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ジャズピープル

ありのままの声を。ヴォーカリスト谷山和恵。

今回、インタビューさせていただいたのは谷山和恵さん。関西で活躍するヴォーカリストで、ジャズヴォーカリストと弾き語りもするボサノヴァヴォーカリストという二つの顔をお持ちです。歌手になろうと意気込んでやってきたわけでもなく、気が付いたら唄っていたとおっしゃるように、好きなことを続けて来た結果、今に至るそうです。2018年6月に初めてアルバムをリリースされ、これからの活躍がますます楽しみです。今回の作品では自分のありのままの声を聴いてほしいとこだわり溢れる作品となっています。アルバム制作に関する話を中心にこれまでのご経験など幅広くお話をお聞きしました。

person

Vocal / Guitar 谷山和恵 Kazue Taniyama

豊かな倍音を含んだ個性的な声を持つ歌手。神戸生まれの大阪育ち。幼少の頃から歌が好きで地元の少年少女合唱団に所属。7歳からピアノを習う。高校生の頃に初めてバンドを組み、学内外でライブする。大学時代はオリジナル中心のポップスバンドにて活動。英語教員免許取得し卒業後は化粧品会社に就職。バンド活動しなくなったものの音楽はいつもそばに。数年後退職し、思い切ってニューヨークへ1人旅。その後。。
2000年ジャズシンガーとして活動を始め、
2004年より専門学校にてボイストレーナーを務める。
2008年ビルボードライブ大阪に出演。
同年開催の大型野外イベントでは出演の傍ら、企画・運営・司会までをもこなし好評を得る。 レパートリーはジャズスタンダードからボサノバやサンバと言ったブラジル音楽などと幅広く、ギター弾き語りによるボサノバライブも好評である。
2016年6月より心斎橋COMODO『Bossa Tuesday』第1第3火曜日レギュラー出演のほか、京阪神のレストラン・バー・ライブハウスやイベントなどにて活躍中。 2018年6月ジャズスタンダードを中心にボサノバも収録したアルバム『ギターと歌とフルートと。』リリース。

interview

気がついたら唄っていた。好きなことの引力。



── 谷山さんのご出身は神戸と聞きました。

谷山「出身は神戸で、育ちは大阪です。神戸は幼いころに少し住んでいただけですが、今でも神戸は好きな街です。ハーバーランドの雰囲気が好きで、時々遊びに行きます。自分が生まれた街で、親近感があります。あと街全体がオシャレですね。」

── ヴォーカルを始めたきっかけは?

谷山「小学校のころから歌を唄うのが好きで、地元の合唱団に所属していました。人前で唄うのは気持ちいいなと思っていました。バンドスタイルで唄い出したのは高校生の頃、軽音部でドリームズ・カム・トゥルーのコピーバンドをやっていました。」

── もともとはポップス中心ですか。

谷山「そうですね。あとは、学校外でもバンドをやっていましたが、それもオリジナルのポップスを書いたり、ビートルズやドゥービーブラザーズなど洋楽を取り上げたりしていました。」

── ジャズを唄うきっかけを教えてください。

谷山「高校の時のバンドメンバーのお父さんが、"あの子にジャズを唄わせたら合うんじゃないか"と言われまして。それでレコードを貸していただきました。最初、かっこいいと思ったのですが、難しいというのと自分のやっている音楽に一致しなくて。また、それ以外にもベースを弾いていた子の師匠も当時のバンドの音源を聞いた時、同じ感想を持たれて、ジャズを唄わせた方がいいと。そのバンドで1曲だけ、Helen Merrillが唄ったYou'd Be So Nice To Come Home Toをポップススタイルでコピーして唄ったことがありました。それから、そのバンドが解散。大学でバンドを結成し、就職してバンドが解散。就職後、高校の時にバンドを組んでいたドラムの方が"俺はジャズを叩きたい。ジャムセッションというのがあるんだけど、一緒について来てくれないか"と言われました。"リハーサルもしないで歌を唄うとか、やったことない"と返すと"1曲(You'd Be So Nice To Come Home To)だけあるから大丈夫"と言われて。それでついて行ったのが、この世界に入るきっかけですね。」

── ジャムセッションに参加されて、ジャズにはまったのですね。

谷山「ジャムセッションに行くと、"何の曲唄うの?"と聞かれて、"You'd Be So Nice To Come Home Toをお願いします。"と伝えると"キーは何?”と聞かれ、何も知らなかったので、"キーって何ですか?"と。そのくらい何も知らなくて。ただその時、とても気持ちよく唄えたのを覚えています。そこからジャズに興味がわきました。レコードを借りて聴いたりするようになりましたね。」

── ジャズは誰かに教わったわけではないのですか?

