音楽もステージも魅力的!女性ビッグバンド“たをやめオルケスタ”。
2008年に結成された女性ばかりのトロピカルビッグバンド“たをやめオルケスタ”。歌謡曲からスカ、ラテン、ファンクなどの要素が盛り込まれた音楽性と迫力あるサウンドはもちろん、すべてが自己プロデュースという衣装やステージング、ジャケット・デザイン、動画制作まで、見どころ聴きどころが盛りだくさん!来年で10周年を迎えるにあたって、代表である「女将」こと岡村トモ子さんにお話しをうかがいました。
たをやめオルケスタ
2008年結成、オンナばかりのトロピカルビッグバンド。18人という大所帯とはいえ、どのバンドにも負けない団結力とパッションでもって、 ポップな魂を込めたド迫力のステージを展開中。 楽曲はもちろん全曲メンバーのオリジナルアレンジ。 さらに舞台演出や衣装制作、グッズのデザイン、 YouTube動画までもメンバーの手で プロデュースしているこだわりぶり。2013年に1st Full Album「緞帳プレリュード」を発売。2016年3月には古内東子「Toko Furuuchi with 10 legends」に全曲参加し、奥田民生、鈴木雅之、藤井フミヤ、TEE、斉藤和義、大澤誉志幸、前川清、堂珍嘉邦らのバックバンドを務める。 2016年7月、初のライブ盤「タヲヤメライブ」をリリース、12月ムーンライダーズのトリビュート「BRIGHT YOUNG MOONLIT KNIGHTS -We Can't Live Without a Rose- MOONRIDERS TRIBUTE ALBUM」に参加。2017年8月に「MAJOR DEBUT」発売。
「俺もビッグバンド始めるからお前も作れ」。師匠の言葉が“たをやめオルケスタ”結成のきっかけ。
── レギュラーで活動されてる女性ビッグバンドって本当に珍しいと思うのですが、まずは「たをやめオルケスタ」を作った経緯を教えてください。
岡村「そうですね、2008年まで私はずっとスカバンドを組んでたんですよ。その時、師匠である“オーサカ=モノレール”の向井志門さんにサックスを教えてもらっていました。ビッグバンドをやってみたいなとずっと思っていたので、師匠に相談してたんですね。ラテンのビッグバンドでどこか欠員はないだろうかと。でも、そもそもラテン系のビッグバンドの数自体が少ないし、あってもベテランが多く、欠員が出ないと言われてしまって。」
── 確かにラテンのビッグバンドは数に限りがありますしね。
岡村「そうなんです。だから難しいのかなと思ってたら、ある日突然師匠が『ビッグバンドを作る』って言い出したんです。師匠と言っても、私と師匠は10個も年齢離れていないので、当然それなら私も入れてもらえるんじゃないかなと思うじゃないですか。そしたら『俺もビッグバンド始めるから、お前もビッグバンドを作れ』と言われました(笑)。2008年の8月だったんですが、その話の最中に『じゃあ今、今年の12月に赤坂のライブハウスに予約入れるから、その日に2バンドの旗揚げ公演を一緒にやろう!』って言われて、突然作ることになったのがきっかけですね。」
── すごいきっかけですね。
岡村「そうですよね。元々“原信夫とシャープ・アンド・フラッツ”とか“東京キューバン・ボーイズ”とかが好きでして。当時、昭和ジャズのリバイバルもちょっと流行っていたのもあって。その話をしていた時に、たまたま本で原信夫さんが24歳のときに“シャープ・アンド・フラッツ”を作った話を読みました。ちょうどそのとき私も24歳だったんですよ。それでこれはもう、師匠が話を持ってきてくれたのも何かの縁なんだなと思って。でもやりたいとは思っていましたけど、まさか自分で作るとは思っていませんでしたね。」
── 女性だけでっていうのは最初からコンセプトにあったんですか?
岡村「最初から女性だけということは考えていませんでした。最初に声をかけたのがたまたま女子二人だったので。それまで自分が紅一点のバンドしかやったことがなかったので、ちょっとガールズバンドに対して少し偏見もありましたし。でも、そのとき最初に声をかけた二人は、自分にとっても同志と呼べるような存在だったので、探せば18人くらいそういうオンナに会えるのかもと思ったのと、じゃあガールズバンドにしちゃえと。実際は、バリトンやトロンボーンは男性でも少ないので、探すのは大変でした。」
「サックスで手に入れたお金だけ受け取ろう」。音楽をやるために一念発起。
── 岡村さんご自身がサックスを始められたのは、部活動とかがきっかけなのですか?
