クリヤ・マコトのビックリヤ音楽鑑
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果てしなくエスカレートするライブ
RHYTHMATRIX(リズマトリックス)

僕が主宰するRHYTHMATRIXは、2004年に僕と安井源之新(per)、コモブチキイチロウ(b)の3人で結成したバンドだ。2009年には渾身のアルバム「RHYTHMATRIX」もリリースした。他にもさまざまな活動をしている僕の経験のなかでもRHYTHMATRIXの活動は数多くのビックリするようなエピソードを持っているので紹介したいと思う。

ブラジル音楽には、サンバなどで打楽器だけになる「バツカーダ」というパートがある。ライブではコモブチのベースがスルド(サンバでは最も低音の打楽器)の役割をし、僕は源之新に借りたタンボリンを持って、バンド全員でバツカーダをやるんだ。
バツカーダは本来なら50人以上の人数が望ましいのだけど、僕たちは3人しかいないので、サンプリングの技術を使って音を重ねるなど工夫をしている。
バツカーダにもフリやキメがあり、そこでオーディエンスが盛り上がって踊る。最近はオーディエンスも含めて全員で振り付けして踊るという楽しい状態になっている。しかもオーディエンス自身が打楽器を持参してきてるからすごい。ジャズのライブだと思って見に来たオーディエンスはとってもビックリするんじゃないかな。
僕自身、このバンドは今まで以上にオーディエンスと一緒に作るステージがやりたかったし、頭で考えるのではなく体を動かす音楽をやりたかったので、それが叶って嬉しい。これからもこんなふうにオーディエンスと一緒に作っていければいいなと思っている。どこまで進化するのか、是非一緒に楽しんで欲しい。

底抜けに楽しいライブも魅力だけど、アルバムも力を入れた。普通こういうアルバムは2、3日で録ってしまうものなのだけど、今回のアルバムはなんと3年もかかっている。「どうせ時間がかかるんだったら、たっぷり時間をかけていいものを作ろう」と思ったのがその理由だ。
3年間何をしていたかというと、他の仕事の傍らで暇さえあればRHYTHMATRIXの音作りをしていたのだ。たとえばライブで盛り上がるバツカーダは、アルバムでは何十回もの録音を重ねて人数感を出している。欲を言えば100人編成ぐらいの人数感を出したかったのだけど、これでも相当な人数感が出ていると思う。
また、このアルバムには歌やコーラスもたくさん入っている。僕はピアニストなので、普通に作ればインストゥルメンタルになるのだけど、この音楽にはこの楽器がいい、という方向性で考えていたら自然と歌ものが増えた。たまたま土岐麻子やSaigenji、青木カレンが参加してくれて、結果的に豪華になったのは嬉しい偶然だ。
同じように、ストリングスやブラスもたくさん入っているので、レコードメーカーの人には「数百万円はかかったんじゃないか」と言われるのだけど、実際はそれほどでもないんだ。
何故かというと、先程も書いたように時間をかけてコツコツ作ってきたからだ。ライブの待ち時間にベース音を録ったり、休日にパーカッションを録ったり、隙間隙間で少しずつ録音してきた。ストリングスも、サウンドトラックの仕事の合間に5分くらいで 録ってしまったり(笑)。
もちろん、ライブを始めて来た頃から「これなら絶対にオーディエンスが盛り上がるゾ!」と少しずつライブ上で作り上げてきたという意味でも3年という時間は必要だったと思う。

最後にもうひとつビックリなエピソードを披露したい。
聴けば分かるけれど、日本制作のCD音源は音の輪郭やインパクトという点で、アメリカやヨーロッパの作品に大きく水をあけられていると思う。それは昭和から平成になっても変わらず、何故か「さすがアメリカだ」というところで終わりがちだ。でも僕はアメリカに長年住んでいたし、アメリカでできて日本でできないわけがないと思った。
だから僕は、時間をかけたついでにファイナルのミックスでも音の粒立ちにもこだわった。専門的な話になるけれど、音楽を作る過程で最終的にトラックダウンというミックスの工程がある。そこで、これだけ多い音を一度全部外に出して、一つ一つ音の粒立ちを工夫してもう一度戻すという気の遠くなるような方法を全曲に採用した。もう二度とやりたくない(笑)。
何故そんなバカなことを、と言われるけれど、それぞれ太くしたり、聴きやすくしたり、音圧を太くしたりして、音を良くするためには必要な工程だった。結果的に満足のいく音を作ることができた。

というように今回のアルバムは、僕が今まで信じてきたけどやってこなかったというノウハウを全部詰め込むことができた。モップで床を掃除する代わりに歯ブラシで全部床を磨くような、人が聞けばバカじゃないの、というようなことばかりをやった。でも、おかげですごくいい感じでしょ、と僕は言いたい。そういう意味で、自分的にビックリなのが「RHYTHMATRIX」なのである。
最もビックリなのはやはりライブだから、是非遊びに来て「ビックリヤ〜!」と言ってほしいナ!

RHYTHMATRIX(リズマトリックス)

ジャズとラテンをコラボレイトさせたハイブリッド音楽ユニット。ワールドワイドに活躍するクリヤ・マコトとパンデイロの名手である安井源之新、日本を代表するラテンベースのコモブチキイチロウの3人編成。観客と一体化したソウルフルなライブが人気を集める。

RHYTHMATRIX 公式サイト

[RHYTHMATRIX ~秋のミニツアー]
10/31(日) 銀座ジャズ・フェスティバル(抽選制)
11/06(土) 四日市サラーム(059-326-7568)
11/07(日) 三島Malt Cat's(055-962-0425)
11/20(土) 目黒ブルースアレイ・ジャパン(03-5496-4381)
11/21(日) 名古屋スターアイズ(052-763-2636)
11/22(月) 京都ラグ(075-255-7273)
11/23(火・祝) 二川よし味(SOLD OUT)

[出演]クリヤ・マコト(p)、安井源之新(perc)、村上広樹(ds)、コモブチキイチロウ(b:11/20-23)、早川哲也(b:11/6-7)、ゲスト=柏木広樹(cello:11/20)、上田裕香(vo:11/20)、浅川寛行(key:11/20)、たなかりか(vo:11/22)
[詳細]http://members.jcom.home.ne.jp/tothemax/information/info_trix.html

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