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ジャズピープル

若者とベテランをつなぐ結節点 ジャズサックス奏者・佐藤恭子

バークリー音大を卒業後、ご自身のバンドである佐藤恭子リトルオーケストラや映像作品への参加など多彩な活動を展開している佐藤恭子さん。音楽に向き合う姿勢はとても真摯で情熱的。自身の活動以外にも高校生や大学生へのクリニックを積極的に行うなど、未来のジャズ界を担う子供たちへもサポートを行なっています。佐藤さんの魅力は、音楽やその素養だけでなく、明るく気さくな人柄で周りの人々を惹きつけるところも。そんな佐藤さんにこれまでのご経験や、2017年10月22日 出身である姫路にほど近い西播磨でのイベント(ゲストとして参加)についてお話をお伺いしました。

person

ジャズサックス奏者・佐藤恭子

兵庫県姫路市出身。横浜国立大学在学中にアルトサックスとジャズに出会う。卒業後、バークリー音大とロータリー財団から奨学金のサポートを受け、同大学に入学。ジャズ作曲科を専攻し、作編曲家、演奏家として様々な賞を受賞。卒業後、ニューヨーク及びボストンで活動。東京に拠点を移してからはジャンルにとらわれず幅広く活躍し、2015年には自身の主宰する「佐藤恭子リトルオーケストラ」名義で2枚のアルバムをリリース。また、映像作品、企業PVやCMの音楽制作なども行なっている。2017年春には、Jill-Decoy Association のギタリストクボタ浩之をco-producerに向かえ、古き良き次代のジャズから、ジョン・レノンやスティービー・ワンダーの曲まで取り上げたカバーアルバム「Love Songs」をリリース。2017年夏より、江戸川区の公共事業「江戸川ジャズアカデミー」の音楽監督に就任。中高生の選抜メンバーと本だ雅人ビッグバンド、渡辺香津美トリオの夢の競演計画に楽曲嘱託、指導者としても活躍が期待される。

interview

結成のきっかけはリハーサルバンド。佐藤恭子リトルオーケストラ。



── 佐藤さんはいつから楽器を始められたのですか?

佐藤「サックスを始めたのは大学からなんです。始めたのは遅い方かもしれませんね。吹奏楽から楽器を始める方も多いと思います。子供のころに近所の音楽スクールに少し通った程度で、中学・高校は音楽ではなく、スポーツ少女でした。」

── 大学からというのは珍しいですね。それが一体サックスを始めることになったのでしょうか?

佐藤「子供のころに叔母が宝塚歌劇が好きで、よく連れて行ってもらいました。私もその影響で宝塚歌劇が好きになりました。大学に入り、サークルに入ろうと学校内を散策していたところ、子供のころに宝塚歌劇で聞いたジャズのスタンダードナンバーが聞こえてきたんです。その音に釣られて、ジャズ研のドアを叩いたことがジャズとの出会いです。サックスを始めたきっかけは、当時の先輩が部室に置きっぱなしにして使っていないサックスがあったという理由だけで、私自身も楽器は何でもよかったんです(笑)。ただ、その時サックスを始めた結果、今に至っています」

── バークリーに行かれたとのことですが?

佐藤「バークリーから授業料の奨学金、ロータリー財団から生活費をサポートして頂き、裕福ではなかったですが、楽しい時間を過ごすことが出来ました。姫路中央ロータリークラブさんが、世界に3万を超えるロータリークラブのなかで初めてクラブ独自での奨学金制度を創設し、過去9人海外に奨学生を派遣されているのですが、その第一号に選んでいただきました。」

── バークリーを卒業されてからはすぐに日本に戻られたのですか?

佐藤「1年就労ビザが出たので、1年はニューヨークに居ました。その後は活動拠点を東京に移して今に至ります。日本に戻ってからは小編成でのバンド活動やコンピュータの打ち込みを使った映像音楽などの制作をしていまいた。その時その時にいただいた仕事を楽しみながら消化していましたね。」

── ジャズにこだわって仕事をしているわけではないのですね。他にも多彩な活動を展開されていますね。

佐藤「そうですね。ペコロスの母に会いに行くという映画でジャズが流れる部分や、辻仁成さんのフランスの街並みをとりためた映像を発売されているのですが、その音楽も担当しました。その時はリトルオーケストラやコンボの音楽を使いました。」

── ところでリトルオーケストラの結成はいつ頃なのでしょうか?

