|
|
|
|
|
JR元町から南京町へ。神戸・元町に来ると、ほとんど無意識に歩いてしまうこのコース、はるかな青春時代から(笑)、いったい何度歩いたことだろう。ある時はワクワクする待ち合わせで、またある時には苦い思いを抱きつつ歩いたこの界隈…、おっと、つい遠い目になってしまった。
今日も南京町の広場には、人気の肉饅頭を狙う観光客や、お気に入りの中華食材を求める地元の人が入り乱れている。春節も近いとあって、いつもよりいっそう華やかな空気が溢れている。
とてもにぎやかなその広場から進路を西に、西門をくぐって左に折れる。すぐに見えてくるのがM&Mのにぎやかな看板だ。 |
|
足にも心地よい木の階段を昇ると、暖かい色の光が漏れてくる。
こんにちわーとドアを開けると…、おっと、なんだこれは!?
一瞬、ここがビルの中だってことを忘れてしまいそうになる。高い天井は、太い梁が縦横に走り、まるでペンションか東南アジアのリゾートホテルみたいなんである。これでガムランでも流れていれば、最近流行のアジアンエステみたいでもある。でもBGMはまちがいなくジャズだ。
壁に目をやると、たしかにジャズのLPジャケットがディスプレイされているし、棚にはたくさんのレコードが並んでいる。大きなスピーカーもオーディオ・システムも見える。それにしても、今までお邪魔したたくさんのジャズのお店とはあまりにイメージが違う。天井だけじゃなく、大きく明るい出窓まで並んでいるのだ。
そして、なんとなく、どことなく雰囲気が女性的で柔らかいんである。
高い天井といい、大きな窓といい、こんなにも開放的で明るいお店があっただろうか…?
えーと、ここでM&Mって、ここで間違ってないよなあ…? |
|
迎えてくれたのは、アシンメトリーのヘアスタイルもゴージャスな、オーナーの池之上緋紗子さん。
ずいぶん明るい感じのお店ですねえ。
「明るい光が好きなんです。窓がないなんて耐えられなくって(笑)」
たしかに、窓があることでとても開放的な印象になっている。天井の高さもその印象を増幅しているようだ。ふと見ると、カウンターやテーブルの上、壁面のディスプレイも、とても繊細で女性的なセンスを感じる。なんというか…、繊細で柔らかく、暖かい感じなのだ。もちろんそれは、とても心地よくて。
ジャズってなんだか難しそうで…っていうイメージは、たしか今でもたくさんあるみたいで、ジャズ喫茶やジャズクラブにはなんとなく入りにくいと思われがちなようだけど、決してそんなことはない。特にこのM&Mは、そんな人にもとても入りやすく、居心地のいいお店じゃないかなあ。
「女性一人でも、あるいはカップルでも入りやすいお店でありたいと思ってるんです」と池之上さん。 |
|
なんでも、池之上さんとジャズとの出会いはサックスの音色だったのそうで。
たまたまブルーコメッツ(おお、『ブルー・シャトー』!懐かしい名前ですねえ)をテレビで見て、そのサックスの音や姿に惹かれてしまったらしい。そうこうしているうちに、今度はアート・ペッパーの豊かで柔らかい音色や、チャーリー・パーカーのテクニックにすっかりハマってしまったということだ。
そのせいで、今でもサックスが大好きで、レコード・コレクションは二千数百枚。お店では、ボーカルものもピアノトリオものももちろんかけるけれど、サックスが入っていないものを続けてかけることはほとんどないそうだ。徹底してますね(笑)。
「最初、何から聴き始めたらいいですか?」なんて、ジャズ初心者のお客さんから質問を受けることも多いらしい。「知識ウンヌンよりも、音楽を楽しむことが大事」という池之上さん、なるほど、こんな女性なら、いろんな質問もしやすいことだろう。 |