岡村「そうですね。元々は中学の吹奏楽部です。2つ上の姉がいて、私すごくシスコンだったので、小学校のときはお姉ちゃんが編み物クラブだったから私も編み物クラブで、中学で姉が吹奏楽部でサックスを始めたので、『私も!』ということで。アルト・サックスが家に2本ありましたね。」
── スカバンドを組んでたということは、当時ビッグバンドとかは通らなかったんですよね。
岡村「全然通らなかったですね。大学のときに上京してきたんですが、当時は洋服が好きで、ライブをやる傍らファッションショーとかもやってました。でも、就職活動をするにあたって、服飾業界に就職するのは違和感が出てきて、このまま就職すると好きだったものが嫌いになりそうだなと思って、直前で就活辞めちゃったんですよ。それでバイトしていたところで事務職の契約社員として働いてたんですけど、バンドも中途半端になるし、練習もちゃんとできないしで、このまま仕事を続けてもと思って。それでその仕事を半年で辞めて、そのときに『今後はサックスで手に入れたお金しか1円も受け取らないぞ!』と何故か決めました。」
── カッコイイですけど、それってすごく大変なことですよね?
岡村「本当に自分でも無謀だったなと思うんですけど、若かったので(笑)。ツテとかがあったわけでもなかったので、自動的に超貧乏になりましたね(笑)。それで翌日からサックスが吹ける仕事を探して、歌舞伎町のジャズクラブに楽器を持って行って、毎晩サックスを吹かせてくれってお願いしたんです。でもそのお店ピアノ専門だったんですよね(笑)。だから断られたんですけど、やる気だけはあったので、とにかく一度聴いて欲しいと、オーナーの前でサックスを吹いて、なんでもやるので雇ってくださいってお願いしたら、雇ってくれたんですよ。そこから2年間、ずっと歌舞伎町で吹いてましたね」
── 行動力が素晴らしいですね。
岡村「音楽好きのお客さんが多かったので、アレやれコレやれ、こんなことも知らないのか、とかも言われましたが、ずいぶん成長させてもらったと思います。元々スカが好きでサックス吹いてたので、歌舞伎町でジャズを知ったというか。勉強もしてましたけど、やっぱり直接誰かにリクエストされて、その人の前で演奏するということはなかなかないことなのでいい経験になりました。たくさん曲を覚えましたし。契約社員を辞めるときに、両親を説得する材料として『2年間大学院に行ったと思ってほしい。その間に音楽の仕事が成り立たなかったら諦める』という約束をしたのもあって、ライブ活動のほかにレッスンを始めて、レコーディングのサポートなどもやり始めました。それで生計が立つようになった頃に“たをやめオルケスタ”を結成して。最初は18人もいるし、本当に手探りな感じだったのですが、いろいろ模索して、なんとか自分たちで運営できるようになりました。」
「50歳60歳になるまで続けていきたい」。岡村さんにとって“たをやめオルケスタ”とは。
── 8月18日に5枚目のフルアルバム「MAJOR DEBUT」が発売されました。楽曲が素敵なのはもちろんですけど、“たをやめオルケスタ”は衣装や映像もすごく凝ってていいですよね。
岡村「衣装も自前で制作しています。5枚目のアルバムなので、今回で5着目。18人いるので予備も含めると毎回20着で、これまで合計100着作ってきました。」
── デザインだけでなくて実際に作るんですか!