谷山「特に誰かに教わるというようなことはなかったですね。」

── そこから今にいたるわけですか?

谷山「そうです。歌手になるぞ!と意気込んでやってきたわけでもなく、気がついたら唄っていたという感じですもちろん仕事をしながら唄っていたり、会社を辞めてアルバイトしながら唄っていたり。気が付くとアルバイトも辞めて、唄とレッスンで生活するようになっています。本当に気が付いたらですね。」

── お話をお聞きしていると素敵な人生ですね。

谷山「どうでしょうかね。好きなことに引力があったんでしょうね。」

── 印象に残っているステージってありますか。

谷山「ビルボードライブ大阪に1度だけ出してもらったことですね。ゴールデンウィークジャズフェスティバルというのがあって、二日間のイベントで1日目は司会がいなくて、私が司会もすることになりまして。2日目にゲストシンガーとして呼んでいただいて。"ここがビルボード大阪だ”と感動しました。」

── 普段、司会をしているわけではないんですよね。

谷山「全くしていません(笑)。”全然知らない人に頼むよりは、谷山さんやってくれへんか”と言われて。」

ブラジル音楽への傾倒。独学でギターを習得し弾き語り。



── 谷山さんはブラジル音楽も唄うとお聞きしました。

谷山「会社を辞めてジャムセッションに行くようになって、ジャズバンドも始めて。そこからずっとジャズだけをやってきました。ポップスを唄うことはほとんどありませんでした。ジャズ一筋ですね。ただ、4年前にブラジル音楽に出会いました。もともと好きなリズムの音楽でしたが、その時は情報が少なくて。あと言葉もわからず。ある時、それがブラジル音楽だと気づいて、唄ってみようと思い、そこからぐっと掘り下げました。それでブラジル音楽のレパートリーを増やし、その年のうちに、ブラジル音楽だけのライブをやるようになりました。」

── ブラジル音楽にはまった理由は?

谷山「言葉とリズムですね。聞いてみないとわからないかもしれませんが、リズムに縦ノリと横ユレの両方ある感じです。すごいうねりがあって気持ち良かったですね。もちろんスイングのリズムも大好きです。今は、どっちもやるようになりました。ジャズシンガーはたくさんいらっしゃいますが、ボサノヴァで弾き語りまで出来る人が少ないみたいで、そっちの需要が増えています。今回作ったアルバムもボサノヴァと思うかたもいらっしゃるかもしれません。ジャズもボサノヴァやサンバといったブラジル音楽の両方を唄います。」

── ところで谷山さんはギターも弾かれますがギターを始められたのは?

谷山「4年前にブラジル音楽に出会って、1年間くらいはレパートリーを増やすことに必死でした。日系ブラジル人のポルトガル語の先生に教えてもらっていまして。ボサノヴァを聴いていて、自分で伴奏をやって唄ってみたいと。それはYouTubeで色々な方々の音源を聴いていて、弾き語りをしている方の動画を見たときにしっくりくるものがありまして。サンバのような明るい音楽は大勢でやると楽しいかなと思いますが、静かなボサノヴァは弾き語っているのが、すごい説得力があって、やってみたいと思いました。」

── それまでギターを弾いたことはなかったのですか。最初からボサノヴァですか。

谷山「アコースティックギターも触ったことはなかったですね。最初からボサノヴァでした。長年譜面は書いてきていたので、コードで何の音かは分かりました。手が動く範囲に限定されるので、自分が使える音を探しながらちょっとずつ弾けるようになりました。ギターは楽器屋で買ったわけではなく、リサイクルショップで買いました。たまたま行った時に、気に入ったギターがあって、その場でギタリストに電話して、このギターはお買い得なのかと聞きました。こことここをチェックしてと言われ、大丈夫と答えると、それは"買い"ですと言われ、即決しました。安いギターだとすぐに辞めてしまいそうだったので、すぐにライブで使えるくらいそれなりの値段のものを買いました。」

── 誰かに教わったりは?

