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ジャズピープル

優美で端正なサウンドで
ワン&オンリーの世界を築く

ジャズピアニスト、コンポーザー、アレンジャーとして第一線で活動を続ける木住野佳子さん。エレガントな風貌からは想像できないパワフルなプレイや繊細で華やかな楽曲は洗練された独特の魅力を放ちます。その活動の軌跡とニューアルバムやコンサートなど、最新情報についてお話をうかがいました。

person

木住野佳子[作・編曲家/ピアニスト]

東京都出身。桐朋学園大学音楽科卒業。在学中はヤマハのポピュラー系コンテストで「ベストキーボード賞」受賞。’95年、名門GRPレコードより日本人初となるCD「fairy tale」でデビュー。スウィングジャーナル誌ゴールドディスク4回受賞。日本のトップアーティストとの共演はもちろん、海外での演奏も数多く、また映画、CM等への楽曲提供など、その活動は多彩。

interview

『nuage〜ニュアージュ』をリリース

── 12月にご自身20枚目となるアルバム『nuage〜ニュアージュ』をリリースされます。5年ぶりの新作、ということですが、今回はどんなコンセプトで制作されたのでしょうか。

ここ数年、欧州各国を旅し、そのときに受けた印象や感じたことなどを新たに書き下ろしました。またライブではよく演奏していたものの、未収録だったカバー曲3曲をプラスし、今まで以上にクラシカルでヨーロピアンな香り漂うアルバムに仕上ったのでは、と思っています。

── ヨーロッパにはお仕事で行かれたのでしょうか。

3年前、デビュー20周年を迎えた際に、スウェーデンのボーヒュスレーン・ビッグバンドのゲストとして出演させて頂いたことがヨーロッパを旅するきっかけになったと思います。この時は演奏だけではなく、ビッグバンドのアレンジにも初挑戦することになり、大変な勉強をさせて頂きました。その後、プライベートで各地へ足を運ぶようになりましたが、現地の友人とライブをするなど、なにかしら演奏する機会に恵まれたのです。私はベーゼンドルファというピアノのオフィシャル・アーティストになっていまして、昨年はメーカーさんのご依頼で『Piano city milano』(ミラノ市内のあちこちでピアノコンサートが開催される恒例のフェスティバル)に出演したり、その帰りに立ち寄ったパリでは、知人のご紹介で、大使館で演奏させて頂くことになったり。結果的に仕事につながっていったということでしょうか。

── やはりそうした普段とは違う環境の中での体験は、アーティストにとって欠かせない刺激なのですね。

そうですね。私の場合、曲づくりに関しては「天から降りてくる」みたいなことはごくまれにしかありません。旅の刺激から曲想が浮かんでくることは確かにあります。ある程度日常生活から離れたところに自分を追い込むことが必要なのかもしれませんね。現地にいるときは、だいたいスタジオを借りて数時間過ごします。そこで生まれたアイデアを書き留めたり、録音したりして日本に持ち帰りました。そうして出来上がったものが今回のアルバム、といっていいかもしれません。

10代から大好きだった仲間との演奏と曲づくり

── 木住野さんはどのようなきっかけで音楽の世界で活動されるようになったのでしょう。

中学時代からバンド活動に夢中でした。ビートルズのコピーバンドから当時全盛期のフュージョン、ロックやポップスを演奏し、自分で作曲もしていました。
ピアノは3歳から習っていましたが、特に音楽一家に育った、という訳ではありません。大学はピアノ科ではなく、実は声楽科の出身。当時、受験指導をしてくださった先生から強く勧められ、そのときも母と「声楽科ってどんな勉強するんだろうね」なんて呑気に話していたくらい(笑)。無事に入学・卒業はしましたが、作曲やバンドで音楽することが好きな私にとって声楽は向いているとはいえませんでした。在学中はバンドを掛け持ちし、コンテストに出場したり、またホテルのラウンジでピアノを弾くアルバイトも経験しました。必要に迫られてジャズを勉強し始めたのもこの頃です。バイトで得たお金をプロの共演者に渡して一緒に演奏して頂き、あちこちのセッションに参加して実践で学んでいきました。卒業後も自身名義のバンドをつくって活動を継続、それを見ていてくださった方から声がかかり、私自身が大ファンだったGRPレーベルからアルバムデビューしたのは’95年のことです。素晴らしいアーティストに支えられた夢のような時間でした。

── 現在に至るまで多彩な活躍を続けていらっしゃる木住野さんですが、ご自身の中では「ジャズ」というカテゴリーは存在するのでしょうか。

カテゴリーというのはレコード屋さんの便宜上のためのものであって、アーティストはみなジャンルにはこだわっていないのではないでしょうか。私の場合は曲をつくりたい、というのが最初にありましたから、自分の世界を追求していければそれでいいかな、と。ただジャズやジャズクラブのイメージが昔に比べて洗練され、おしゃれになってきたことはとても素敵なことだと思います。

神戸の誇る歴史的洋館でコンサートが実現

── 先月、先ほどお話に上がったボーヒュスレーン・ビッグバンドのツアーでは、素晴らしい演奏を聴かせていただきました。さらに11月25日には神戸・旧グッゲンハイム邸で『木住野佳子トリオ “Winter Tour 2018″』が開催されます。旧グッゲンハイム邸といえば1909年に建てられた神戸を代表する洋館のひとつ。こちらで演奏されたことはおありですか。

神戸にはツアーでたびたび訪れているのですが、旧グッゲンハイム邸で演奏させていただくのは初めてなんです。本当に美しい建物ですね。ホールでの演奏ともまた違った、サロンのような瀟洒な雰囲気のなかでのコンサートは、今からワクワクしています。

── 今回のコンサートは弊社DENSO TENのスピーカー‘ECLIPSE’(イクリプス)とのコラボ企画ですが、木住野さんは以前からこのスピーカーを愛用されていらっしゃいます。ありがとうございます。どんなところを気にいっていただけたのでしょうか。

なにより楽器とほとんど同じ音質で再現してくれる素晴らしい再生力ですね。私はピアノのモニターとして使わせていただいく、というちょっと贅沢なことをしているのですが、モニタースピーカーというのは演奏者にとっては意外にストレスになることが多いのです。その点、とても助かっています。“目玉おやじ”って呼んでますが(笑)。スピーカーの台が30キロを超えるため、簡単に持ち運べないところがネックでしたが、今回のコンサートでは、久しぶりに‘ECLIPSE’をステージに立てていただき演奏します。
歴史ある美しい洋館で、限りなく生音に近い環境で聴いていただけるという、またとない貴重な機会かと思います。神戸のみなさまにお目にかかれることを楽しみにしております。

information

[ Live Information ]

YOSHIKO KISHINO WINTER TOUR 2018/木住野佳子TRIO
日時:2018年11月25日(日) 15:30開場 16:00開演
会場:旧グッゲンハイム邸
JR山陽本線 塩屋駅/山陽電鉄 山陽塩屋駅より徒歩5分
料金:6,000円
予約:ムジカ アルコ・イリス 080-3853-9363

[ Release ]2018.12.12 ON-SALE

nuage〜ニュアージュ〜
01. nuage
02. Kissing Piano
03. Azur
04. la costa
05. ニュー・シネマ・パラダイス~愛のテーマ
06. Somewhere Before
07. Ocean
08. My Favorite Things
09. Dance with Dinosau
10. Only Trust Your Heart
11. Akari

※ all songs arranged by Yoshiko Kishino
木住野佳子(p) 竹中俊二(gt) 早川哲也(b) 加納樹麻(ds) 岡部洋一(per)