岡村「そうですよ。布から全部買ってきて…やばいでしょう(笑)。デザインからボタン付けまで全部やります。最初3枚目までは全部自分でやってたんですけど、元々服飾の仕事をしていたトロンボーンの子が加入してからは二人体制ですね。楽しいからできるけど、本当に大変ですよね(笑)」
── アルバム一枚作るごとに、曲作りから衣装作りまで全部すべてというのはすごいですね。
岡村「メンバーもお客さんも楽しみにしてくれてるので、やりがいはありますけどね。ビジュアルは特に、大切にしています。昔のチャーリー・パーカーのジャケットとかって超かわいいしオシャレですよね。自分の中で『上手くて見た目もカッコいい』のが最強だと思ってるので、衣装もそうだし、見せ方やステージングも飽きないようなショーにしたいなと思っていて、そこにはすごくこだわっていますね」
── 今回、クラウドファンディングを活用して、大阪のツアーをされたそうで。
岡村「そうなんです。昨年は大阪で営業ライブのお仕事がありまして、交通費を営業先が出してくれてたので延泊してライブをしたんです。それで、今年も大阪でライブがしたいけどどうやって行こうかなって思ったときにクラウドファンディングをやってみようと」
── やはり18人も人数がいると、移動だけでも大変ですよね。
岡村「そうです。ライブの売上だけでは遠征は苦しいところです。でも遠征先でライブするのって、魔力があるというか、すごく楽しいんです。だからみんなも遠征したがるんですよね。今後どうなるか分からないけど、今回クラウドファンディングを活用してチャレンジしてみようということになって。半年かけてどういう返礼品が必要なのかとかいろいろ話し合って、やる前は超弱気でしたが、結果すごいたくさんの方に支援をいただいて、無事みんなで行けることになったので安心しました。」
── 最後になりますが、来年で10年目を迎える“たをやめオルケスタ”ですが、岡村さんにとってビッグバンドの魅力とはなんでしょうか。
岡村「やっぱり生音バンドの究極だと思うんです、ビッグバンドって。打ち込みは確かに上手いし、安いし絶対間違えないんですけど、やっぱり生音って心豊かになるじゃないですか。自分も管楽器という生音楽器だし、もっと生音バンドの曲が街で流れてたらいいなあって思うんですよね。あとはやっぱり女性ミュージシャンのアツさみたいなものを、皆さんにもっと見てもらいたいなとも思います。女の子18人っていうとキャピキャピしてるように見えるんですけど、やっぱりすごく音楽には真剣なので。今はずっと続けていけたらいいなと思ってます」
── ライフワーク的な存在なんですね。
岡村「一度解散の危機があったというか、最初に『CDの作品 三部作を作る』という目標を掲げてみんなを引っ張ってきたので、3枚目の完成間近にどうしようってなったんですよね。私も次どうやって皆に付いてきてもらおうって思ってたし、皆もこれで解散なのかなって思ってるのをお互い切り出せなくて。でも、話し合いで『続けたいなら一人で悩まず、やりたいならどうしようか決めよう』って言ってくれたのがすごく嬉しくて。やると決めたら、いろんな展開もどんどん見えてきたので、今は本当に50歳60歳になるまで続けていけたらいいなと思ってます。今、すごい結婚ラッシュと出産ラッシュなんですけど、きっとこれは前例がないと思うんですけど、うちは産休育休が取れるバンドなんですよ。音楽に限らず女性はみんなそうだと思うんですけど、そういうタイミングで好きなことを辞めてしまう人も多いので。続けたいなら戻ってこれる場所でありたいなと思いますよね。」
[ たをやめオルケスタ ]
- MEMBER
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- 左上より Vocal 秀子、A.sax 岡村トモ子、A.sax 沼尾木綿香、T.sax 加藤順子、T.sax むーみん、Tp 長谷川素子、Tp 渡邊優、Tp SAKKO、Tp 星野麻里奈、B.sax 七海かおり、Tb せきりか、Tb 大谷恵莉香、B.Tb 橋爪美季、Piano 大西まみ、Bass 愛沢まり、Drums 金澤沙織
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[ リリース ]
- たをやめオルケスタ/MAJOR DEBUT
- 女子18人のビッグバンド「たをやめオルケスタ」の5th Album「MAJOR DEBUT」がついに発売! ゲストにギタリスト菅原 潤子を迎えて収録したリードトラック「メジャーデビュー」はグルーヴィなファンクテイストの一曲。またアラビアンテイストな「カルダモン砂漠」や「タヲヤメンナイト」、カリプソや和テイストなどを詰め込んだ「妄想・ツーリスト」などインスト曲も楽しい!またElla Jane Fitzgerald「When I get low, I get high」、ムーンライダーズ「あの娘のラブレター」、美空ひばり「真赤な太陽」、ヴェルディ「怒りの日」、Bob Marley「NICE TIME」などのカバー曲も充実。「バラック酒場」は結成当初のオリジナル曲で、今回初めてスタジオレコーディングしたもの。
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- 1. タヲヤメンナイト
2. メジャーデビュー
3. When I get low, I get high
4. カルダモン砂漠
5. あの娘のラブレター
6. 妄想・ツーリスト
7. 真赤な太陽
8. バラック酒場
9. NICE TIME
10. 怒りの日
TOWER RECORDS/Amazon/HMV