佐藤「自然にできたバンドなのです。バークリーの学生時代に課題で曲を提出するのに、音源と譜面が必要で。それで、お友達に頼んでリハーサルバンドを作っていたんです。それが評判を呼んで、学校行事とかで使っていただくうちにライブ活動をしたり、活動の幅が広がって行きました。最初、リトルジャズオーケストラで活動していたのですが、ジャズっぽくない曲もやるようになったので、今は、リトルオーケストラという名前にしています。ですので結成はボストンだったのですが、東京に戻って来た時に、後輩のミュージシャンたちが”このバンドやりたいね“となって、再結成することになりました。」

── 当初とはメンバーはだいぶ変わっているのですか?

佐藤「そうですね。最初、外国人での編成でしたが、今は全員日本人ですね。」

── ご自身の活動としては他にどんなことをされているのですか?

佐藤4月にカバーアルバムを出しました。それこそ大学生や某TV局での出演がきっかけでヨーロッパのラジオ局で流してもらうなどリトルオーケストラは評判はいいのですが、もっと広く色々な方にジャズを聴いて欲しくて。それがカバーアルバムを作成するきっかけですね。ただ、カバーするだけでは面白くないので、少し最近のジャズやコンテンポラリーなアレンジを加えています。いろんな世代の人が聴いても気に入ってもらえるんじゃないかと思っています。ですので、東京で1回/月でリリースライブをやっています。その間リトルオーケストラはお休みにしていました。今は10月の西播磨のこのイベントに向けてリトルオーケストラの活動の準備をしています。」

未来のジャズを支える子供たちに。子どもとベテランをつなぐ架け橋。


── 東京の江戸川区で中高生のビッグバンドを指導されていますが、このあたりのお話をお聞かせいただけますか?

佐藤「去年、江戸川区のイベントでデビッド・マシューズさんと阿川泰子さんが、私たちの世代の第一線で活躍するプレイヤーを集めたビッグバンドと共演する機会がありまして。その時楽曲の提供もしていました。そこで地元にジャズを根付かせるため、子供たちが何か参加できるようなことをということをという要望があり、子供のビッグバンドを立ち上げることになったそうです。2-3年前からその構想はあったそうです。イベントにも関係があるし、子供たちとベテランの年代をつなぐ私たちに白羽の矢が立って、音楽監督として関わらせていただくようになりました。私も海外で教育を受けましたので、後進の指導も意識的に取り組んでいますね。教育を通じて子供たちにも楽しく感じてもらえたり、吹奏楽のようにもっと身近に広まればいいなと思います。なので江戸川区への取り組みに賛同しています。」

── 子どものビッグバンドって楽しそうでいいですよね?

佐藤「楽しいですけど、大変ですよね(笑)。一生懸命やっている姿はいいですよね。活動期間が決まっていて、本番までに計10回の指導を行っています。6月に始まって、8月は吹奏楽のコンクールと重なるので、お休みになりますが。」

── どんな子供たちが参加しているのですか?

佐藤「吹奏楽をやっていて、ジャズをやりたいという子供や、軽音楽部でドラムやベースをやっていてジャズをやりたいという子供が多いですね。プロデューサーは元山野ビッグバンドジャズコンテストの事務局をされていた方です。」

── 神戸にはSTUDENT JAZZ FESTIVALというイベントがありますが、ご存知ですか?

佐藤「知っていますよ。最近の子供たちの演奏はクオリティが高いですよね。数年前、渋谷公会堂でタイの子供たちのビッグバンドを招聘するイベントがあって。タイからの留学生で東京芸大で現代音楽を専攻しながら私のところにジャズの音楽理論と作編曲を習いに来ていたお弟子さんが、母国に帰って大学で教鞭をとりつつ子供達のビッグバンドに関わっていて通訳兼ねて子供達と来日したので、招待いただいて観てきたのですが、すごく上手で驚きました。ジャズで国際交流のようなことが広がればいいなと思います。」

── アジアでビッグバンド活動って盛んなのでしょうか。

佐藤「タイは国王がジャズが大好きで、自分の書いた曲をやってもらったりするみたいです。そのときは、ボーカル3人、弦楽器も入って、管楽器がいるビッグバンドの編成になっていました。」

── ところで神戸の印象は」いかがですか?

