナル・レーベル「JOT」の作品も着実にリリースされている。清水ひろみさんの「Wltz Tendrly」,清水莉絵さんの「GIRL TALK」、吉若えつこさんの「Something Good」、そして第13弾の北川真美さん「CLOSE YOUR EYES」が出たところだそうだ。 カウンターの向こうにはいろんなカタチのコーヒーカップとお酒のボトルが並んでいる。ここに、アタリマエのように素晴らしい音楽があるわけで、何とも魅力的。
ライブも定期的に行われていて、ジャズやクラシックの他、アカペラのバンドが人気だそうだ。

「関西弁はどこかジャズやブルースに通じている」と語る清水さん。そんな関西のノリを生かして、京阪神間のジャズの交流をもっともっと盛んにするのが夢なのだとか。そうなれば、関西ジャズシーンはさらに盛り上がり、優れたミュージシャンもたくさん育ってくることだろう。
清水さんはこの日もJAZZ ON TOP企画のニューヨーク・JAZZツアーから帰ったばかり。ライブ企画やCDリリース、このお店にはまだまだいろんな楽しい情報がいっぱいありそうな気配だなあ、しかもそれは現在進行形だ。

JJAZZ ON TOP
●大阪市北区曽根崎新地2-3-13若杉大阪駅前ビル地下一階
●TEL:06-6341-0147
取材日:2008.12.1
●http://www.jazzontop.com/
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