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ジャズピープル

ジャズやクラシックの垣根を超える。Muto Jazz Chamberリーダー&サックス奏者武藤浩司。

今回は、関西で活動する若手サックス奏者の武藤浩司さんにインタビュー。武藤さんは2015年にジャズとクラシックの要素を掛け合わせたMuto Jazz Chamberを結成し、リーダーを務めています。同バンドを支えるため、自身もクラシックを再度学ぶなど非常に研究熱心。これまでの武藤さんご自身の経験を交えながら、今、最も注力しいてるバンド活動Muto Jazz Chamberのことなどを伺いました。
[取材協力:100BANホール]。

person

武藤浩司

中学生の頃からサックスを始める。6年間吹奏楽部でクラシックを学び、大学からジャズを聴き始める。 バンド活動はベースの西山満氏率いる“G.S.B.”、ギターの須藤雅彦率いるクインテット、西宮社会人ビックバンド“Westwinds Jazz Orchestra”など関西を中心に活動。2011年2月にJAZZLABレコードよりファーストアルバム「FIGARO」をリリース。全国のタワーレコード・HMVにて発売中。

interview

アドリブアドリブで毎日セッション



── いつから音楽を始められたのですか。

武藤「中学でブラスバンドを始めて、中高6年間やりました。ですので、中学生からサックスを始め、楽器を変えることなく6年間サックス一筋でしたね。現在はアルトとソプラノをメインでやります。ビッグバンドだとフルートを求められたりしますね。テナーはやっていないですね。ニュアンスが難しいですけど、僕がテナーを吹くとアルト吹きのテナーになってしまいます。吹けないわけではなないですけど、しっくりは来ないですね。」

── ジャズを始めたのは。

武藤「ブラスバンドをやって来て、大学では新しいことをやってみようと。軽音とか色々と探していたのですが、ジャズ研が新歓で路上ライブをやっていまして。その時、先輩がサックスでジャズを演奏していたのを観て、衝撃を受けました。それで、ジャズは知らなかったのですが、直感的に"やってみたい”と思ったことが始まりですね。」

── 大学からジャズを始めたのですね。吹奏楽とジャズでは違うものですか。

武藤「そうですね。ブラスバンドはいかに楽譜通りにしっかりできるかというところに重きを置いていますよね。6年間それをやって来ていたので、ジャズをやる時には、かなりとまどいましたね。ジャズ研でもまれましたが、なじむまで1~2年かかりましたね。ずっとアドリブアドリブで毎日セッションしていましたね。」

── ビッグバンドの経験は?

武藤「大学の先輩に横尾昌二郎さんがいまして、横尾さんの紹介で西宮にある社会人ビッグバンドに10年くらい参加させていただき、リードアルトをやらせていただきました。」

── 学バンはやらなかったのですか。

武藤「そうですね。大学にビッグバンドがなかったというのもあって、僕は学バンには入っていませんでした。ただ、横尾さんは当時から色々な活動をされていたので、それを紹介していただき、僕も参加していました。」

── 学外でも活動していましたか。

武藤「学校での活動と並行して、大阪の谷町にSUBというお店があるんですけど、そこの西山満さんというベーシストがいらっしゃいまして、そこに飛び入りさせていただいた時、"一緒にバンドやらないか"と誘っていただきました。そこでも横尾さんと一緒にやることになりました。SUBは、大学のメンバーもお世話になっていました。学生4年間はSUBで勉強させていただき、大変感謝しています。」

── 大学卒業とともにプロに。

武藤「いえ、実はそうではなく、短かったのですが、就職して社会人もやっていました。社会人の時は仕事が忙しく、音楽活動はほとんどできていませんでしたね。24歳ぐらいだったと思いますが、ちょうど仕事を辞めるかどうかというタイミングで、どこかのお店に飛び入り参加した時、ジャズやねん関西(現WayOutWest)の藤岡宇央さんから"CD作らないか”と声をかけていただきました。」