佐藤「叔母が三宮に住んでいたので、三宮にはよく行きましたよ。OPA、元町、中華街など思い出がたくさんありますね。神戸はジャズの街とお聞きしますが、より身近にたくさんの方々に親しんでもらえたらいいなとおもいます。」

地元での凱旋コンサート。西播磨に音楽が根付くきっかけとなるイベントに。

── 今回出演されるイベントについてお聞きします。姫路のご出身ということで、故郷での凱旋ライブとなりますね。

佐藤「今回このようなお話をいただき、ありがたいお話です。出身は姫路ですが、学生は関東で過ごし、バークリー後も関東で活動していますので、こちらで演奏する機会は少なかったので大変うれしいです。過去に遡るとSwing Jazz Cruiseの第1回のゲストにリトルオーケストラで呼んでいただいたことがあります。あと、今回のイベントの前日に西神でイベントもやります。三宮にある茶房VOICEさんが主体となって開催するイベントで、海外のアーティストを中心に開催していたそうです。しばらく開催されていなかったのですが、久しぶりに復活となり、そこにも呼んでいただきました。」

── テクノジャズでは佐藤恭子リトルオーケストラでご出演されますが、見どころなどを教えていただけますか?

佐藤「神戸までは来たことはありますが、地元でのライブは初めてです。西播磨での音楽が根付くきっかけになるイベントになってもらいたいという想いがあります。姫路や震災にちなんだ曲を演奏しつつ、皆さん楽しんでいただけるようなプログラムを考えています。おじいちゃんやおばあちゃんまで年代問わず楽しめるようにしたいと思っています。それだけでなく、アメリカの東海岸の流れを汲むような現代進行形なジャズなんかもできたらいいなと思っています。最近は動画サイトなどが発達しているので、生演奏に触れる人が少なくなっているのではないかと思うので、是非、直に響く音や息遣いを観て、聴いてもらいたいですね。それで皆さんが元気になってくれると嬉しいです。近代的な建物が並ぶ場所ではありますが、自然豊か。是非、神戸や大阪からもドライブがてらにお越しになって楽しんでもらいたいです。」

── ジャズは生で観て、聴いて、ライブ感を楽しんでもらうことが醍醐味ですよね。イベントが成功することを祈っております。今日はお忙しい中ありがとうございました。

information

[ RECCOMEND MOVIE ]

Album “Everlasting”より、組曲 Metamorphose ダイジェスト

LOVE SONGS PV



[ ライブ情報 ]佐藤恭子リトルオーケストラ関西2DAYS

[神戸]西神NTジャズ倶楽部ライブ
日時:2017年10月21日(土) 開場16:00 開演17:00
場所:プレンティ・ホール 西神プレンティ1番館4F
チケット:前売2,000円/当日2,100円 全席自由席
問合せ:西神NTジャズ倶楽部事務局 TEL 090-8530-3240(清水)/090-8796-7414(白坂) 10:00~17:00



第1回 テクノ・ジャズ・フェスティバル 播磨科学公園都市まちびらき20周年
日時:2017年10月22日(日) 開場14:30 開演15:00
場所:兵庫県立先端科学技術支援センター センター棟・大ホール(上郡町光都3丁目1-1)
チケット:3,000円 全席指定席
出演:佐藤恭子リトルオーケストラ、高免信喜トリオ
問合せ:テクノジャズフェスFacebook



[ リリース ]

KYOKO SATOH 佐藤恭子/Love Songs ラヴ・ソングス
JiLL-Decoy associationのkubota、注目の若手ギタリスト井上銘が参加。歌い継がれてきた旋律を新たに紡ぎ出す。佐藤恭子の古今スタンダード新解釈!自身が率いる10ピース・バンド「リトル・オーケストラ」ではコンポーザーとして積極的にオリジナル作品を発表している佐藤恭子が、パーカー、モンク、デスモンド、ジャコの作品から、スティービー・ワンダーやジョン・レノンの曲まで、すべてカバー曲で構成。原曲のメロディを大事にしつつ、ジルデコのkubota、俊英・井上銘の2本のギター、そして成田祐一(p)、西嶋 徹(b)、大村 亘(ds)のトリオとともに、セクステット、クインテット、トリオそしてデュオと、変幻自在に形を変え、リズムとハーモニーを絡ませていく。現代に提示するスタンダード集として、“愛する歌たち”で綴ったソング・ブック。
1. Softly as in a Morning Sunrise
2. Send One Your Love
3. Stardust
4. Love Theme from Spartacus
5. Take Five
6. On the Sunny Side of the Street
7. Evidence
8. Liberty City
9. Summertime
10. Great Indoors
11. Confirmation
12. Imagine
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