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ConcertReport・コンサートレポート

FUJITSU CONCORD JAZZ FESTIVAL 2010

富士通コンコード・ジャズ・フェスティバル 2010 2010年11月4日(木)サンケイホールブリーゼ

当代随一の最高ジャズオーケストラが、ビッグスリーの名曲をステージで再現。

25回目となる「富士通コンコード・ジャズ・フェスティバル 2010」が11月4日(木)サンケイホールブリーゼで開催されました。

アメリカ音楽史上に燦然と輝くビッグスリー、ジョージ・ガーシュイン、コール・ポーター、デューク・エリントンの名曲を一挙にステージで再現する、クレイトン=ハミルトン・ジャズ・オーケストラ。そして、モダンコーラスグループの草分けと呼ばれるフォー・フレッシュメン。現在のメンバーは22代目として見事なハーモニーを紡ぎます。さらに、ジャズを歌うために生まれてきた21世紀の歌姫、ロバータ・ガンバリーニ&サイラス・チェスナット・トリオが魅せるサウンドとヴォーカルの世界。そんな3組のアーティストたちが一堂に介する贅沢なステージが実現しました。

トップバッターは富士通コンコードでは初めてとなる男性コーラスグループ、フォー・フレッシュメンが登場。それぞれが楽器をこなし、ソロを演じ、自らのコーラスを伴奏するスタイルはユニーク。連綿と受け継がれる伝統のハーモニーはファンを唸らせ、全15曲のステージでオープニングを飾りました。

2組目はジャズピアニスト、サイラス・チェスナット率いるトリオにロバータ・ガンバリーニをヴォーカルに迎え、スタンダードジャズの演奏が心に沁み入ります。今年の第52回グラミー賞にサードアルバム『ソー・イン・ラブ』がノミネートされたロバータ・ガンバリーニは近年のライブハウス出演など、日本のファンにもおなじみの美人シンガー。その妖艶でパワフルなヴォーカルと、サイラスのサウンドが絡むステージに酔いしれました。

そして、トリを飾るのは6年ぶり3度目の来日となるクレイトン=ハミルトン・ジャズ・オーケストラ。満を持しての登場に詰めかけたファンからの惜しみない拍手に会場は熱気に包まれます。オープニングナンバーは「巴里のアメリカ人」から「S Wonderful」、コール・ポーターの「Ev’ry Time We Say Goodbye」と、おなじみの名曲が続き、ジョージ・ガーシュインの代表作「Rhapsody In Blue」など、ビッグバンドならではのダイナミックな演奏は、聴き終わったあともいつまでも耳に焼き付いて離れない。ベーシストでもあるジョン・クレイトンのアレンジのすばらしさ。そのリズミカルなコンダクトに呼応するように、ジェフ・ハミルトンのドラム、ジェフ・クレイトンのアルトサックスをはじめとする、実力派ソロイストたちの迫力ある演奏に圧倒されました。ラストナンバーはデューク・エリントンの「Things Ain't What They Used To Be」で締め、まさに、マスター・オブ・ビッグバンドにふさわしいエキサイティングなステージは大盛況で幕を閉じました。

黒一色に統一された漆黒の空間が奏者をフォーカスし、観客と演者が一体となるサンケイホールブリーゼは満席に埋まりました。3組のアーティストの競演と、このステージでしか味わえない音楽の醍醐味をたっぷりと楽しむことができた、最高で贅沢な秋の1日となりました。

当代随一の最高ジャズオーケストラが、ビッグスリーの名曲をステージで再現。
Interview
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クレイトン=ハミルトン・ジャズ・オーケストラ インタビュー

——日本のお客さまの印象を教えてください。

ジョン・クレイトン/日本のお客さまは音楽のことをよく理解してくれています。昨日の萩のライブも超満員でお客さまの反応はよかったですし、世界の中でもいちばんの聴衆だと思います。
ジェフ・ハミルトン/日本の観客は昔にくらべると態度も変わってオープンになっていると思います。昔は静かに聴いているような感じでしたが、今は音楽に溶け込んで拍手や手拍子をしてくれるようになりました。観客からエネルギーをもらって演奏しやすいですね。

——今回のコンサートで取上げられる、アメリカジャズ史上に輝く、「ビッグスリー(G.ガーシュイン、C.ポーター、D.エリントン)」の印象を教えてください。

ジェフ・クレイトン/多くのジャズミュージシャンは、3人の偉大な作曲家たちの作品も含め、グレート・アメリカン・ソングブックの名曲を演奏し、音楽のアイデアを得るための飛躍台にしています。他のアメリカのジャズミュージシャンたちも、彼らの音楽を母体にして多くの曲を演奏しているでしょう。彼らの曲はアメリカの偉大な音楽です。曲名は知らなくても曲を聴けば多くの人が彼らの曲を知っています。

——ビッグバンドの形態で演奏するいちばんの魅力は何ですか?

ジェフ・ハミルトン/ビッグバンドで演奏することは周りの多くのミュージシャンたちの音を聴き、感じながらいっしょに演奏するので、エキサイティングなものになります。聴き手にとってもエキサイティングでしょう。
ジョン・クレイトン/アレンジャーの立場としましては、画家と同じでいろいろな色彩を音で出すことができて、音楽をつくることができるのが魅力です。

——指揮される中で気を使うことはありますか?

ジョン・クレイトン/指揮する立場としては曲の持っているエネルギーを反映させて、それぞれのプレーヤーが持っているものを最大限に引き出すこと。楽団員の個々の力をうまく引き出し、全体としての音をうまくまとめることに神経を使います。

——日本のアマチュアプレイヤーにとって最大の課題はやはり「スイング感」や「ドライブ感」がどうしても出せない、ということだと思います。なにかアドバイスがあれば聞かせてください。

ジェフ・ハミルトン/日本の生徒をたくさん教えていますが、彼らは別に問題はないと思います。ドライブ感はカウント・ベーシー、デューク・エリントン、サド・メル・オーケストラなど、有名バンドの演奏をよく聴いていっしょに演奏することが大切です。真似をすることで吸収できると思います。それがいちばんの近道ではないでしょうか。もちろん、そのためにテクニックを勉強すること、そして、情熱も大切です。現実に日本のビッグバンドでカウント・ベーシーとそっくりの演奏をするバンドも知っています。そういうことをやっていくうちに血となり、肉となり、身についていくのではないかと思います。アメリカにもバンドはたくさんありますが、上手なバンドばかりではありません。よいバンドの真似をすることは大切です。最近は世界的なビッグバンドのレコードや譜面を売っているので、それらを参考に勉強するのがよいのではないでしょうか。

——最後に、日本のジャズファンにメッセージをお願いします。

3人/日本に呼んでいただいて感謝しています。これからも日本のお客さまに演奏する機会があるとうれしいです。ジャズ界は小さな世界ですが、日本のジャズファンは温かく迎えてくれて、我々の音楽をサポートしていただいてとても感謝しています。また、これから日本のジャズも大いにサポートしていただきたいと思いますし、もちろん、アメリカから来日するジャズミュージシャンも、ジャズ全般に対してもサポートを続けていただけるとうれしく思います。



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