── 藤岡さんとは面識があったのですか。

武藤「少し面識はあったのですが、具体的に何かをしようというのはその時初めてでしたね。CD作った時には、権上康志さんも一緒でしたね。彼とは同じ年で、僕のバンドでベース担当でした。ピアノは杉山悟史くん、東京からドラムの永山洋輔くんという同世代の仲間でCDを作りました。それがプロになる一つのきっかけでした。」

弦楽器ではなくサックスでMuto Jazz Chamber




── 武藤さんの現在の活動は。

武藤「今、力を入れている活動としては、Muto Jazz Chamberというのをやっています。日本ではあまり知られていない方かもしれませんが、ビリー・チャイルズというピアニストがいます。JJジョンソンとかフレディー・ハーバードのバンドにいたすごいピアニストです。もちろん今も現役の方です。その人の"In Moving Pictures"という作品を聴いた時に雷が落ちるくらいの衝撃を受けました。Chamberというクラシックの弦楽器とジャズのリズム隊、サックスが一緒になって作ったアルバムです。当時、僕はコンボ中心に活動をしていて、自分が昔クラシックをやっていたことを忘れかけていました。中高のブラスバンド時代を思い出して、これをやってみたいと思いました。」

── クラシックでもなく、ジャズでもないというのはどういうものなのでしょうか。

武藤「Jazz Chamberという名前なので、両方の要素が混ざっています。編成は10人くらいですね。ただ、これをやろうと思った時、弦楽器に知り合いもいなくて。どうしようかと迷っていた時、クラシックをやっている中高時代の知り合いに色々と相談したところ、クラシックでは弦楽器の編成をサックスでやることがあるというのを聞いて、これはできるんじゃないかと。」

── ということは、弦楽器無しでChamberを。

武藤「そうです。弦楽器は無しですね。特殊な編成ではあるかもしれません。ビッグバンドでもなく、クラシックのエッセンスもあるのですが、枠はジャズで固めています。アドリブもありますし、色々な要素を盛り込んでいます。それでJazz Chamberという名前を付けました。」

── 楽曲はどうしているのですか。

「ビリーチャイルズの楽曲などを自分で耳コピして、譜面に起こす作業を全てのパートでやっています。大変ですが、楽しいです。2015年に立ち上げてから、試行錯誤しながらようやく形になってきたかと。今後は、自分の曲をやりたいなとは思っています。メンバ―の曲なんかも10人にアレンジしてやっていきたいですね。」

── どういう編成ですか。

武藤「今回(2018/4/28ライブ)はヴォーカルをゲストに加えているので、11人ですが、普段は10人で活動しています。編成も特徴的で、サックスが5本とフルート1本、ドラム、ベース、ピアノですね。ビッグバンドとも違いますし、とても繊細だと思っています。音のバランスは良くて、美しいサウンドを楽しんでもらえると思っています。楽曲はメロディやカウンターラインというか対旋律が絡み合ったりということがありますし、繊細な部分を出しやすい編成ですね。ビッグバンドとまではいかないまでも音量で攻める部分もできるので、色々なカラーを出せる編成だと思います。」

── Muto Jazz Chamberの活動は?

武藤「普段はなかなかメンバーを集めるのが大変ですね。半年に1回くらいのペースでのライブですね。曲を溜めていって、CDを作りたいですね。」

── バンドメンバーの年代は。

武藤「そうですね、下で2歳下くらいですね。ほとんど同年代です。関西、神戸の音楽シーンに貢献できれば。信念をもって続けていけば、観てくれる方は増えてくれるとおもっています。」

── 10人のメンバーを維持するのは大変ではないですか。

武藤「そうですね。メンバーの予定を調整したり、早くから予定を押さえてもらって、練習やイベントなどのスケジューリングをしていただいています。もちろんメンバーも助けてくれます。いろいろな面で勉強させてもらっています。コンボとは違う側面ですね。」

── みんな違う音楽性を持っていて、素晴らしいプレイヤーばかりだと意見を合わせたりするのは大変ではないですか。

武藤「ケンカになるようなことはないですけど、建設的な意見のぶつかり合いはあります。最終的には、リーダーである僕が"こうしたい"と意向を示すことはありますね。ただ、押しつけにならないように心がけています。もちろん、他の人の意見でうまくいくこともあります。」

── Jazz Chamberで表現していきたい音楽は?

