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アメリカのビッグバンド界の重鎮、ボブ・フローレンスの名前はビッグバンドのプレイヤーであれば必ずや耳にしたことがあるでしょう。彼の作編曲のイメージは、多くの場合、非常に分厚いオーケストレーションで「これでもか」と思うくらいにフォルテシモで攻めてくるスタイルではないでしょうか?
しかし、そんなボブ・フローレンスですが、ひとたびピアニストとしてのソロになると、実に美しく、そして静かに語りかけるような演奏をするのです。このピアノの「静」の世界と、ビッグバンドの「動」の世界は、あまりにも違う世界であり、一人の人間がここまで違う世界を奏でることが出来ることに驚きを隠せません。
今回は、この、ボブ・フローレンスの「静」と「動」の世界をご紹介いたします。 |
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Mama Recordsの復活(?)第1弾となったのは、同レーベルで過去いくつものアルバムをリリースしているThe Bob Florence
Limited Editionの「Eternal Licks & Grooves」です。スペシャルゲストとしてPeter Erskine
(drums)、Carl Saunders (trumpet)とScott Whitfield (trombone)を迎え、完璧な布陣です。The
Bob Florence Limited Editionのビッグバンド・サウンドは、どのビッグバンドとも似ていない、Bob Florenceによる独特の世界を築いていますが、そのサウンドはもちろんこのアルバムでも健在です。しかし、このアルバムでは美しいバラッドも多く、Bob
Florenceのビッグバンド作品としては(比較的)どなたにも聞きやすい構成になっています。
「Eternal Licks & Grooves」は2005年のIAJEコンファレンスで初演された(私はその場で聞きました!)、14分の大曲。さすがに聞き疲れます。1曲目からこの調子ですので、この先が思いやられますが、Bob
Florenceファンならば大歓迎でしょう。Bob Florence節炸裂です!「Claire De Lune」はドビッシーのクラシック曲「月の光」です。冒頭のピアノソロではクラシック風の演奏がありますが、バンドのテュッティ以降は完全なジャズに大変身。見事です!ちなみに、古くはこの曲をThe
Phil Norman Tentetの為にアレンジをしており、同バンドのアルバム「Live at the Lighthouse, Hermosa
Beach, CA」でも聴くことが出来ます。
「Minor Image」では一転かわいらしいオーケストレーションで「なごみ系」となりますが、それでもお得意のフレーズを使い回す当たりが、さすが、Bob
Florenceです。「Guiding Star」は美しいバラッドの世界です。バリトンサックスのBob Carrがメロディを浪々と歌い上げ、それに続きトロンボーンのBob
McChesneyが絶妙なアドリブを取ります。
「Invitation」は、Bronislav Kaperの名曲中の名曲。Bob Florenceの美しいピアノソロで始まり、バラッドのアレンジかと思いきや、中盤からはBob
Florenceサウンド炸裂です。1曲目以降は比較的静かでしたので、Bob Florenceが戻ってきた!という感じがします。「I'm Old
Fashined」はこれもジャズのスタンダードとして名曲中の名曲です。トロンボーンのAlex IslesとBob Florenceのピアノのデュオで始まりますが、中盤からはミディアムのスウィングに変わり、グルーブしまくっています。
締めの曲「Appearing in Cleveland」は期待がはずれることなくBob Florenceの分厚いサウンドが楽しめ、Bob Florenceのアルバムを聴いていたことを再認識させられます。中盤部分でこのアルバムで唯一ソロを取るLarry
Koonseのギターが光っています。
「Bob Florence大好き!」という人でないと、Limited Editionのアルバム1枚を聴ききるのはかなりつらいものがありますが、このアルバムは変化に富んでおり、非常に聞きやすい名盤であると言えます。 |
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1. Eternal Licks & Grooves [ Bob Florence
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2. Claire De Lune [ Debussy / arr. Bob Florence ]
3. Minor Images [ Bob Florence ]
4. Guiding Star [ Bob Florence & Fred Manley ]
5. Invitation [ Bronislav Kaper / arr. Bob Florence ]
6. I'm Old Fashined [ Jerome Kern & Johnny Mercer / arr. Bob Florence ]
7. Appearing in Cleveland [ Bob Florence ]
MAMA Records MAA1030 |
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こちらは、Bob Florenceの2005年の夏にリリースされたソロ・ピアノのアルバムです。前述のLimited Editionの演奏と実に対照的な、Bob
Florenceの「静」な面を知ることが出来ます。心が癒されます。普段から重圧なビッグバンド・サウンドに触れている人にこそ、心のクールダウンの為にオススメできるアルバムです。 |
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1. Just Friends / Wind Beneath My Wings
2. Invitation / Green Dolphin Street
3. My Sunshine Connection
4. A Time for Love / The Shadow of Your Smile
5. Mulholland Falls
6. Whippoorwil / Nobody Else But Me / I'm Old Fashioned
7. Jools / Come Rain or Come Shine
8. Pensitiva
9. Maria, Queen of Birders
10. Reprise - Friends / Wind Beneath My Wings
Summit Records DCD430 |
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