谷山「誰かに教わったわけではないですね。ギターの方にレッスンしてくださいとお願いしたことはありますが、その場で教えられて終わるというようなことはありましたね。ギター&フルートの大野さんには、現場で色々教えてもらいました。ギターを買って、練習して半年くらいで持ち出すようになりました。ライブでは1曲の途中の合間で弾くくらいにはなりました。1年くらいたって、意を決して完全独りぼっちのライブをやってみようと。高槻ジャズストリートにエントリーしたんです。それに向けて練習をしていたところ、大阪心斎橋のcomodoから連絡があって、レギュラーで出てほしいとオファーをいただきました。承諾したものの、まだ、独りでやったことはなかったので、必死で練習しました。最初はぎこちなかったと思いますが、COMODOのオーナーも温かい目でみてくださって。それで2年を迎えます。」

自分のありのままの声を。初めて制作したアルバム。





── これまで色々な場所で唄われて来たり、シンガーとしての経験も積み上げて来たと思いますが、 作品を作られたのは今回初めてですか?

谷山「そうなんです。これまで踏ん切りがつかなくて。音楽家はみなさんそうかもしれませんが、自分の音楽に満足することがなくて。ずっと勉強しないといけないと思っていましたので、"今の歌声を残すなんて"と思っていました。これまでも声をかけていただいたこともあったのですが、ちょっと今の私には無理だなと思ってお断りさせていただいていました。音楽以外のことも考えたりもして、うじうじしていました。ただ、周りの方もみなさんCDを出されていたので、出していないのが不自然らしく、”何で出していないの?”と言われることが多くなりました。それで、そろそろ出さないといけないなと。」

── ミュージシャンにとって、CDは名刺代わりのようなもんですもんね。

谷山「あとは自分の年齢の節目に来たので、作ってみようと。それで普段演奏しているメンバーであり、以前に同じデンソーテンさんのスタジオを使っていた横尾昌二郎さんに相談したところ、自分の経験で良ければお手伝いしますと言ってくれて。それでやってみようと。」

── 楽曲の選曲はどうされましたか?

谷山「全部で8曲あって、5曲がジャズスタンダードで3曲がブラジルの作曲家のものです。選曲は私がほぼ決めて、あとレコーディングメンバーの大野こうじさんと打ち合わせして。何曲かはやりたい曲があって、それ以外はライブの曲順を決めるみたいにどんなテンポのどんな曲が足りないかを補って8曲にしました。」

── 今回の作品の制作期間は

谷山「2/22にレコーディングでその前に2回リハーサルですね。3/6にMIXしたんですが、バランスが思っていたのと違っていたので、3月末にやり直しました。2か月くらいで、結構早くできましたね。」

── 確かに2か月は早いですね。

谷山「やり出したら、細かいことにこだわるよりは、パパパッと録ってしまった方がいいかなと思いまして。レコーディングも何回も録りなおしても、急にうまくなるわけでもないですし。無理せず、自分の身の丈にあった音楽を心をこめてやればいいわと思って、レコーディングに臨みました。今回のレコーディングでは2テイクずつくらいしか録っていません。私がやりたいことが作り込む音楽ではなかったので。ピッチの修正や差し替えは出来るだけしないよう心がけました。急にレコーディングで上手くなってもと思ったので。音質もとにかく自然に録って欲しいということを要望として出しました。そしたら、見事にそれを実現してくださって。今回の作品をかけていただいたら、近くで唄っているかのように聞こえると思います。エンジニアへの注文は少なかったですが、そこだけはお願いしました。ライブでも同じでPAいじったりすることはなく、このままの声で伝えることを大切にしています。」

── 今回の作品のジャケットはとても素敵ですよね。

谷山「女性シンガーとしては珍しく、写真ではなく絵を使っています。描いてくれたのも昔からの友人で高校の同級生なんです。また、デザインをしてくれたのも、高校時代の友人なんです。」

── 自分のことをよく理解してくれている友人のつながりで作品を作るっていいですね。

谷山「そうなんです。大人になって会ってなかったので。それぞれの道を進んで来たところで、交差することがあるんだなと。育児だったり、仕事だったり忙しい中でやってくれたんですけど。金銭的なものでは測れないうれしさですね。私のことを理解してくれる人が、ジャケットの絵を描いてくれたのはとてもうれしいですね。ジャケットに描かれた女性は凛としているんですけど、私の内面も知っているからこそ描けるものだと思います。」

── こだわりがたくさんの作品ですね。

谷山「作ろうと思った時から、コンセプトみたいなのがあったわけではなく、工程が進むにつれて、色々なことに気づいていく感じですね。基本的に、孤独を感じることが多いのですが、CDを作るにあたっては、高校からの友達、共演者であるミュージシャン、エンジニアの方々など困ったら助けてくれる人がいて、意外と孤独じゃないなって思いました。仲間がこんなにいるんだと思いました。」

── 今回の作品で聴いてほしいところは?