「バンド内にはクラシックの方が半数いるので、テリトリーが違うので、普段これでしか会わない人もいます。色々な方とつながることで広がっていくチャンスだと思っています。芯にはジャズを置きながら、クラシックの活動をされている方とつながっていけば、もっと広がるかなと思います。それぞれのいいところが一緒になった時に、今までに聞いたことがないサウンドができると思っています。ライブを大切にしながら、ライブならではの響きや音楽っていいなって思ってもらえるサウンドに仕上げていきたいですね。」

── 今回のライブ用のフライヤーの猫のイラストが印象的ですね。

武藤「藤岡さんが描いてくださったイラストで、自分が飼っている猫なんです。猫が好きで、猫の曲なんかもオリジナルで作ったものをCD化しています。その時のジャケットも猫を使っています。」

10人の譜面書くとき、力が足りない。勉強は一生続いていく。

── ところで武藤さんはどなたかに師事されましたか。

武藤「今、実はクラシックを習っていまして。クラシックサックスをある先生に教えていただいています。このバンドをやることになってジャズばかりでなく、クラシックも学ぼうと思って始めました。クラシックのテクニックも必要だと感じて。サックス以外にもピアノも習っています。ピアニストからみた伴奏やメロディーを勉強しようと思っています。フロントマンの立ち位置が明確になると思っています。ジャズは先ほどお話した西山満さんに長い期間お世話になりました。クラシックサックスを井上麻子氏、音楽理論を宮下博行氏に、師事しています。あとは、横尾さんと大学の先輩には大変お世話になりました。一番大きな影響を受けました。」

── 研究熱心ですね。

武藤「このバンドについては、10人の譜面書くとき、力が足りないなと思っています。ですので、勉強は一生続いていくのかなと思っています。サックスのことはある程度わかるので、そんなに外すことはないのですが、ギターの譜面やピアノの譜面となるとやっぱり違う、”こういう風には書かない”と言われますね。」

── 武藤さん自身のこれからやっていきたいことは。

武藤「オリジナル書き溜めて、CD作っていきたいですね。コンボはたくさんアレンジしたものがあるんですが、大編成のものはまだまだ作っていきたいですね。まだ時間はかかるかもしれませんが、Muto Jazz Chamberで作品は作りたいです。」

── ちなみに武藤さんのMuto Jazz Chamber以外の活動は。

武藤「横尾さんのビックバンドや自身のカルテット、トリオで活動しています。毎月演奏しているものではY`s Loadでの樫本ゆう氏のカルテットと、岡本アリオリオで毎月演奏している、The three Musketeers というバンドがあります。どちらも毎月新鮮で、学ばせていただくことがたくさんあります。」

── Jazz Chamberの今後の活動はとても楽しみですね。本日はお忙しいところありがとうございました。

information

Muto Jazz Chamber
ジャズピアニスト・作編曲家ビリー・チャイルズ(2018年度グラミー賞:最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム賞受賞)の「ジャズ・チェンバー・アンサンブル」作品群に影響を受けたアルトサックス奏者武藤浩司が、2015年12月に始動したプロジェクト「ムトー・ジャズ・チェンバー」。永田有吾(p)、波戸就明(b)、薮下ガク(g)、橋本現輝(ds)ら実力派ジャズミュージシャンと、本田千鈴(ss)、大塚ゆき(fl)、中坪かなえ(as)、高橋千尋(ts)、岩本雄太(bs)ら関西クラシック界の精鋭が一同に集結。



武藤浩司ライブ情報
[大阪]
5/13(日) The GSB @鴻池ジャズストリート
14:00- 東野医院前
16:00- 喜久幸堂

[神戸]
5/25(金) 山本恵介クインテット@神戸三宮basin street
19:30-

[大阪]
5/30(水)The Three Musketeers @岡本アリオリオ
20:00-

[大阪]
6/2 (土)武藤浩司トリオ@放出ディアロード
18:00-

[神戸]
6/4 (月)横尾昌二郎ビックバンド@スタジオ100ban
19:00-