CDレビュー
バックナンバー
スタン ケントン
今回からこのコーナーを担当させて頂くことになりました。現在東京在住ですが、90年代前半に4年程住みましたし、そもそも神戸は出生地ですし地震も経験しましたし、切っても切れないような因縁があるようです。こうしてまた神戸とつながりを持てることは大変に嬉しいことです。どうぞよろしくお願い致します。
Stan Kenton
さて、一回目に何を挙げるか、というのはずいぶんと迷ったのですが、Stan KentonのContemporary Conceptにしましょう。だって、ベイシーやエリントンは散々紹介されるのに、ケントンはあまり紹介されないですもんね。かく言う私もケントンはほとんど持っていないのですが、二昔くらい前までは、叩き上げ白人ミュージシャンのコースとして、ケントン、ハーマン、ファーガソンあたりを歴任してNYでサドメルに行くみたいな明確なルートがありました。ケントンOBの紳士録を作ったらとんでもなく凄いことになる訳なので、ここを紹介しないわけにはいかないなぁ、と。

数あるケントンのレコードでこれを取り上げたのは理由があります。それはアレンジャーがビル.ホルマンだからです。去年80歳を迎えましたが、今尚元気に活躍しています。50年代のいわゆるウエストコーストからは素晴らしいアレンジャーが沢山出ましたが、ビルは当時から活躍している、ある意味ジャズアレンジメントの長老だからです。この人は『リニア.アレンジメント』の祖であり、すなわち、ボブ.ブルックマイヤーやサド.ジョーンズのあの書き方は実はこの人がオリジナルなのではいかとも思える訳です。しかも今回紹介しているアルバムのタイコはメル.ルイスです。ほら、もうお分かりですね。全てのトラックがそうだとは言いませんが、I've got you under my skinの譜面なんか、Thad Jones& Mel Lewisで演奏されても遜色のないモダンさがあります。今聴いても全然古くないですし、実は去年この譜面を演奏してみたのですが、実に演奏のしごたえがありました。

どうも日本ではウエストコーストジャズみたいな記号が付いてしまうと一歩引いて評価されてしまうように思うのですが、ことビッグバンドジャズについていえば、人材の豊富さとか、モダンな感覚みたいなものに東西云々は全く関係ないように思われます。というか、そういうイメージでこの辺りのアルバムをあまり聴いてこなかったことは勿体ないと思いますし、何より私にそういうイメージを植え付けた評論家の先生の文章は何なの、とさえ思います。

日本には本当に数多くのアマチュアビッグバンドがあります。そしてそうしたバンドの皆さんは「新しくてカッコいい譜面」を探すことに非常に熱心です。が、その割にこの辺りの音をやっている人があまりいないのは、勿体ないなぁ、と思います。50年代の西海岸のビッグバンドにはいいものが沢山あります。それを知ってもらうとっかかりとして、このアルバムはうってつけではないかと思います。食わず嫌いはやめて、この辺りの音の面白さを知ってくれる人が増えると嬉しいなぁ。
収録曲
1. What's New
2. Stella By Starlight
3. I've Got You Under My Skin
4. Cherokee
5. Stompin' At The Savoy
6. Yesterdays
7. Sunset Tower (Bonus)
8. Opus In Chartreuse (Bonus)
9. Opus In Turquoise (Bonus)
10. Opus In Beige (Bonus)
★輸入盤しかありませんが、amazonにも在庫ありますし、タワレコやHMVのようなところであればありそうです。
著者Profile
辰巳哲也( たつみ てつや)
DAVE鈴木
神戸市生まれ。10歳から本格的に楽器を始め、大学入学後ジャズに傾倒。卒業後しばらく会社勤めをしてプロに転向。神戸在住時にAtomic Jazz Orchestra, 西山満氏のHeavy Stuffなどにも参加。98年Global Jazz OrchestraでMonterey jazz Festivalに出演。98年、秋吉台国際芸術村でのアーチスト.イン.レジデンスにAssociate Artistで参加、Dr. Fred Tillis氏の薫陶を受ける。2001,2003年にPersonnage Recordingよりアルバム発表。打込みを含むほとんど全てのトラック制作を行い、クラブジャズのフィールドでロンドンや北欧で反響を呼ぶ。2004年にジャズライフ誌にて「トランペット超初級者コース」連載。50年代ウエストコーストジャズを回顧するオクテット、Bay Area Jazz Ensembleを主宰し、それを母体としたビッグバンドも展開している。一方で2005.6年とThe Five Corners Quintetのトランペット、Jukka Eskolaとジョイントし、2008年にはTom Harrellと東京でセッションを行いラッパ関係者の間で大きな話題となった。Eddie HendersonやCarl Saundersを初め、多くの海外のミュージシャンとも親交が深い。Lincoln Center Jazz OrchestraのEducational Programでの通訳サポートなど、演奏のみならずジャズ教育のフィールドにも関与。『ジャズ』という記号のある音楽であればなんでもやるオールラウンダー。IAJE会員。
http://www.myspace.com/
tetsujazz

http://members3.jcom.
home.ne.jp/
dadriemusic/
PAGE TOP