Denso Ten

Concert Report

ジルデコ9 Another Tour〜New Agenda〜 in 神戸

■2019年8月3日(土)ロバアタ商會 (神戸市中央区)

文:小島良太(ジャズライター/ジャズフリーペーパーVOYAGE編集長)

対話型ライブから生まれる心地良いグルーヴ

恒例の花火大会で一際賑わう神戸の夜。
JiLL-Decoy association、通称ジルデコの神戸でのライブが、こだわりの音好きが集うバーとして名高い「ロバアタ商會」で行われました。今回はボーカルのchihiRoさんとギターのkubotaさんの2人によるツアー。ジルデコの9枚目のアルバム、「GENERATE THE TIMES」にちなんで、「時代」をテーマに事前にアンケートを来場予定のお客様からいただいて、そのエピソードを紹介しながらライブを進めていくという、通常とは一味もふた味も違う趣向を凝らしたライブツアーについてはコチラも参照を。ジルデコファンはもちろん、花火鑑賞後に駆けつけた方などで店内は超満員。
期待の気持ちで胸膨らむ中、お待ちかねのジルデコのお二人が登場。早速披露してくれたのは花火大会にちなんで「SUMMER MAGIC」。伸びやかで清涼感のあるchihiRoさんの歌声、弦の響きが美しいkubotaさんギターの演奏と共に早速お客さんがサビの部分で自然とコーラスに入り、雰囲気いきなり最高潮!?瞬時に会場のお客様の心を掴むお二人!さすがです。
大事な人を想う歌詞が沁みる「わすれ名草」から最新アルバム「GENERATE THE TIMES」からのナンバー、「Starlight Generation」。アルバムではビッグバンドを擁するゴージャスなサウンドをkubotaさんがギター一本でどう表現するのか!?chihiRoさんからもそのように紹介されてハードルを上げられる中(笑)、涼しい顔で巧みに様々な音色を表現するkubotaさんの見事な熟練のギタープレイ。アルバムとは違った曲の魅力がより鮮明となっていました。

3曲披露したところで、今回のツアーの特徴であるお客様からのアンケート紹介。
古き良き、古き悪しき事柄という事で、アンケートの回答からは「飲みニケーション」が無くなった、また「ご近所付き合い」が減ったという意見が。会場からは「あぁ」とその回答に共感を覚える方からのリアクションが早速チラホラ。確かにそうですね、うんうん。 最新アルバムからの「Lost and Found」を挟んで再びアンケートより。兵庫県加古川市から 来られたお客様からの回答では、「田んぼだった所が住宅地に変わった」という投稿が。
馴染みある場所の光景が変わる、まさに時代の流れを痛感しますよね。ちなみに今回の神戸ライブは神戸市以外の兵庫県の方はもちろん、なんと京都や三重県津市からのお客様も!
ジルデコのファンの方、またこのライブ自体の注目度の高さを感じました。程良い熱気を保ってファーストセット終了。どんどんお酒のオーダーが入ってお店のカウンターは大忙し。
盛大な拍手で再び迎えられて後半開始!母親の温かい優しさを描く「おちちとバラード」でほっこりした所でテーマは昔と今の子育てについて。アンケートからは昔はとても大らかで、自分の家族だけでなく近所の人も地域の子どもたちを育てている感覚があったというアンケート回答が。「なんだか子育てシンポジウムっぽくなってきたなぁ、パワーポイント必要かも(笑)!」とchihiRoさん。次回からはスクリーンを使ってのライブもあるかもしれませんよ、これは(笑)。ジルデコの2人と会場のお客様がアンケートに沿って共通の事柄をシェアしていく感覚があって、普通のライブにはない意思のキャッチボール、気持ちのやり取りを感じる場面が多々ありました。chihiRoさんがお祖母さんに向けて歌詞を書いた曲、「眠り姫」で家族の愛情の深さに改めて気付かされます…本当に素敵な曲!
そこからまさに現代という時代を象徴するような「パスワードロック」へ。これまた皆さんあるあるのシュチュエーションをリズミカルに。これはお客様も一緒にコーラスに参加で盛り上がりも再び高まります。ファーストセット、セカンドセット共にポップスの名曲カバーも含めながら、時代にまつわるトークも挟んで、充実しまくりの一夜でした。ロバアタ商會さんの雰囲気とジルデコの相性も抜群。夏の神戸に限らず、春も秋も冬もジルデコを神戸で聴きたい!