谷山「全体ですね。ジャズとブラジル音楽が混ざっているのですが、演者が一緒なので、まとまっていると思います。オシャレな音源に仕上がっていると思っています。朝聴いてもらっても夜聴いてもらっても合いますね。1枚も30分強でそれほど長くなくて、買った人は何回も聴いてくださっていると好評いただいています。有名な曲も入っていますし、ジャズとかブラジル音楽とか区別なく、自由に聴いてもらえたらいいかなと思います。知らない曲は肌で感じてもらいながら聴いてもらえるとうれしいですね。ポルトガル語は分からないからちょっといいわ"という人も時々いらっしゃるので。」

── レコ発はされますか?

谷山「あります。6/28に梅田のミスターケリーズでやります。ずっとやりたい場所でした。他に京阪神を大野さんと回ったり、東京行って知り合いのミュージシャンとライブしたいなとは思います」

── これからはどうしますか。また、次の作品を作ろうと思われますか。

谷山「思います。せっかく重い腰を上げたので。その時々の自分の声を残していきたいと思います。1回経験してみて、勝手がわかるというか。あれも、これもやってみたいと思います。一生に一枚でいいかと思っていましたが、考えは変わりました。好きなピアニストとのデュオだったり、色々とやってみたいです。今までは欲がなさ過ぎたんですかね。」

── ミュージシャンとしては大切な欲求ではないでしょうか。

谷山「あまりガツガツ前に行けない性格なので。でも、今回作品を作ってみて、出来上がった時に、自分が作った作品の世界観に改めて気づかされました。こんな世界観に仕上がっているんだと。自分の声はこんな感じなんだと。ライブで録ったものを聴くこことはありますが、自分の声を細部に聴くことがなかったので。客観的に自分の声が聴けて、とても良かったですね。多くは望みませんが、好きな仲間と細く長く音楽をやっていけたらいいなと思います。音楽はずっと大好きでしたけど、まさか、自分がシンガーになって、唄で生活してくなんて、考えていませんでしたから。」

── 今回のアルバムもとても素晴らしい作品となっています。合わせてこれからの活躍がますます楽しみです。本日はお忙しいところありがとうございました。

information

[ Live Information ]

谷山和恵ファーストアルバム発売ライブ
■6月28日 (木)
vocal/guitar 谷山和恵、大野こうじ guitar/flute
Mr.Kelly's http://www.misterkellys.co.jp/
1st 19:30~ 2nd 21:00~
前売 3,500円/当日 3,800円



[ Release ]

谷山和恵ファーストアルバム『ギターと歌とフルートと。』
​関西でジャズ&ボサノヴァ歌手として活躍する谷山和恵のファーストアルバムは、音楽活動を始めた頃から20年来の仲間であるジャズ・ギタリストの大野こうじをパートナーに迎えたデュオ作品。 互いに信頼する歌とギター、そしてお互いに始めてから数年間真剣に取り組んできたギターとフルートに持ち替えてのレコーディングにもチャレンジし作り上げた作品は、築き上げてきた信頼関係に裏付けられたリラックスした雰囲気と、音楽への愛と喜び溢れるものに仕上がっています。 歌うこと、音楽を奏でることへの"JOY" を形にした本作は、きっと皆さんの心にもたくさんの"JOY"を届けてくれることでしょう。 ジャズ・スタンダードはもちろん、アントニオ・カルロス・ジョビン、イヴァン・リンス、ドリヴァル・カイミなどブラジル音楽を代表するコンポーザーの佳曲を織り交ぜた、全8曲収録。

1. From This Moment On
2. On The Street Where You Live
3. Someone To Watch Over Me
4. Stars Fell On Alabama
5. Emoldurada
6. Luiza
7. A Vizinha Do Lado
8. Smile
谷山和恵、大野こうじ

Kazue Taniyama Official Website